- 左手ピアノ作品ライブラリー:作曲家別
- ► はじめに
- ► 曲目索引
- ► 作曲家別
- ‣ Bach, Carl Philipp Emanuel(1714-1788) C.P.E.バッハ
- ‣ Berens, Hermann(1826-1880) べレンス
- ‣ Berger, Ludwig(1777-1839) ベルガー
- ‣ Blumenfeld, Felix(1863-1931) ブルーメンフェルド
- ‣ Bortkiewicz, Sergei Eduardovich(1877-1952) ボルトキエヴィチ
- ‣ Brahms, Johannes(1833-1897) ブラームス
- ‣ Britten, Benjamin(1913-1976) ブリテン
- ‣ Dreyschock, Alexander(1818-1869) ドライショク
- ‣ Fumagalli, Adolfo(1828-1856) フマガッリ
- · Notturno-Studio Op.2
- · Studio da Concerto: nell’opera Lucia di Lammermoor Op.18 No.1
- · Studio da Concerto: coro nell’opera I Lombardi di Verdi “o Signore! del tetto natio” Op.18 No.2
- · “Casta diva che inargenti” nell’opera Norma di Bellini Op.61
- · Andante nel Mosé (Mi manca la voce) Op.102
- · Grande Fantaisie sur Robert le Diable de Meyerbeer Op.106
- ‣ Joseffy, Rafael(1852-1915) ヨゼフィ
- ‣ Kalkbrenner, Frédéric(1785-1849) カルクブレンナー
- ‣ Köhler, Louis Heinrich(1820-1886) ケーラー
- ‣ Leschetizky, Theodor(1830-1915) レシェティツキー
- ‣ Lipatti, Dinu(1917-1950) リパッティ
- ‣ Liszt, Franz(1811-1886) リスト
- ‣ Marxsen, Eduard(1806-1887) マルクスゼン
- ‣ Moszkowski, Moritz(1854-1925) モシュコフスキー
- ‣ Philipp, Isidor(1863-1958) フィリップ
- ‣ Ponce, Manuel(1882-1948) ポンセ
- ‣ Ravel, Maurice(1875-1937) ラヴェル
- ‣ Saint-Saëns, Camille(1835-1921) サン=サーンス
- ‣ Scriabin, Alexander(1872-1915) スクリャービン
- ‣ Wittgenstein, Paul(1887-1961) ヴィトゲンシュタイン
- ‣ Yuya Takano タカノユウヤ
- ‣ Zichy, Géza(1849-1924) ジチー
- ► 終わりに
左手ピアノ作品ライブラリー:作曲家別
► はじめに
左手独奏のピアノ曲は、リハビリや技術向上を目的とした練習曲から、演奏会で映えるコンサートピースまで、幅広いジャンルにわたります。
本ライブラリーでは、その中から興味深い作品を厳選して作曲家別に紹介しています。網羅的なリストを目指したものではなく、選択的なコレクションです。各作品には難易度・演奏時間・分類を記載しているので、レパートリー選びの参考にしてください。
なお、本記事は随時更新され、新しい作品が順次追加されていく予定です。(最終更新:2026年7月2日)
作品名について:
・一般的に広く用いられている原題を掲載し、可能なものについては邦題を併記
・邦題に複数の訳が存在する場合や定着した邦題が見当たらない場合は、原題のみを掲載
► 曲目索引
検索のコツ
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【演奏時間】
「1分」「2分」「3分」などで検索すると、「3分30秒」のような表記も検索できます。
【難易度】
「ブルグミュラー25の練習曲」「ツェルニー30番」「ツェルニー40番」「ツェルニー50番」
【分類】
「オリジナル作品」「編曲作品」「作曲家自身による編曲作品」
► 作曲家別
‣ Bach, Carl Philipp Emanuel(1714-1788) C.P.E.バッハ
· Klavierstück for the right or left hand alone
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-4小節)

邦題:右手あるいは左手のための小品
作曲年:1770年以前に作曲
演奏時間:約1分
難易度:ブルグミュラー25の練習曲中盤程度
分類:オリジナル作品
「左手のみでも右手のみでも弾ける作品」というユニークなコンセプトの作品です。和音が一切出てこないうえに、終始音域が狭めのアルペジオ中心なので、手の大きさを問わない書法となっています。子供向けの学習教材として作曲された可能性が考えられるでしょう。
現在知られている片手独奏作品の中では、最も早い時期の作品の一つとされています。
この作品をさらに詳しく知る
【ピアノ】片手作品入門:C.P.E.バッハ「Klavierstück for the right or left hand alone」演奏・分析ガイド
‣ Berens, Hermann(1826-1880) べレンス
· Training of the Left Hand Op.89
邦題:左手のトレーニング Op.89
作曲年:1872年頃(1872年出版)
演奏時間:番号による
難易度:ツェルニー30番に入門した段階以降での開始をおすすめ
分類:オリジナル作品
1872年にC.F.ペータース社から出版されました。正確な作曲年は定かではありませんが、1872年、またはその直前に書かれたものと考えられます。
本曲集は2部構成になっています:
第1部 46のトレーニング
・左手のみで演奏する、基礎的な指の動きを集中的に鍛える短いエクササイズ群
・音階、アルペジオ、跳躍、反復音など、左手に必要な様々な動作パターンが網羅
・各トレーニングは1〜2ページ程度の短い楽曲で、特定の技術課題に焦点を当てている
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、第1部 第3曲 曲頭)

