【ピアノ】J.S.バッハ インヴェンション入門ガイド:初心者におすすめの4曲と効果的な学習方法

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【ピアノ】J.S.バッハ インヴェンション入門ガイド:初心者におすすめの4曲と効果的な学習方法

► はじめに

 

J.S.バッハの「2声のインヴェンション」は、ピアノ学習において避けて通れない重要な作品群です。全15曲全てが重要ですが、初心者の方が効率的に学習を進めるためには、適切な入門曲を選ぶことが大切です。

本記事では、インヴェンション入門に最適な4曲(第1番、第4番、第8番、第13番)について、なぜこれらの曲が初心者に適しているのか、どのような順序で学習すべきかを詳しく解説します。これらの曲をマスターすることで、インヴェンションの特徴を理解し、バロック音楽の基礎を身につけることができるでしょう。

 

► なぜこの4曲が入門に最適なのか

 

全15曲の中から、以下の基準で入門に最適な4曲(第1番、第4番、第8番、第13番)を選定しました。

選定基準:

・運指の自然さ:極端に困難な運指が少ない
・装飾音の簡潔さ:複雑な装飾音が出現しない
・対位法の明確さ:2声部の動きが理解しやすい
・譜読みの容易さ:調号や臨時記号が穏やか

 

対照例:インヴェンションの入門では避けるべき楽曲

第9番 BWV780(ヘ短調):

・臨時記号、小節内有効臨時記号が多く、譜読みが困難
・困難な運指を要求される箇所が複数存在

第12番 BWV783(イ長調):

・技術的に最も高度なレベルを要求
・複雑な装飾音が多数出現

 

► 入門4曲で身につく技術と音楽性

 

インヴェンション全15曲を通して身につく技術と音楽性は多岐に渡りますが、特に入門に適した上記4曲からも得られるものは以下の通りです:

 

技術面での成果:

・複声部の独立演奏:両手が異なる旋律を同時に演奏する際の頭のハタラキの開発
・両手を同等に扱った奏法:バイエルやツェルニーとは異なる、左右両手の均等な技術発達
・運指技術の向上:装飾音など、バロック音楽に多い運指パターンの習得

音楽面での成果:

・対位法の基礎理解:バロック音楽の根幹となる作曲技法の体得
・歴史的様式感:バロック時代の音楽語法への理解

 

► 推奨学習順序と各曲の特徴

‣ 第1位:インヴェンション第1番 BWV772(ハ長調)

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)

 

最初に取り組むべき理由:

・ハ長調(調号なし)であり、内容的にも読譜が最も容易
・シンプルで明確な対位法構造
・中庸なテンポで練習しやすい
・広く知られ、演奏イメージを掴みやすい

 

詳細解説記事

【ピアノ】インヴェンション入門!第1番 BWV772「全運指」公開

 

‣ 第2位:インヴェンション第8番 BWV779(ヘ長調)

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)

 

2番目に推奨する理由:

・ヘ長調(♭1つ)で親しみやすい
・装飾音記号が一切出現しない
・対位法の技法が明確で、技術的な難所が少ない
・テンポはやや快速だが、音遣いがシンプルなので無理なく演奏可能

 

詳細解説記事

【ピアノ】インヴェンション入門!第8番 BWV779「全運指」公開

 

‣ 第3位:インヴェンション第4番 BWV775(ニ短調)

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)

 

3番目に推奨する理由:

・ニ短調(♭1つ)で取り組みやすい
・テンポは快速だが、技術的に簡潔で弾きやすい構造
・一部装飾音でつまずく場合あり

 

詳細解説記事

【ピアノ】インヴェンション入門!第4番 BWV775「全運指」公開

 

‣ 第4位:インヴェンション第13番 BWV784(イ短調)

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)

 

4番目に推奨する理由:

・イ短調(調号なし)で読譜が容易
・「譜面の見た目より弾きやすい」との声多数
・技術と音楽性のバランスが良好

 

