【ピアノ】左手作品の調べ方:楽譜・書籍・論文・音源の活用法

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【ピアノ】左手作品の調べ方:楽譜・書籍・論文・音源の活用法

► はじめに

 

左手のための作品に興味を持ち始めると、多くの方がまず突き当たるのが「情報の少なさ」ではないでしょうか。両手作品と違って解説記事や演奏会も少なく、楽譜選びや作品の背景を調べようとしても、なかなか手がかりが見つかりません。

本記事では、筆者が実際に左手作品の情報を集めてきた中で活用してきた方法を、書籍・楽譜・音源・研究資料といった観点からまとめて紹介します。

 

► 一般的なピアノ曲情報が掲載された基本的な書籍資料

 

まず前提として、左手作品に限らずピアノ曲全般の解説が載っている代表的な書籍を挙げておきます。情報量自体はそれほど多くありませんが、楽曲解説を探すうえでの基本資料として押さえておきたいところです。

・ピアノ音楽史事典 著:千蔵八郎 / 春秋社
・名曲事典 ピアノ・オルガン編 著:千蔵八郎 / 音楽之友社
・鍵盤音楽の歴史 著:F.E.Kirby 訳:千蔵八郎 / 全音楽譜出版社
・ピアノ音楽事典 作品篇 著:分担執筆 / 全音楽譜出版社
・ピアノ・レパートリー事典 著:高橋淳 / 春秋社
・最新名曲解説全集 独奏曲シリーズ / 音楽之友社
・作曲家別名曲解説ライブラリー / 音楽之友社(「最新名曲解説全集」と解説内容は重複している部分があります)
・新訂 ピアノの学習 著:長岡敏夫 / 音楽之友社
・ピアノ学習ハンドブック 著:千蔵八郎 / 春秋社

これらの書籍の詳細レビュー:レベル別:ピアノ独学者のための学習参考書籍ライブラリー

 

ただし、これらの書籍における左手作品の扱いはごく限定的で、収録されていても知名度の高い数曲程度に留まることがほとんどです。左手作品を本格的に調べるには、別のアプローチが必要になってきます。

 

► 左手作品を調べる具体的な方法

‣ まず、定番の楽曲事典から

 

左手作品を専門的に調べるのであれば、まず次の2冊を押さえておくといいでしょう。どちらも英語で書かれた洋書ですが、片手ピアノ音楽を調べるうえでの土台となる資料です。

 

テオドール・エーデルによる「Piano Music for One Hand」

全121ページとコンパクトながら、前半の30ページ以上を割いて片手音楽の歴史的背景や、ドレイショク、フマガリ、ジチー、ヴィトゲンシュタインといったキーパーソンについて詳しく解説している点が特徴です。後半のカタログ部分では左手・右手それぞれの独奏曲、片手とオーケストラのための作品、室内楽が紹介されており、歴史的な流れを押さえながら作品も知りたい場合に特に重宝します。

 

ドナルド・L・パターソン編「One Handed:A Guide to Piano Music for One Hand」

こちらは全313ページというボリュームで、収録作品数は2,100超え。右手・左手のオリジナル作品はもちろん、片手用の編曲作品、協奏的作品、アンソロジー収録曲やディスコグラフィーまで網羅しており、具体的な作品を探すためのカタログとしての性格が強い一冊です。巻末の参考文献も76件と充実しており、さらなる資料探しの起点としても使えます。

 

両者は方向性が異なるため、楽曲とともに歴史や背景知識も知りたいときはエーデルの著作、具体的な作品リストを中心に当たりたいときはパターソンの著作、というように使い分けるといいでしょう。それぞれの詳しいレビューは以下の記事でまとめているので、あわせてご覧ください。

【ピアノ】「Piano Music for One Hand」(テオドール・エーデル 著)レビュー
【ピアノ】「One Handed」(ドナルド・L・パターソン 編)レビュー

 

‣ 左手作品の楽譜を買う意味

 

筆者は左手のための作品の楽譜を数多く所有していますが、演奏や分析のためだけでなく、「まとまった作品情報を得る」目的で購入することも少なくありません。

両手で演奏する作品であれば、演奏機会に恵まれた曲も多く、情報も比較的簡単に集まります。しかし左手作品となると事情が変わり、ネット上の断片的な情報ではなく、きちんと出版物としてまとめられた情報はぐっと少なくなってきます。そこで頼りになるのが、楽譜そのものに付属している作品解説や作曲家解説です。

左手作品は比較的マイナーなジャンルであることから、海外の出版社から出ている楽譜が中心となるため、解説文も日本語ではないことがほとんどですが、それでもこの文章は貴重な一次情報になります。