第2部 25の練習曲
・左手のみで演奏する、独立した練習曲として完成された楽曲
・各曲には最終的なテンポ指定、強弱記号、アーティキュレーションなど、表現上の細かい指示が記されている
・技術的な訓練と音楽的な表現の両方を学べる
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、第2部 第4曲 曲頭)

この作品をさらに詳しく知る
【ピアノ】ベレンス「左手のトレーニング Op.89」導入完全ガイド
‣ Berger, Ludwig(1777-1839) ベルガー
· Etude de Chant for the left hand Op.12-9
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-4小節)

邦題:12の練習曲 Op.12 より 第9曲
作曲年:1820年頃
演奏時間:約3分10秒
難易度:ツェルニー30番中盤程度
分類:オリジナル作品
この作品以前から、左手または右手のどちらでも演奏可能な作品は存在しましたが、1820年前後に作曲された作品は、明確に左手のためだけに書かれ、最初に出版された作品だと言われています。
シューマンが賞賛したとされているこの作品は、左手作品の中では比較的知られている作品と言えるでしょう。ピアニストAnja Wackhusenの録音音源「Fur Die Linke Hand Allein-for Left Hand Only」などにも収録されています。
長調と中間部の短調の対比が美しい、シンプルながらも耳馴染みの良い小品です。
‣ Blumenfeld, Felix(1863-1931) ブルーメンフェルド
· Étude pour la main gauche seule Op.36
邦題:左手のための練習曲 Op.36
譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-2小節)

作曲年:1905年
演奏時間:約6分
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品
タイトルに「練習曲」とありますが、音楽的な内容は技術的な習作を超えた充実度を誇ります。
構成面では、メロディを内声に置いてその上下を伴奏声部が包み込むタールベルク的奏法が冒頭と終結部を彩り、中間部には劇的な表現とカデンツァが挿入されるという、明快な三部構造をとっています。
特に結尾部では徐々に音が薄れていくなかで独特の和声進行が現れ、グリーグの「抒情小品集 第3集 春に寄す op.43-6」に通じる淡い色彩感を帯びています。どことなく春の訪れを想起させるような、余韻の深い一曲と言えるでしょう。
‣ Bortkiewicz, Sergei Eduardovich(1877-1952) ボルトキエヴィチ
· 12 Nouvelles Études Op.29-5 “Le Poète”
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-3小節)

邦題:12の新しい練習曲 より 詩人 Op.29-5
作曲年:1924年
演奏時間:約6分30秒
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品
ロシア出身でオーストリアで活躍した作曲家・ピアニスト、セルゲイ・ボルトキエヴィチによる左手のためのコンサート用練習曲です。
本作「詩人」は、各曲に情景描写的なタイトルが付けられた「12の新しい練習曲 Op.29」の第5曲目にあたり、全12曲の中で、本楽曲のみが「左手だけのため」に書かれています。
· 4 Klavierstücke No.3 Hochzeitsang Op.65-3
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-4小節)

邦題:4つのピアノ曲 第3番 より 祝婚歌 Op.65-3
作曲年:1947年 ※第3番は1934年に原曲が初演されている
演奏時間:約4分20秒
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品
ボルトキエヴィチがその晩年、70歳の誕生日を記念して1947年にウィーンで出版した、彼の生涯最後のピアノ曲集「4つのピアノ曲 Op.65」に収められている作品です。全4曲の中で、この第3曲のみが唯一「左手だけのため」に書かれています。
この曲はもともとは「ロシアの結婚の歌」というタイトルで1934年頃に構想されており、同年6月にピアニストのルドルフ・ホルン(本作の献呈者)によってベルリンのラジオ番組ですでに初演されていました。その後、長年温められていたこの作品に改訂が加えられ、1947年になって他の3つの両手用の楽曲とともに一つの曲集(Op.65)として結実しました。
「祝婚歌(婚礼の歌)」というタイトルの通り、人生の門出を祝うような温かさと、ボルトキエヴィチならではの優美でノスタルジックな旋律が印象的な小品です。
‣ Brahms, Johannes(1833-1897) ブラームス
· Chaconne by J.S. Bach for the left hand alone
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-5小節)

