【ピアノ】3段譜は味方になる:読譜力向上のためのアプローチ
► はじめに
3段譜が出てきた瞬間、少し身構えてしまいませんか?
しかし、3段譜は実は我々の「味方」になってくれます。
この記事では、以下のような悩みを持つ方に向けて、3段譜との向き合い方をお伝えしていきます。
・3段譜が出てくると萎縮してしまう
・3段譜が出てくる楽曲は避けてしまう
・3段譜に限らず、譜読みが得意になりたい
► 3段譜との出会い
ある程度学習が進んでくると、「一部もしくは全部が3段譜で書かれた楽曲」に出会うことが増えてきます。例えば:
・リスト「3つの演奏会用練習曲 より ため息」
・ラヴェル「鏡 より 鐘の谷」
・ドビュッシー「前奏曲集 第2集 より 花火」
など、ピアノ音楽の名曲には3段譜で書かれたものが数多くあります。
► なぜ3段譜なのか?
3段譜が使われる主な理由は2つあります:
1. 音の動きをより明確に示すため
・急激な跳躍が続く場合に、音部記号の頻繁な付け替えを避ける
・各声部の動きを視覚的に分かりやすく表現する
2. 音楽の層(レイヤー)を明確に示すため
・複数の旋律や伴奏が同時に進行する場合(多声音楽)の理解を助ける
・それぞれの声部の役割を明確にする
► 3段譜のメリット:具体例で見てみよう
‣ 例1:基本的な3段譜の役割分担
まずは、3段譜の基本的な考え方を簡単な例で見てみましょう:
上段:主旋律(メロディー)
中段:和音による伴奏
下段:低音による土台
このように分かれていると、各パートの役割が一目で分かりますね。
‣ 例2:ドビュッシー「花火」での活用
より具体的な例として、ドビュッシー「前奏曲集 第2集 より 花火」を見てみましょう。
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、曲尾)
この部分では、3つの異なる要素が同時に存在します:
【各段の役割】
上段:フランス国家「ラ・マルセイエーズ」の引用
中段:作品全体を通じて使用される特徴的なモチーフ
下段:pp のトレモロによる背景効果
3段に分かれていることで、これらの要素が互いに独立しながらも同時に進行している様子が明確に見て取れます。
‣ 例3:ドビュッシー「花火」での活用 その2
はじめて3段になる3小節目から、多声的な意味が表現されています。
譜例(3-4小節)
3段で書かれていることで、
「(いちばん上の段の)このオクターブは、まったく別の場所から聴こえてくる音」というニュアンスが強調されます。
ここでの「32分音符による連符」が2段で書かれている理由は、大きく2つだと考えられます:
・単純に「どちらの手で弾くか」ということを示している
・それぞれの段で「異なる全音音階」が使われているということを説明している
► 3段譜との付き合い方
3段譜に対する不安を解消するために、以下のポイントを意識してみましょう:
1. 各段の役割を理解する
・どの段が主か
・どの段が従か
・どの段が特別な効果を担っているか
2. 読譜のコツ
・必ずしも上から順番に読む必要はない
・各段の役割を意識しながら読む
・音楽的な関連性を探る
► おわりに
3段譜は決して「難しい譜面」ではなく、むしろ音楽の構造を理解するためのツールとして捉えることができます。
3段譜に強くなることで、通常の2段譜を読む際にも、音楽の層や役割分担をより深く理解できるようになります。
怖がる必要はありません。
むしろ、3段譜が出てきたら「より分かりやすく書かれている」とポジティブに捉えて、積極的に取り組んでみましょう。
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