詳細解説記事

【ピアノ】インヴェンション入門!第13番 BWV784「全運指」公開

 

► 効果的な学習の進め方

‣ 学習期間の目安

 

入門に適した上記4曲を学習する期間の目安について触れておきましょう。個人差はありますが:

・週1曲のペースで4曲進めると約1ヶ月程度
・1曲1曲を徹底的に仕上げることを重視する場合は、1曲あたり3週間かける(約2ヶ月半)

 

‣ レベル別学習アドバイス

· ピアノ演奏の初中級者の方(ツェルニー30番入門〜程度)

 

焦らずに1曲ずつ丁寧に仕上げることが重要です。インヴェンションは古典派のソナチネとは全く異なる音楽語法を持つため、新しい感覚を身につける必要があります。

 

取り組みのポイント:

・解釈版楽譜の活用を100%推奨(「園田高弘 校訂版」が最適)
・毎回同じ運指で練習するように意識し、積み上がる学習を目指す
・テンポアップを急がず、丁寧に味わいながら学習する

 

· 中級者の方(ツェルニー40番中盤〜程度)

 

技術的には十分対応可能ですが、バロック様式の理解が重要になります。古典派・ロマン派とは異なる表現法を習得しましょう。

 

取り組みのポイント:

・解釈版等も参考にしながら、歴史的奏法への理解を深める
・テンポ設定の根拠を考える
・原典版と解釈版の比較検討

 

► 初心者には解釈版がおすすめ

 

重要な注意点

上記の楽曲個別解説記事では、著作権に配慮し「原典版」の譜例を使用しています。これは楽曲自体はパブリックドメインですが、各出版社の解釈版には独自の表現記号等が含まれるためです。学習の際は、自身で解釈版を用意することをおすすめします。

 

初心者におすすめの解釈版

特に初心者から中級者には「園田高弘 校訂版」が最適です。その特徴は:

・詳細なアーティキュレーション指示
・独学でも安心して学習できる情報量

もちろん、残りの11曲を学習する時にも有効に使える一冊です。

 

► よくある質問

 

Q:4曲全てを学習する必要がありますか?

A:はい、4曲全てを学習することを強く推奨します。それぞれが異なる学習要素を持ち、総合的にインヴェンションの基礎を身につけることができます。時間的制約がある場合は、第1番を最優先してください。

 

Q:他の曲から始めてはいけませんか?

A:絶対的な決まりはありませんが、学習効率の観点から入門4曲からの開始が最適です。他の楽曲は技術的・音楽的により高度な要素を含むため、挫折のリスクが高くなります。

 

Q:入門4曲の後はどの曲に進むべきですか?

A:第2番、第6番、第7番あたりが次のステップとして適切です。第5番、第9番、第12番あたりはインヴェンション全15曲の中では比較的高度な内容を含むので、後に取り組む作品とするといいでしょう。

 

► 次のステップへ

 

入門4曲をマスターしたら、残り11曲の中から興味のある曲を選んで学習を継続しましょう(上記「Q:入門4曲の後はどの曲に進むべきですか?」参照)。各曲にはそれぞれ固有の技術的・音楽的課題があり、段階的にレベルアップを図ることができます。

また、インヴェンション全体の学習が進んだら、次は「3声のシンフォニア」へと発展させることで、J.S.バッハの音楽世界をより深く探求できるでしょう。

 

2声の残り11曲の詳しい練習ポイントについては、以下の記事を参考にしてください。

【ピアノ】J.S.バッハ インヴェンション全15曲 練習参考記事一覧と学習ガイド

 

► 終わりに

 

J.S.バッハのインヴェンション入門4曲は、バロック音楽への本格的な扉を開く重要な楽曲となります。これらの曲を通じて得られる技術と音楽的理解は、今後のピアノ学習において必ず大きな財産となるでしょう。

 


 

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