邦題:ピアノのための5つの練習曲 より J.S.バッハのシャコンヌ
編曲年:1877年
演奏時間:約17分
難易度:ツェルニー40番中盤程度
分類:編曲作品
J.S.バッハの名作「シャコンヌ」を、ブラームスが左手のみで演奏できるように編曲した異色の作品、通称「バッハ=ブラームス シャコンヌ」。左手独奏作品の中でも芸術性が高い一曲で、多くのピアニストに愛奏されています。
本作は1877年6月、ブラームスが親しい友人であったクララ・シューマンへ宛てた手紙とともに贈られました。当時、右手を痛めていたクララのために、左手だけで演奏できるように編曲したものです。ブラームスは手紙の中で「今日、君に送るものほど面白いものは他にないと思う」と書き添えており、音楽的なユーモアと彼女への深い思いやりが詰まった名編曲として知られています。
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特徴、おすすめ楽譜、練習のポイント、必要な技術レベルまで網羅した完全ガイド
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J.S.バッハ「シャコンヌ」の他の左手編曲と比較する
【ピアノ】左手のみで演奏するJ.S.バッハ「シャコンヌ」編曲版の種類と背景
‣ Britten, Benjamin(1913-1976) ブリテン
· Diversions on a theme for piano(left hand)and orchestra Op.21
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
邦題:左手のためのピアノ協奏曲
作曲年:1940年
演奏時間:約25分
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:オリジナル作品
パウル・ヴィトゲンシュタインの委嘱により1940年に完成。初演は1942年1月17日、フィラデルフィア管弦楽団、ユージン・オーマンディ指揮のもとヴィトゲンシュタイン自身が演奏しました。当初の題名は「コンサート・ヴァリエーションズ」で、「ディヴァージョンズ」は後から改められたものです。
ブリテンはこの作品で「両手のテクニックを模倣しない」という立場を明確にしています。単一のラインが持つ可能性をあらゆる角度から探ることを目的とした変奏曲であり、各変奏はそれぞれ異なる音楽的表情を追求しています。
ヴィトゲンシュタインはオーケストラの書法が厚すぎると異議を唱えましたが、ブリテンは変更に応じませんでした。
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【ピアノ】ラヴェルとブリテンの左手協奏曲:対照的な二つのコンセプトを比較する
‣ Dreyschock, Alexander(1818-1869) ドライショク
· Variations pour la Main gauche seul Op.22
譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-4小節)

邦題:左手のための変奏曲 Op.22
作曲年:1843年頃
演奏時間:約7分
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品
導入部は朗唱風のパッセージから始まり、アンダンテ・コン・エスプレッシオーネの主題が提示され、アルベルティ・バスの伴奏に乗った叙情的なメロディーに続いて、3つの変奏とフィナーレが展開されます。
全曲を通して音域は幅広く取られていますが、すべて一段の楽譜で書かれているのが特徴と言えるでしょう。
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【ピアノ】左手作品から読み解くドライショク:片手で二人分を弾いた男
· God save the Queen, variation Op.129
譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-4小節)

邦題:「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」による大変奏曲 Op.129(左手のための)
作曲年:1854年以前
演奏時間:約8分
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品
タイトルのとおり英国国歌を素材にとった変奏曲です。
音楽的な構成や主題変容を味わう作品というよりは、超絶技巧そのものを楽しむパフォーマンスピースとしての性格が強いように感じます。
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【ピアノ】左手作品から読み解くドライショク:片手で二人分を弾いた男
‣ Fumagalli, Adolfo(1828-1856) フマガッリ
· Notturno-Studio Op.2
譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、Andante部分より)

邦題:ノットゥルノ=スタジオ Op.2
作曲年:不明
演奏時間:約8分
難易度:ツェルニー40番中盤程度
分類:オリジナル作品
学生時代に書かれた習作とみられる作品です。リコルディから出版されていますが、詳細な資料が少ない作品となっています。
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【ピアノ】左手作品から読み解くフマガッリ:28歳で逝った「ピアノのパガニーニ」
· Studio da Concerto: nell’opera Lucia di Lammermoor Op.18 No.1
譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-4小節)

邦題:スタジオ・ダ・コンチェルト(ドニゼッティ《ランメルモールのルチア》より) Op.18 No.1
編曲年:不明
演奏時間:約5分
難易度:ツェルニー40番中盤程度
分類:編曲作品
ドニゼッティのオペラ《ルチア》の終幕、テノールが歌うアリアを題材にしています。金管楽器の導入部を忠実に受け継ぎつつ、主旋律のあいだに2つのカデンツァを織り込んだ構成です。旋律そのものの美しさが作品を支えていますが、アルペジオの扱いがやや単調になる場面も見受けられます。
フマガッリをさらに詳しく知る
【ピアノ】左手作品から読み解くフマガッリ:28歳で逝った「ピアノのパガニーニ」
· Studio da Concerto: coro nell’opera I Lombardi di Verdi “o Signore! del tetto natio” Op.18 No.2
譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-4小節)

邦題:スタジオ・ダ・コンチェルト(ヴェルディ《十字軍のロンバルディア人》より「おお、故郷の屋根よ」) Op.18 No.2
編曲年:不明
演奏時間:約5分
難易度:ツェルニー40番中盤程度
分類:編曲作品
ヴェルディのオペラから合唱曲を素材にとっています。終盤にオクターブのグリッサンドが現れる点が特徴的です。また、トリルと和音を左手だけで同時にこなす書法も含まれており、片手演奏の可能性を引き出そうとする工夫が随所に見られます。音楽的な魅力という点ではやや控えめな作品と言えるでしょう。
フマガッリをさらに詳しく知る
【ピアノ】左手作品から読み解くフマガッリ:28歳で逝った「ピアノのパガニーニ」
· “Casta diva che inargenti” nell’opera Norma di Bellini Op.61
譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-5小節)

