【ピアノ】2種スタッカート、ポルタメント、ノンレガートの分類
► はじめに
楽譜に記された音楽用語は、作曲家の意図を理解し、楽曲を解釈する上で重要な手がかりとなります。
特に「スタッカート」「ポルタメント」「ノンレガート」といった奏法を示す用語は、楽曲の表情づけに大きく関わってきます。
これらの表現方法の違いを理解することで、楽曲の解釈の幅が広がり、より深い音楽表現が可能になるでしょう。
ピアノにおけるポルタメントという用語は、スタッカートにスラーがかかった形を指すことがあり、ポルタートと呼ばれることもあります。
ポルタメントとポルタートはほんらい別物ですが、ピアノ分野の専門書では、かなり有名な書籍でもポルタメントとポルタートを同一視しているものがあります。
今回取り上げるのは、このポルタメント(ポルタート)。
弦楽器などで音程を変化させるポルタメントとは違う考え方だと理解したうえで、本記事を読み進めてください。
► 基本的な分類
主な奏法は以下の4種類に分類されます:
・スタッカート(点)
・スタッカート(楔形)
・ポルタメント(ポルタート) ※ポルタメントとポルタートはほんらい別物
・ノンレガート
これらの奏法は、音の長さという観点から明確な違いを持っています。
► 音価による区別
井口基成著『上達のためのピアノ奏法の段階』(音楽之友社)では、これらの奏法を音の長さによって次のように区別しています:
図(Finaleで作成)
特筆すべきは、ノンレガートの扱いです。
一般的に考えられているよりも長い音価を持ち、著書では「レガートをもう少し切ったもので、レガートの時よりもわずかに早く、指が次に移る瞬間、鍵を離れる」と説明されています。
つまり、ノンレガートはスタッカートやポルタメントとは異なり、レガートを基準とした奏法として捉えるべきなのです。
► テンポと音価の関係
これらの音価は、楽曲のテンポによって相対的に変化します。例えば:
・遅いテンポの8分音符は、速いテンポの8分音符より長く響く
・同じスタッカートでも、テンポによって実際の音の長さは変化する
・曲想やフレーズの流れによって、同じ記号でも音価を柔軟に調整する必要がある
この関係性を理解することで、機械的な演奏を避け、より自然な音楽表現が可能になります。
► 実践における注意点
これらの奏法の違いを理解した上で、以下の点に注意を払うことが重要です:
1. 各奏法の基本的な音価の違いを認識する
2. テンポや曲想に応じて柔軟に音価を調整する
3. 同一楽曲内での各奏法の関係性を考慮する
► まとめ
音楽用語の分類を理解することは、単なる知識の習得以上の意味を持ち、それは楽曲の解釈に必要な「視点」を提供し、より意図的な音楽表現を可能にします。
特に複数の奏法が使い分けられている楽曲において、この理解は表現の幅を大きく広げることでしょう。
◉ 上達のためのピアノ奏法の段階 井口 基成 (著) 音楽之友社
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