【ピアノ】ベートーヴェン ピアノソナタ入門:独学で弾けるおすすめ2曲と楽譜選び
► はじめに
「ベートーヴェンのピアノソナタ」と聞くと、「難しそう」「上級者向け」という印象を持つかもしれません。確かに「難曲」と言われている作品もありますが、一般的に考えられているより敷居は高くありません。中にはツェルニー30番導入程度(およそピアノ学習3-4年程度)の力があれば独学でも挑戦でき、なおかつ音楽的に素晴らしい作品もあります。
本記事では、学習者にとって取り組みやすく、なおかつ音楽的充実度の高い2作品を厳選して紹介します。
► 入門におすすめの2作品
今回紹介するのは、以下の2作品です:
・ピアノソナタ 第5番 Op.10-1
・ピアノソナタ 第9番 Op.14-1
選曲の基準:
・「2つのやさしいピアノソナタ Op.49」は、ソナチネアルバムにも収録されているため除外
・単一楽章の取り組みでなく、全楽章演奏を想定して選曲
‣ ピアノソナタ 第5番 Op.10-1
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、第1楽章 曲頭)
· 演奏難易度
2006年のNHK連続テレビ小説「純情きらり」で、主人公の桜子(宮﨑あおい)が音楽学校を受験する際の試験曲として取り上げられました(第1楽章)。その際の会話が印象的でした:
音楽教師「きちんと弾ければ大丈夫」
この会話からも分かるように、Op.10-1は取り組みやすいソナタの一つです。ツェルニー30番導入程度(およそピアノ学習3-4年程度)の力があれば独学でも挑戦可能です。
第3楽章は「テンポが速い」点で練習を要しますが、基本的に各楽章の難易度に大きな差はありません。
· この作品をおすすめする理由
・取り組みやすい難易度
・コンパクトな楽曲構成で練習しやすい
・巨匠ヴィルヘルム・バックハウスのお気に入りソナタ
· 楽譜選び
ヘンレ版:
・国際的な信頼性が高く、コンクールの標準楽譜でもある
・原典に忠実で、一生使える確実な選択
・Op.14-1も同じ楽譜集に収録
・ベートーヴェン ピアノソナタ集 第1巻 ヘンレ版
園田高弘校訂版:
・ペダリングや運指が詳しく記載された解釈版
・日本を代表するピアニスト園田高弘氏の監修
・彼自身の解釈が書き込まれた解釈楽譜
・ヘンレ版との併用もおすすめ
・園田高弘 校訂版 ベートーヴェン・ピアノ・ソナタ第5番 ハ短調 作品10-1 春秋社
‣ ピアノソナタ 第9番 Op.14-1
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、第1楽章 曲頭)
· 演奏難易度
古典派の比較的平易な作品を集めた「ソナタアルバム」にも収録されている、学習者向けのソナタです。
難易度はツェルニー30番導入程度(およそピアノ学習3-4年程度)で挑戦可能。各楽章の難易度差は小さいのが特徴です。
なお、兄弟作品の「ピアノソナタ第10番 Op.14-2」は、3:2のリズムを多用するなど、Op.14-1よりも難易度が高く、音大入試でも選曲される作品のため、今回は除外しました。
· この作品をおすすめする理由
・取り組みやすい難易度(Op.10-1よりはやや難しめ)
・コンパクトな楽曲構成
・知名度が高く、知人などからのアドバイスを得やすい
・Op.10-1が短調なのに対し、この作品は長調であり、好みで選曲可能
· 楽譜選び
基本的にはOp.10-1と同じ選択肢があります:
ヘンレ版(Op.10-1と同じ楽譜集に収録)
・ベートーヴェン ピアノソナタ集 第1巻 ヘンレ版
園田高弘校訂版
・園田高弘 校訂版 ベートーヴェン・ピアノ・ソナタ第9番 ホ長調 作品14-1 春秋社
► 学習のための参考音源
ピアノ学習において、優れた演奏を聴くことは非常に重要です。特に初めてベートーヴェンのソナタに取り組む際は、伝統的な解釈を知っておくことも必要でしょう。
筆者が特におすすめするのが「ヴィルヘルム・バックハウス(1884-1969)」の録音です。
バックハウスの演奏の特徴:
・ドイツ的な硬質な演奏がベートーヴェンの作品にマッチ
・ロマン派的な解釈を抑えた古典的アプローチ
録音情報
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集
特徴:
・充実した解説書(全32曲の譜例付き解説)
・作品によっては反復記号による繰り返しを省略した、聴きやすい演奏時間
・ベートーヴェン : ピアノ・ソナタ全集
別のタイプの全集も出ています。筆者が所持しているのは上記の全集ですが、手に入らない場合はこちらを検討してみてもいいでしょう。
・ベートーヴェン : ピアノ・ソナタ全集
► 終わりに
今回紹介した作品を通じて、「ベートーヴェンを弾いた」という達成感を得るだけではなく、古典派の形式美、そして作曲家の創造性を感じることができます。
この2作品を学習した後は、より多彩な表現を持つ他のソナタへの道も開かれます。将来的な期待も持ちつつ挑戦してみてください。
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