邦題:「清らかな女神(カスタ・ディーヴァ)」(ベッリーニ《ノルマ》より) Op.61
編曲年:不明(1851年出版)
演奏時間:約4分
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:編曲作品
トマジーニ夫人に献呈。フマガッリの左手作品のなかで最も広く知られる一曲で、演奏会用トランスクリプションとして時折耳にします。
オクターブを多用した重厚な書法、随所に挿入されるカデンツァ、幅広い音域を縦横に駆け巡るアルペジオが、豊かな音響を生み出します。
ただし、抒情的な箇所の伴奏処理では原曲の管弦楽パターンをほぼそのまま踏襲しており、左手に適した音型へ置き換える創意に欠けるという批評もあります。その結果、第1セクションだけで16か所もの大きな跳躍が生じており、これは練習で解決できる種類の問題ではありません。不滅の旋律が作品を成立させているとはいえ、こうした構造上の課題も無視できないでしょう。
フマガッリをさらに詳しく知る
【ピアノ】左手作品から読み解くフマガッリ:28歳で逝った「ピアノのパガニーニ」
· Andante nel Mosé (Mi manca la voce) Op.102
譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-4小節)

邦題:アンダンテ「声がない(Mi manca la voce)」(ロッシーニ《モーゼ》より) Op.102(遺作)
編曲年:不明
演奏時間:約4分
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:編曲作品
ロッシーニのオペラ《モーゼ》のアリアに基づく作品で、全曲にわたって3段譜が用いられています。左手作品において3段譜が通篇に使われることは非常に珍しく、フマガッリの表現に対する意欲がうかがえます。音響的には充実していますが、原曲の管弦楽伴奏に必要以上に縛られているために極端な跳躍が頻出し、音楽の流れにぎこちなさが生じています。
なお、「One Handed」(ドナルド・L・パターソン 編)では “Op.100 No.19” と記載されていますが、実際の楽譜で Op.102(遺作)と確認されているため、パターソンの記載は誤りと考えられます。
フマガッリをさらに詳しく知る
【ピアノ】左手作品から読み解くフマガッリ:28歳で逝った「ピアノのパガニーニ」
· Grande Fantaisie sur Robert le Diable de Meyerbeer Op.106
譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-8小節)

邦題:《ロベール・ル・ディアーブル》による大幻想曲(マイアベーア) Op.106
編曲年:不明
演奏時間:約15分
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:編曲作品
6曲のなかで規模・難度ともに最大の作品で、リストへの献呈という選択が、フマガッリ自身のこの曲への自信を物語っています。
鍵盤全体を席巻する高速のオクターブ、和音、跳躍が連続し、終盤にはオクターブのグリッサンドも登場します。随所に力強い書き方が光る一方、各セクションをつなぐ転換部は唐突で工夫に乏しく、形式的な仕上がりとしては物足りないという評価も残されてきました。
左手一本の限界に挑んだ記念碑的な作品と言えますが、音楽的な完成度という観点では評価が割れるところです。
フマガッリをさらに詳しく知る
【ピアノ】左手作品から読み解くフマガッリ:28歳で逝った「ピアノのパガニーニ」
‣ Joseffy, Rafael(1852-1915) ヨゼフィ
· J.S. Bach: Partita No.3, BWV1006 Gavotte
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-3小節)

邦題:J.S.バッハ「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第3番 ホ長調 BWV1006 より ガヴォット」:ヨゼフィによる左手独奏用編曲版
作曲年:1720年(ヨゼフィ編曲版:1880年出版)
演奏時間:約3分30秒
難易度:ツェルニー40番中盤程度
分類:編曲作品
ラファエル・ヨゼフィ(1852-1915年)は、ヴァイマルでリストに師事したハンガリー出身のピアニストです。1879年にアメリカでデビューを果たし、そのまま同地に拠点を移しました。
原曲への忠実度は比較的高く、旋律は主に単音で書かれています。ヨゼフィはいくつかの箇所で和音に音を追加したり、独自の低音声部を付け加えたりしていますが、装飾音の処理にはやや不自然な部分もあることが指摘されてきました。
Ruby Morgan 編曲版について
2021年、Ruby Morgan編の左手独奏曲アンソロジー「An Anthology of Piano Music for the Left Hand Alone」が出版されました。このアンソロジーには、ヨゼフィ版をもとにMorganがさらに手を加えた楽譜が収録されています。
主な改訂点は以下のとおりです:
・演奏上の難点となっていた装飾音を整理・削除
・ヴァイオリン原典譜のアーティキュレーションを積極的に反映
・リュート版と考えられる「BWV1006a」の要素を部分的に取り入れた
‣ Kalkbrenner, Frédéric(1785-1849) カルクブレンナー
· Fugue à quatre parties pour la main gauche seule
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-8小節)

