J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集に
はじめて挑戦したいと思っている方へ向けて、
「はじめに取り組むのにおすすめの番号 3選」
「使用楽譜の選び方」
について解説しています。
注 : 本記事で譜例を取り上げている作品は
パブリックドメインになっている作品です。
権利に関わる部分は表示しておりません。
譜例はFinaleで作成したものです。
【J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集】「入門最適曲」と「楽譜の選び方」
► 取り組む作品は「フーガの難易度」で選ぶべき
「J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集」は
第1巻と第2巻を合わせると相当な曲数がありますので、
漠然と挑戦してみたいと思っていても
どこから手をつけていいか困るはず。
各曲の難易度は必ずしも番号順になっていないので、
第1巻の第1番から順番に手をつけていくのは
おすすめできません。
「平均律クラヴィーア曲集」は「プレリュード」と「フーガ」がセットで1曲になっており、
フーガには「声部数」の問題があります。
「2声のフーガ」は第1巻と第2巻全曲の中で唯一1曲のみ(第1巻 e-moll〈ホ短調〉のフーガ)。
しかし、このフーガはテンポが速いので、
導入者がていねいに音楽をつくるためには
まずは、後述するような
「曲想が堂々とした、テンポのゆるやかなフーガがついている作品」
を選ぶほうが得策。
プレリュードはどれも多声処理が難しくないので、
テンポの速い楽曲であっても対応できるでしょう。
ただし、
3声のフーガだからといって
必ずしも4声よりも易しい楽曲ばかりではありません。
それに、4声といっても「部分的に4声になっているだけ」という楽曲もあります。
ますます選択に困ってしまいますね。
選曲のポイントはひとつです。
「プレリュードはやや難しくても何とかなるので、フーガの難易度で選ぶべき」
ということ。
ほんらい、選曲にあたっては
プレリュードとフーガの関係性について考えたり
弾きたい番号に挑戦したりすることも重要ですが、
漠然と「平均律クラヴィーア曲集」に憧れている方は、
まずはこの選曲方法がベストでしょう。
► はじめに取り組むのにおすすめの番号 3選
‣ 第1巻 第2番 c-moll(ハ短調)
この楽曲をおすすめするのは、
フーガ(3声)が簡明で親しみやすい曲調であり
技術的にも取り組みやすいから。
テンポがゆるやかであり(ヘルマン・ケラーは♩= 60-63 を提案)、
ストレッタ(複数の主題〈または応答〉を被せるように同時出現させる手法)
が出てこないことで、
技術的なハードルが取り組みやすいものになっています。
メロディックで楽曲としても味のある作品と言えるでしょう。
演奏時間は、プレリュードとフーガをあわせて約3分半。
おすすめ度 第2位。
‣ 第1巻 第6番 d-moll(ニ短調)
「平均律クラヴィーア曲集」入門として多く使われている楽曲。
プレリュード、フーガ(3声)ともに美しく、
テクニック的にも取り組みやすいものです。
フーガは、
バランスのとれた「反行主題」が使われるなど
作曲の観点から整ってできているうえ、
単純な2部構成に短いエンディングがついたものであり、
理解のしやすさもあります。
テンポはゆるやか(ヘルマン・ケラーは♩=72 を提案)。
親しみやすさ、取り組みやすさ、作曲面での充実度など
あらゆる要素がそろった入門者に最適の作品。
演奏時間は、プレリュードとフーガをあわせて約4分。
おすすめ度 第1位。
‣ 第2巻 第2番 c-moll(ハ短調)
取り組みやすい「4声のフーガ」をもつ番号も
1曲紹介しておきましょう。
フーガは部分的に4声になりますが、
その箇所は多くなく
全体的に取り組みやすくできています。
今回紹介した3曲の中で言えば
いちばん技術的ハードルのある楽曲ですが、
オルガンを感じさせる堂々としたフーガで
テンポもゆるやか(ヘルマン・ケラーは♩=58-63 を提案)。
じっくりと取り組めば
ていねいに音楽をつくっていくことができるでしょう。
演奏時間は、プレリュードとフーガをあわせて約6分。
おすすめ度 第3位。
ちなみに、
「第1巻 第1番 C-dur(ハ長調)」は
プレリュードがあまりにも有名なので興味をもちがちですが、
この番号のフーガはかなり高難度です。
フーガの技法が入り組んでいて
プレリュードと難易度に大きな開きがあるので、
「はじめて取り組む楽曲」としてはおすすめできません。
► 使用楽譜の選び方
「ヘンレ版」などの原典版を一冊持っておくことは
もちろんおすすめですが、
アーティキュレーションが書かれていないので
「平均律クラヴィーア曲集」にこれから挑戦したい独学の方には向きません。
したがって、
「解釈版」をそのまま使って学習してしまいましょう。
おすすめの楽譜は、
「園田高弘 校訂版 J.S.バッハ 平均律クラヴィーア曲集」
こちらの解釈版です。
第1巻、第2巻それぞれ2冊(計4冊)に分かれていて、なんとCDも付属。
Amazonですぐに手に入ります。
「第1巻 第2番 c-moll〈ハ短調〉(おすすめ度 第2位)」
および
「第1巻 第6番 d-moll〈ニ短調〉(おすすめ度 第1位)」も収録
◉ 園田高弘 J.S.バッハ 平均律クラヴィーア曲集 第1巻(1) (CD付)
「第2巻 第2番 c-moll(おすすめ度 第3位)」収録
◉ 園田高弘 校訂版 J.S.バッハ 平均律クラヴィーア曲集第2巻 (1) (CD付)
「アーティキュレーション」はもちろん、
「運指」や「装飾音符の入れ方」まで
幅広くカバーできます。
解釈版の中でも詳しい印象があるということと、
校訂者によるCD音源も参照できることが信頼のポイント。
► 終わりに
「平均律クラヴィーア曲集」は、
最適な曲を選んでていねいに取り組みさえすれば
“いますぐ” 挑戦できる楽曲もあります。
本記事を参考に
一歩踏み出してトライしてみましょう。
練習方法についての具体的なヒントについては、
【ピアノ】徹底解説 : はじめての「平均律クラヴィーア曲集」学習方法
をご覧ください。
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