【ピアノ】左手作品と2倍仲良くなる方法
► はじめに
左手のみで演奏するピアノ作品は、特別な事情がある演奏者だけのものだと思っていませんか。実は、すべてのピアニストにとって取り組む価値のある、豊かな音楽世界が広がっています。
本記事では、左手作品を日常の練習に自然と取り入れるための具体的な方法を紹介します。「何から始めればいいか分からない」という方でも、今日から実践できる内容です。
左手作品を練習する利点などについては、【ピアノ】左手のみで演奏するピアノ曲:魅力と実践の入門ガイド をご覧ください。
► 左手作品と2倍仲良くなる方法
‣ 1. アンソロジーを出しっぱなしにする
左手作品のアンソロジーを一冊買ったら、ピアノのそばに出しっぱなしにしておきましょう。普段両手作品に取り組んでいると、見えないところにしまった途端に存在を忘れてしまいがちです。
アンソロジーには様々な作曲家・難易度の作品が収録されているので、初見の教材として気軽に触れるだけでも十分な価値があります。視界から消さずに手の届く場所に置いておくことが、左手作品と仲良くなる第一歩です。
手に入りやすいアンソロジー:
Piano Music for One Hand(編:Raymond Lewenthal)
最も定番の左手作品アンソロジー。楽譜だけでなく、左手作品・左手演奏についての詳しい解説が冒頭にまとめられています。
詳細解説記事:【ピアノ】「Piano Music for One Hand」レビュー:左手独奏作品を幅広く収録した楽譜集+解説集
An Anthology of Piano Music for the Left Hand Alone(編:Ruby Morgan)
定番曲はもちろん、演奏しにくい編曲で知られる歴史的作品の再編曲版を複数収録しています。
ONE HAND PIANO 40 Pieces for Left or Right(編:Barbara Arens)
右手作品・左手作品・どちらの手でも弾ける作品が幅広く収められています。
‣ 2. 左手音楽史に興味を持つ
単純に曲から入るのもいいのですが、左手音楽史には作品誕生のきっかけをはじめ、興味深いエピソードがたくさんあります。歴史的な背景を知ることで、より深く作品にはまってしまうかもしれません。左手作品の多くは、誕生の背景に何らかの事情があります。
また、両手のピアノ曲でよく知っている作曲家が残した数少ない左手作品の背景を知るのもおすすめです(バルトーク、リスト、ラヴェルなど)。日頃その作曲家の両手作品に取り組んでいる方なら、理解をさらに深めることにもつながります。
文献はあまり多くありませんが、本Webメディアでも左手音楽史の記事を多く取り上げています。以下のまとめ記事も参考にしてみてください。
【ピアノ】左手のためのピアノ音楽:おすすめ曲・演奏解説・技術記事まとめ
‣ 3.「特別な事情がある人が弾くもの」という固定観念を捨てる
左手のみのプログラムでステージに立つと、「ステージに出てくるまで、右手がない方かと思っていました」という感想をいただくことがあります。2010年以降、左手作品はずいぶん広まってきたと感じますが、それでもまだまだ認知度が低く、「特別な事情がある方が弾く作品」というイメージを持たれている方が多いのが現状です。
しかし実際には、誰でも取り組む価値のある作品です。その認識が広まるように、今後も左手作品の世界を分かりやすく紹介する記事を出していく予定です。
‣ 4. 著名な作品から始める
左手作品は、作曲・編曲に独特の技術が必要なジャンルです。世に出ているものの中には、実際には弾きにくかったり、音楽的に響きにくいものも少なくありません。最初にそういった作品に当たってしまうと、左手作品全体に苦手意識を持ってしまう恐れがあります。
バッハ=ブラームス、スクリャービン、サン=サーンス、ケーラーの一部の作品といった「左手作品として著名な曲」であれば、作品そのものの完成度に起因する挫折は起きにくく、比較的安心して取り組めることでしょう。
入門曲の紹介から楽譜集の案内まで、以下の記事でまとめています。
【ピアノ】左手のみで演奏するピアノ曲:魅力と実践の入門ガイド
‣ 5.「初見の教材にする」または「5曲に1回やる」をマイルールにする
アンソロジーを出しっぱなしにして初見の教材として幅広く触れるのはとてもおすすめですし、あるいは、「5曲に1回は左手作品に取り組む」と決めてしまうのも効果的です。どちらかが中長期の習慣になれば、気づいたころには左手作品通になっているはずです。
筆者が初めて左手作品に取り組み始めた頃、その分野に詳しい女性ピアニストの方からこんなアドバイスをいただきました。「とにかく数多くの左手作品を実際に弾いてみて、自分に合う作品を探すことが大切」というものです。
初見で毎日少しずつ端から弾いていき、ピンときた作品があれば本格的に取り組む作品にスライドさせる——この組み合わせが、最もおすすめの方法です。
‣ 6. まずは「聴く専門」からでもいい
弾いて得られる理解度には及ばないものの、聴くだけでも左手作品の世界を十分に楽しめます。
フェーズ1:日常での流しっぱなしで耳に入れることから
難しく考えず、家事や作業のBGMとして流しておくだけで構いません。一つのアルバムを何度もリピートしてみてください。「理解しよう」と身構えるよりも、繰り返し聴いているうちに曲の輪郭が自然と頭に入ってくる状態を目指しましょう。
フェーズ2:楽譜と音を結びつける
耳に馴染んできた曲があれば、今度は楽譜を手元に置いて聴いてみましょう。構造上の工夫などが見えてくると、また別の面白さがあります。余裕があれば、気になった箇所だけでも弾いてみると理解がぐっと深まります。
ポイントは、最初から「ちゃんと聴こう」としないことです。能動的に向き合う前に、受動的に慣れる時間を十分に取ること——これが左手作品を長く楽しむための近道と言えます。
ピアノソロ作品や協奏曲については、以下の音源レビュー集で著名アルバムを紹介しています。まるっと一枚聴いてみるのがおすすめです。左手ピアノを含む室内楽作品には、現代的な語法を用いた作品も多く、最初は少し親しみにくく感じるかもしれません。
少しとっつきにくいものもありますが、マルティヌーの「左手ピアノと小管弦楽のための小協奏曲(ディヴェルティメント)ト長調 H.173」は比較的聴きやすく、入口として最適です。
► 終わりに
左手作品との付き合い方は、「義務としてやる」ではなく「気づいたら好きになっていた」が理想的な形です。アンソロジーを出しっぱなしにする・著名な作品から入る・初見の教材にするなどといった、心理的ハードルの低い入り口がたくさんあります。
どれか一つでも日常に取り入れることができれば、左手作品はきっと「特別なもの」ではなく「当たり前の選択肢の一つ」になるでしょう。まずは気になる一曲を聴いてみる、あるいはアンソロジーを一冊手に取ってみるところから始めてみてください。
併読推奨記事
左手のためのピアノ音楽に関する記事まとめです。入門ガイド、左手音楽史、楽曲別演奏解説、技術解説、レパートリー紹介まで網羅。初心者から上級者まで体系的に学べます。
【ピアノ】左手のためのピアノ音楽:おすすめ曲・演奏解説・技術記事まとめ
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