邦題:左手のための4声のフーガ
作曲年:1831年頃(1831年出版)
演奏時間:約1分30秒
難易度:ツェルニー30番修了程度
分類:オリジナル作品
全12曲からなる「メソッド Op.108」の第8曲が、「左手のための4声のフーガ」で、左手のみのための最初のフーガという説が有力になっています。1831年に出版されました。正確な作曲年は定かではありませんが、1831年、またはその直前に書かれたものと考えられます。
テンポが速い4声のフーガでありながらも、シンプルな対位法で書かれているので、取り組みやすい作品として左手作品の中でも知られている一曲です。
‣ Köhler, Louis Heinrich(1820-1886) ケーラー
· Schule der linken Hand, Op. 302(School of the Left Hand)
邦題: 左手ための教本 Op.302
作曲年:幅広い年代の作品が収録されたアンソロジー
難易度:ツェルニー30番入門程度の作品から上級作品まで
分類:オリジナル作品+編曲作品
この曲集には、ケーラーが作曲・編曲した左手作品が複数収録されています。
| 曲名・内容(日本語) | 原題(独/英/仏) |
|---|---|
| 3つの小品 | Drei Vortragsstücke (l. H. allein) / Three Pieces (l. h. alone) |
| メロディの練習曲 | Melodie-Etüde |
| 練習曲 | Etüde |
| 2つの民謡 | Zwei Volkslieder (l. H. allein) / Two Popular Songs (l. h. alone) |
| 「オベロン」のメロディ | Melodie aus Oberon (l. H. allein) |
| 2つの小品 | Zwei Stücke (l. H. allein) / Two Pieces (l. h. alone) |
| 「魔弾の射手」のメロディ | Melodie aus dem Freischütz (l. H. allein) |
| ガボット | Gavotte (l. H. allein) |
| 「ジョセフ」のメロディ | Melodie aus Joseph (l. H. allein) |
| 「魔弾の射手」のメロディ | Melodie aus dem Freischütz (l. H. allein) |
注意:
・この一覧表からは、ケーラーが作曲した左手のためのエクササイズ(ハノンのような音遣いの作品)は除外
・本曲集に収録されている「両手」で演奏するケーラー作品も除外
この作品をさらに詳しく知る
【ピアノ】ケーラー「左手のための教本 Op.302」完全ガイド:収録曲一覧・難易度・おすすめ作品
‣ Leschetizky, Theodor(1830-1915) レシェティツキー
テオドール・レシェティツキー(1830-1915)はガリツィア(現ポーランド)のランツート生まれ、ドレスデン没のピアニスト・教育者です。ツェルニーに師事し、その指導法を受け継ぎながら独自の奏法論を発展させました。アントン・ルービンシュタインとも親しく、ペテルブルク音楽院ではピアノ科の主任を務め、後にウィーンで教育者として絶大な名声を築きました。
· Andante finale from “Lucia di Lammermoor,” Op.13
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-4小節)

邦題:「ランメルモールのルチア」のアンダンテ・フィナーレ Op.13
編曲年:遅くともドライショクの生前である1869年以前(19世紀半ば頃)と考えられる
演奏時間:約6分00秒
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:編曲作品
ドニゼッティのオペラ「ランメルモールのルチア」の名場面、六重唱「Chi me frena in tal momento」をもとにした編曲です。両手版を書いたリストが有機的な序奏を設けているのに対し、このレシェティツキー版には独自の長い前置きが付されていますが、その必然性については疑問が呈されることもあります。
ドニゼッティの美しい旋律と、ピアニストであるレシェティツキーならではのピアニスティックな装飾が結びついた編曲で、上級者用のコンサートピースに適した仕上がりと言えるでしょう。
「The Boston Music Company Digest Of Piano Pieces: For The Left Hand Alone(1917)」をはじめ、多くのアンソロジーに収録されている、左手編曲の中では比較的知られている一曲です。ヴァクフゼン「Für die linke Hand allein」など、輸入盤の録音音源には度々収録されています。
‣ Lipatti, Dinu(1917-1950) リパッティ
· Sonatine pour piano(Main gauche seule)
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、第1楽章 1-4小節)

邦題:左手のためのソナチネ
作曲年:1941年(1947年完成)
演奏時間:約7分30秒
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品
教師ミハイル・ジョラと名付け親エネスクへの誕生日祝いとして構想された作品です。五線紙が不足していたため「1段で書ける=片手のための曲」を思いついたという逸話が残っています。また、ジョラが片脚の人物だったことから、一種のブラックユーモアも込められていたと伝わっています。
3楽章構成。和音・オクターブ主体の部分と対位法的な部分が混在しています。声部ごとに異なるダイナミクスが指定される箇所も見られ、左手作品の中では比較的珍しい書法と言えるでしょう。他声部が休止してメロディが単独で浮かび上がる「無伴奏表現」が全楽章を通じて印象的な作品です。
リパッティ自身によるモノラル録音が現存しており、「”Mit links” — Der Pianist Paul Wittgenstein」などに収録されています。
この作品をさらに詳しく知る
【ピアノ】左手作品から読み解くリパッティ:逸話に彩られた左手のソナチネ
‣ Liszt, Franz(1811-1886) リスト
· A magyarok Istene (Ungarns Gott) S.543 R.214
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-4小節)

邦題:ハンガリーの神 S.543 R.214
作曲年:1881年(原曲)
演奏時間:約3分20秒
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:作曲家自身による編曲作品
ハンガリーの国民的詩人ペテーフィ(Sándor Petőfi)の詩をもとにリスト自身が作曲した歌曲のトランスクリプションで、ジチー伯爵への献呈作品として書かれました。元となった歌曲はリストの後期、1881年の作品であり、リストの歌曲集において末尾から2作目に収められています。
ペテーフィは1848年のハンガリー革命を詩によって鼓舞した愛国詩人として名高く、この詩もハンガリーの神へ捧げる祈りと民族の誇りを主題としています。晩年のリストがこの詩を取り上げたことは、生涯にわたって抱き続けた故郷ハンガリーへの深い愛着を物語るものでしょう。
音楽的には、晩年のリストのピアノ作品に見られる素朴な書法と、独特の和声の動きが印象的な一曲です。構成は即興的かつ自由で、朗唱を思わせる旋律線とカデンツァ的なパッセージが織り交ぜられています。
この作品をさらに詳しく知る
【ピアノ】左手作品から読み解くリスト:二つの作品に見る作曲家の素顔
‣ Marxsen, Eduard(1806-1887) マルクスゼン
· Three Impromptus: Homage to Dreyschock Op.33 No.2
譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、第2曲 1-4小節)

