【ピアノ】ピーター・クーパー「ピアノの演奏様式」レビュー
► はじめに
本書「ピアノの演奏様式」は、置き去りにされがちな「様式」の課題に正面から向き合う一冊です。「何を弾いても、全てロマン派風になってしまう」と悩んでいる方にとって、突破口を見つけるきっかけになるでしょう。
・出版社:シンフォニア
・邦訳初版:1987年
・ページ数:203ページ
・対象レベル:初中級~上級者
・ピアノの演奏様式 著:ピーター・クーパー 訳:竹内ふみ子 / シンフォニア
► 内容について
‣ 本書の特徴
1. 実践的な演奏様式の探求
著者のピーター・クーパーは、長年に及ぶピアニスト、チェンバリスト、そしてピアノ教師としての豊富な経験を基に、演奏様式について多角的な視点から解説しています:
・作曲家個人の様式
・国民性による様式
・時代背景による様式
・個々の作品固有の様式
・楽器の特性による様式
これらの要素がどのように演奏に影響を与えるかを、具体的に説明しています。
2. 楽器の歴史的発展との関連性
楽器の進化と演奏様式の関係性について深く掘り下げている点が特徴です。例えば:
・チェンバロからピアノへの移行期における演奏上の課題
・初期のピアノフォルテと現代のピアノの違いが演奏に与える影響
・各時代の楽器特性に応じた演奏アプローチ
・問題となりがちな、J.S.バッハの曲をピアノで演奏する場合の注意点についての解説
3. 実践的なアドバイス
本書には、演奏家として成長するための具体的な提言が数多く含まれています:
・作曲家をより深く理解するための音楽祭参加の推奨
・生活のテンポと演奏様式との関係性についての考察
・様式に適した響きを見出すための実践的なアプローチ
‣ 独学者にとっての有益さ
本書が独学でピアノを学ぶ方々に特に有益な理由として、以下の点が挙げられます:
1. 様式の重要性の理解
・「全てアラ・ショパン」になりがちな演奏から脱却するためのヒント
・各時代、作曲家固有の表現方法の理解
2. 演奏の質的向上
・楽器の特性を理解したうえでの適切な演奏アプローチ
・テンポや強弱の歴史的背景に基づいた選択
3. 音楽的視野の拡大
・楽器の歴史的発展の理解
・時代背景や国民性を考慮した演奏表現の探求
► 使用上の留意点
・第1刷には誤植が複数確認されている(少なくとも5箇所)
・学者が書いた書籍ではないため、一部の記述は著者の個人的な見解に基づいている
► 結論
本書は特に、「なぜそのように弾くのか」という演奏様式の根本的な理解を深めたい方、自身の演奏に歴史的な裏付けを持たせたい方におすすめです。通読によって得られる知識は、練習の方向性を明確にし、より確信を持った音楽表現へのヒントになるでしょう。
・ピアノの演奏様式 著:ピーター・クーパー 訳:竹内ふみ子 / シンフォニア
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