編曲作品の場合は、さらに一段階さかのぼって調べる必要が出てくることもあります。例えば、C.P.E.バッハ作曲の「Solfeggio Wq 117/2 H220」をA.R.パーソンズが左手用に編曲した作品がありますが、この編曲自体の情報はもちろん、原曲の情報ですら多くはありません。そこで、ペータース版など 「原曲の楽譜も」入手し、そこに掲載されている作品解説を参考にするといった方法をとります。

 

‣ ブックレットにはたいてい解説が付いている

 

左手作品を収録したCDのブックレットには、作品解説が記載されているケースがほとんどです。あえて左手作品だけを扱うアルバムであるため、演奏者自身と左手作品との関わり(怪我をきっかけに取り組み始めた など)まで書かれていることも珍しくありません。

特に輸入盤に多い、左手作品のみを集めた音源のブックレットは非常に貴重な資料になります。例えば、左手作品だけを収録した「”Mit links” — Der Pianist Paul Wittgenstein」には18ページのブックレットが付属しており(うち7ページはドイツ語)、収録曲の背景が丁寧に解説されています。

以下のライブラリーでは、左手作品のみを取り上げた音源も紹介しているので、あわせて参考にしてみてください。

ピアノ学習参考音源ライブラリー:演奏解釈を学ぶ厳選録音集

 

‣ さらなる追加資料を探す:研究紀要・論文・マスタークラス 他

 

より専門的な理解を求める場合は、研究論文などにあたることで新たな視点が得られることもあります。主な検索先としては、次のようなものが挙げられます:

・国立情報学研究所 CiNii Books
・国立国会図書館 NDL Search
・世界図書館共同カタログ WorldCat
・各音楽大学の研究紀要

インターネット上で無料公開されている論文も少なくありません。博士論文がそのまま公開されている例もあります。

また、「一つの資料の参考文献をたどっていく」という方法も有効です。論文の末尾にまとめられている参考文献表に目を通し、そこに挙げられている資料をさらに検索していくというやり方で、専門書でも学術的なものであれば同様の一覧が付いていることがほとんどです。参考文献表に載っている資料は、その文章を書く際に実際に参照されたものなので、たどっていけば有益な資料に行き着くことが多くなります。

こうした、より専門的な情報を求める場合は、以下の記事で紹介している方法もあわせて活用してみてください。

【ピアノ】楽曲分析を深める方法:専門書・マスタークラス・研究論文の活用ガイド

 

修士論文にも有益なものはありますが、信頼性や研究の完成度を重視するのであれば、博士論文や査読付き学術誌に掲載された論文を優先するといいでしょう。

他には、次のような情報収集手段が考えられます:

・著名なピアニストによるマスタークラスの記録
・音大図書館や国会図書館に置かれている専門書
・作品の作曲家や編曲家本人への直接の問い合わせ

これらは、一般的な事典や楽譜の解説だけでは得られない、作品にまつわるさらなるヒントを与えてくれるはずです。

 

► なぜ、楽曲事典は役に立つのに不要だと感じてしまうのか

 

ピアノを弾く方にとって、ピアノ音楽の楽曲事典は意外と縁遠い存在かもしれません。知人に聞いてみても、そもそも持っていなかったり、購入はしたもののほとんど開いていなかったりするケースが目立ちます。

これは、1曲あたりの情報量がそれほど多くないことに加え、ネット検索でも簡単に情報が出てきてしまうという事情が背景にあると考えられます。

しかし、左手作品に関しては話が変わってきます。上で紹介した「Piano Music for One Hand」や「One Handed」といった片手音楽専門の事典では、1曲あたりの情報量こそ多くないものの、これらを見なければなかなかたどり着けない情報が数多く載っています。筆者自身、楽曲事典のありがたみを実感するようになったのは、左手作品にのめり込むようになってからのことでした。

 

► 終わりに

 

左手作品は、一般の検索エンジンでは見つからない情報も多く、複数の資料を突き合わせることが前提になるジャンルです。しかし、専門の楽曲事典、楽譜の解説、CDブックレット、研究論文などを一つずつ押さえていけば、着実に理解を深めていくことができます。

今回紹介した方法を組み合わせながら、自身の学習に取り入れてみてください。

 

併読推奨記事

左手のためのピアノ音楽に関する記事まとめです。入門ガイド、左手音楽史、楽曲別演奏解説、技術解説、レパートリー紹介まで網羅。初心者から上級者まで体系的に学べます。

【ピアノ】左手のためのピアノ音楽:おすすめ曲・演奏解説・技術記事まとめ

 


 

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