邦題:3つの即興曲「ドライショクへのオマージュ」Op.33 より 第2曲
作曲年:1844年以前
演奏時間:約3分50秒
難易度:ツェルニー30番修了程度
分類:オリジナル作品
副題が示すとおり、当時ヨーロッパの演奏界で「2本の右手を持つ男」と称されていた左手の名手アレクサンダー・ドライショクへの献呈作品です。
4小節の短い導入部に続き、f-mollのメランコリックな主部が始まります。中間部はF-durのAllegrettoに転じ、その後に再び冒頭の旋律に戻って静かに閉じる三部構造です。
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【ピアノ】左手作品から読み解くマルクスゼン:ブラームスの恩師が遺した片手の音楽
· Studies for the Left Hand Alone(in six characteristic pieces dedicated to Henselt)Op.40
邦題:左手のための練習曲「6つの性格的な小品」Op.40(ヘンゼルトに捧げる)
作曲年:1844年頃
難易度:ツェルニー30番修了程度
分類:オリジナル作品
「練習曲(Etüden)」と「性格的な小品(charakteristische Stücke)」という二つの顔を持つこの曲集は、練習曲でありながら、それぞれが独立した小品として構想されている点に特徴があります。
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【ピアノ】左手作品から読み解くマルクスゼン:ブラームスの恩師が遺した片手の音楽
‣ Moszkowski, Moritz(1854-1925) モシュコフスキー
· 12 Etudes for the left hand alone Op.92
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、第4番 1-4小節)

邦題:左手のための12の練習曲 Op.92
作曲年:1915年頃(1915年出版)
演奏時間:全曲合計 約28分
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品
「左手のための12の練習曲 Op.92」は、パリのEnoch & Cie社から1915年に出版された曲集で、ピアニストのハロルド・バウアー(1873-1951)に献呈されています。
モシュコフスキーといえば「15の練習曲 Op.72」を思い浮かべる方が多いかもしれません。それに比べるとOp.92の知名度は高くありませんが、左手独奏に必要なテクニックが巧みに取り入れられており、なおかつ身体への負担がかかりすぎないよう計算されて音が選ばれているのが特徴です。
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【ピアノ】モシュコフスキー「左手のための12の練習曲 Op.92」完全ガイド
‣ Philipp, Isidor(1863-1958) フィリップ
イシドール・フィリップ(1863-1958)はハンガリー出身のフランスのピアニスト・教育者で、パリ音楽院では1893年から1934年まで教鞭を執りました。左手のための教材づくりにも積極的に取り組んでおり、1895年には全編が左手独奏のための練習曲集「Exercices et études techniques」を出版しています。右手向けの音型をそのまま左手へ移すという、当時としては新鮮な発想による教材でした。
· Chaconne by J.S. Bach for the left hand alone
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-5小節)

邦題:J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番 ニ短調 BWV1004 より シャコンヌ(左手独奏編曲版)
出版年:1903年(「4 Etudes d’après Bach バッハによる4つの練習曲」の第4曲として)
演奏時間:約17分
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:編曲作品
1903年出版の「4 Etudes d’après Bach バッハによる4つの練習曲」は、バッハの無伴奏ソナタ・パルティータから4曲を選んで左手用に編んだもので、シャコンヌはその第4曲にあたります。ブラームス版と比べると技巧的な難度も高めの仕上がりです。
興味深いのは、フィリップが独自のシャコンヌ編曲を手がける一方で、ブラームス編のシャコンヌをデュラン社から自ら監修して出版もしている点です。独自のアーティキュレーションなどを書き込んでいる事実から、フィリップがブラームス版を高く評価していたことが見てとれます。
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【ピアノ】左手のみで演奏するJ.S.バッハ「シャコンヌ」編曲版の種類と背景
‣ Ponce, Manuel(1882-1948) ポンセ
· Malgré tout
譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-3小節)

邦題:マルグレ・トゥー
作曲年:1900年
演奏時間:約3分30秒
難易度:ツェルニー30番中盤程度
分類:オリジナル作品
ポンセがまだ10代のころに書いた左手独奏のための小品で、ハバネラリズムに乗った、魅力的で生き生きとした旋律と伴奏が特徴的です。大きな跳躍、ギター風の音遣い、装飾音など、表現の工夫が随所に盛り込まれています。
題名「Malgré tout(それにもかかわらず)」は、メキシコの彫刻家ヘスス・フルクトゥオソ・コントレラス(1866-1902)の同名の彫刻作品から着想を得ています。コントレラスは癌により右腕を失いながらも制作を続けたことで知られており、ポンセはこの彫刻に敬意を込めてこの曲を書いたとされています。
· Prelude and Fugue
前奏曲
譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-3小節)

フーガ
譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-4小節)

