【ピアノ】バッハ=ブラームス「シャコンヌ」完全ガイド:難易度・楽譜選択のポイント
► はじめに
左手のみで演奏するように編曲されたバッハのシャコンヌ、通称「バッハ=ブラームス シャコンヌ」。
本記事では、この名作の特徴、難易度、おすすめの楽譜をピアニストの視点から解説します。
► 作品の概要と背景
‣ 成立背景
バッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番」の終曲「シャコンヌ」は、数多くのピアノ編曲版が存在しますが、その中でも特に注目すべき編曲が、ヨハネス・ブラームスによる左手のための編曲版です。
1877年頃に作られたこの編曲には、「右手を負傷したクララ・シューマンのために」という逸話が残されています。
音楽学者のヨアヒム・ドラハイムによれば、この説の根拠となる書簡が残されているものの、他の動機も否定できないとされています。
‣ 編曲の特徴
バッハ=ブラームスの編曲版には、以下の特徴があります:
1. 原曲への忠実さ
・ヴァイオリン曲の音の配置を基本的に維持
・編曲者による過度な創作的改変を抑制
2. 演奏上の工夫
・左手の解剖学的特徴(特に親指の位置)を考慮した和音配置
・ペダル使用を前提とした音の保持方法の工夫
3. バッハ=ブゾーニ版との違い
・ブゾーニ版:両手での演奏を前提とした劇的な音響効果の追求
・ブラームス版:原曲の音楽的本質を保持しつつ、左手での実現可能性を追求
► 演奏難易度
・目安:ツェルニー40番の中盤程度の技術水準が必要
・左手単独での演奏経験がない場合は、より困難に感じる可能性が高い
► 練習へのアプローチ
シャコンヌは変奏曲形式のため、以下のような段階的な学習が有効です:
1. テーマ部分の確実な習得
2. 技術的に易しい変奏から順次取り組む
3. 必要に応じて一部の変奏を省略しての演奏も検討可能
► おすすめの楽譜選択
‣ ヘンレ版(Henle Verlag)
特徴:
・原典版としての信頼性
・ブラームス自身の運指を斜体で明示
・最小限の編集による純粋な楽譜表現
・バッハ, J.S./ブラームス: パルティータ 第2番 ニ短調 BWV 1004 より シャコンヌ
‣ 舘野泉校訂版(全音楽譜出版社)
特徴:
・左手演奏の専門家による実践的な校訂
・余裕のあるレイアウトによる読みやすさ
・詳細な運指と演奏上の注意点
・舘野泉 左手のピアノシリーズ 左手のためのピアノ作品集 (舘野泉左手のピアノ・シリーズ)
‣ 楽譜選択のアドバイス
・研究目的:ヘンレ版を主体に、ペータース版も参照
・演奏実践重視:舘野泉版から開始し、必要に応じてヘンレ版で確認
► まとめ
バッハ=ブラームス「シャコンヌ」は、左手のピアノ文献の中でも特に重要な位置を占める作品です。
技術的な課題は確かにありますが、変奏曲形式という特性を活かした段階的な学習が可能です。
演奏に挑戦される際は、まず自身の目的(研究か実践か)に応じた楽譜を選択し、無理のない計画を立てて取り組むことをおすすめします。
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