邦題:前奏曲とフーガ
作曲年:1931年
演奏時間:約5分30秒(前奏曲とフーガ合計で)
難易度:ツェルニー40番中盤程度
分類:オリジナル作品
ヘンデルの主題による左手独奏のための前奏曲とフーガ。パウル・ウィトゲンシュタインのために書かれた可能性が考えられています。
前奏曲は旋律を声部分けで示しながらギターで演奏しているかのように線的に進み、フーガは半音階的な進行と「嘆息」の動機が印象的です。
‣ Ravel, Maurice(1875-1937) ラヴェル
· Concerto pour la main gauche
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、ソロの初導入部 29-33小節)

※ラヴェル自身によるピアノ伴奏版編曲(ソロ+ピアノ伴奏形式:2台ピアノ)から浄書
邦題:左手のためのピアノ協奏曲
作曲年:1929-1930年
演奏時間:約18-20分
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:オリジナル作品
背景
第一次世界大戦で右腕を失ったピアニスト、パウル・ヴィトゲンシュタインの委嘱により誕生しました。彼はリヒャルト・シュトラウス、プロコフィエフ、ブリテンら多くの作曲家に左手作品を依頼した人物で、ラヴェルとの出会いは1929年のウィーンとされています。
この曲の何が革新的か
最大の革新は、左手作品を「特殊なレパートリー」から「本格的な協奏曲」へ押し上げたことにあります。ラヴェルは「左手のために書いたと感じさせたくない」という姿勢で作曲に臨み、サン=サーンス、アルカン、スクリャービンらの先行作品を丁寧に研究しました。それまでの左手作品の多くが練習曲的な小品や両手作品の翻訳に留まりがちだったのに対し、この協奏曲はオーケストラと対等に渡り合う本格的なソロ作品として設計されたものです。片腕の演奏家を「オーケストラと対峙する英雄」として描いたようにも感じられます。単一楽章の持続的な構造、中間部でのジャズ語法の統合も大きな特徴と言えるでしょう。
なぜ、これほど有名か
同じ委嘱作品群の中で今日最も演奏される理由は、独奏者の存在感を正面に押し出した書法の完成度にあります。加えて、楽譜解釈をめぐるラヴェルとヴィトゲンシュタインの対立が、かえって作品の評判を高めた側面も見逃せません。独占演奏権の失効後、カサドシュが1937〜71年の間に170回以上演奏したことも、広く普及した大きな要因となっています。
左手音楽史での位置づけ
1929-1930年当時、左手専用の大規模な作品はほとんど存在していませんでした。この協奏曲は左手音楽を「独立した音楽語法」として確立した作品と見なされており、以降に書かれた左手作品の多くが、この曲の存在を出発点として持っていると考えられます。左手ピアノ史を「この曲以前・以後」に分けて考えることも、決して誇張ではないでしょう。
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【ピアノ】なぜ、ラヴェルの左手協奏曲は傑作なのか?:左手音楽史から読み解く
‣ Saint-Saëns, Camille(1835-1921) サン=サーンス
· Six Études pour la main gauche seule, Op.135
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、第5曲 1-5小節)

邦題:左手のための6つの練習曲 Op.135
作曲年:1912年
演奏時間:約18分(全曲合計で)
難易度:ツェルニー40番中盤程度
分類:オリジナル作品
構成
1. Prélude(前奏曲) 2. Alla Fuga(フーガのように) 3. Moto Perpetuo(無窮動)
4. Bourée(ブーレ) 5. Élégie(エレジー) 6. Gigue(ジーク)
作品について
70代半ばを過ぎたサン=サーンス晩年の作で、彼が手がけた練習曲集としては最後の作品にあたり、先行作にはOp.52、Op.111があります。左手のための作品としてはこの一作のみが残されました。和音中心ではなく、単一の音符の連続によるパッセージワークや、声部の独立を意識した対位法的な書法を基調としています。17世紀フランス舞曲への関心が組曲という形式の選択ににじみ出ているのが特徴です。
逸話
ピアニストのロベール・カサドシュは、師ルイ・ディエメ(1843-1919)がサン=サーンスと深い親交を結んでいたことを回想しています。サン=サーンスは優秀な弟子たちのためにこの6曲を書いたとされ、当時12人いた生徒の中からディエメが6人を選び、各曲を割り当てたといいます。お気に入りだったカサドシュにはBourée(ブーレ)が任されました。サン=サーンス本人の前でその曲を演奏したものの、言葉を交わす機会には恵まれなかったそうです。
‣ Scriabin, Alexander(1872-1915) スクリャービン
· 2 Pieces for the left hand alone Op.9
プレリュード Op.9-1
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-3小節)

ノクターン Op.9-2
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-3小節)

邦題:左手のための2つの小品 Op.9
楽曲について(オリジナル作品)
| 曲名 | 作曲年 | 演奏時間 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| プレリュード Op.9-1 | 1894年 | 約3分半 | 両手作品とあわせてレパートリーとして定着 |
| ノクターン Op.9-2 | 1894年 | 約6分 | 静寂さと劇的さを併せ持つ、カデンツァを含む充実作 |
難易度:ツェルニー30番中盤程度(両曲とも)
分類:オリジナル作品
作品全体の背景(Op.9共通)
このOp.9は、スクリャービン自身が過度な練習によって右手を痛めてしまったために作曲されたものです。1895年に出版され、後年の神秘主義的な作風とは異なる、ショパンの強い影響を受けたロマン派のスタイルを持っています。内容、知名度ともに、左手のためのピアノ曲における名作の一つと言えるでしょう。
ピアニストのデトレフ・クラウスによれば、これら2つの楽曲は「なぜこんなに悲しいのか分からない」および「白樺の木の下の夢」という、2つのロシア民謡に基づいているとされています。
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【ピアノ】スクリャービン「左手のための2つの小品 Op.9」演奏完全ガイド
‣ Wittgenstein, Paul(1887-1961) ヴィトゲンシュタイン
パウル・ヴィトゲンシュタイン(1887-1961)は第一次世界大戦での負傷により右腕を失ったウィーンのピアニストです。その後も国際的な演奏活動を続け、ラヴェル、プロコフィエフ、リヒャルト・シュトラウス、ブリテンら多くの作曲家に左手独奏のための新作を委嘱したことでも知られています。晩年はニューヨークへ移り、後進の指導にもあたりました。
· Chaconne by J.S. Bach for the left hand alone
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1–5小節)

邦題:J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番 ニ短調 BWV1004 より シャコンヌ(左手独奏編曲版)
出版年:1957年(「School for the Left Hand 左手のための教則本」第3巻に収録)
演奏時間:約17分
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:編曲作品
「School for the Left Hand」は全3巻からなる大規模な集成で1957年に出版されました。第1巻が指の独立性を養う練習曲群、第2巻が名曲から編まれた応用練習、第3巻が演奏会用の編曲集という構成です。シャコンヌはこの第3巻に収められています。
ブラームス版を出発点としながらも、オクターブの重ねや技巧的なパッセージが大胆に書き加えられており、踏み込んだ書き換えが随所に施された版です。ヴィトゲンシュタイン自身は「音楽の内容そのものではなく、ピアノでの表現方法に手を加えた」と述べており、ブラームスもそれを意に介さないだろう、という趣旨の言葉も残しています。華やかで聴かせどころの多い、演奏会映えする編曲と言えるでしょう。
J.S.バッハ「シャコンヌ」の他の左手編曲と比較する
【ピアノ】左手のみで演奏するJ.S.バッハ「シャコンヌ」編曲版の種類と背景
‣ Yuya Takano タカノユウヤ
· J.S. Bach: Partita No.2, BWV1004 (Complete) – Arranged for the left hand alone
邦題:J.S.Bach 《無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第2番 全曲》 左手独奏用編曲版
※シャコンヌを除く全4曲 シャコンヌはBach=Brahms版
作品データ:
・編曲者:タカノユウヤ(本Webメディア運営者)
・編曲時期:2019年
・演奏時間:約17分
・演奏レベル:ツェルニー50番入門以降程度
編曲の意義:
1. レパートリーの拡充
・左手独奏版として初めての試み
・ブラームスによるシャコンヌ編曲と併せて全曲演奏が可能に
2. 演奏技法・編曲技法への取り組み
・ブラームス版の編曲技法を詳細に分析し、その書法をもとに残り4曲を編曲
・5本の指による演奏の可能性を追求
・チャレンジングかつ演奏効果の高い編曲を実現
3. 作曲家・編曲家としての視点
・演奏家の挑戦意欲に応える作品作り
・技術的課題と音楽的表現の融合を目指した編曲
この作品の楽譜を見る
· Elgar: Salut d’amour for the left hand alone Op.12
邦題:愛のあいさつ 〜左手独奏のための〜 作曲:エルガー
譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、曲頭)

作品データ:
・編曲者:タカノユウヤ(本Webメディア運営者)
・2017年度 月刊ピアノ×ピティナ編曲オーディション 上級部門 第1位 受賞作品
・編曲時期:2017年2月
・演奏時間:約3分
・演奏レベル:ツェルニー40番入門程度から挑戦可能
・ピティナ・ピアノ曲事典
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【ピアノ】「愛のあいさつ 〜左手独奏のための〜」編曲者による演奏解説
‣ Zichy, Géza(1849-1924) ジチー
ゲザ・ジチー(1849-1924)はハンガリーの伯爵で、若年期の狩猟事故により右腕を失ったピアニストです。その後も演奏活動を続け、左手のみによる演奏技巧を高度な水準まで磨き上げました。リストとも親交があり、左手独奏のためのレパートリーを自ら開拓した先駆的な存在の一人として知られています。
· Chaconne by J.S. Bach for the left hand alone
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1–5小節)

邦題:J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番 ニ短調 BWV1004 より シャコンヌ(左手独奏編曲版)
出版年:1883年
演奏時間:約17分
難易度:ツェルニー40番中盤程度
分類:編曲作品
1883年出版。ジチーがJ.S.バッハの原曲から直接編んだのではなく、ヨアヒム・ラフによる両手版ピアノ編曲を下敷きとして左手用に書き直したものとされています。さらにそのラフ版自体、フランツ・リストが着手しながら未完に終わらせたものの影響下にある可能性も指摘されており、複数の編曲の流れが交わって成立した一作と位置づけられます。
J.S.バッハ「シャコンヌ」の他の左手編曲と比較する
【ピアノ】左手のみで演奏するJ.S.バッハ「シャコンヌ」編曲版の種類と背景
► 終わりに
左手独奏作品は、両手作品と比べるとまだまだ知られていないものが多く、新たな発見に満ちたジャンルです。本ライブラリーが、レパートリーを広げるきっかけになれば幸いです。
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