【ピアノ】ショパン作品の演奏ポイント解説集:譜例付き実践ガイド

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【ピアノ】ショパン作品の演奏ポイント解説集:譜例付き実践ガイド

► はじめに

 

本記事では、ショパンのピアノ作品における実践的な演奏アドバイスをまとめています。各曲の重要なポイントを、譜例とともに具体的に解説していきます。

この記事は随時更新され、新しい作品や演奏のヒントが追加されていく予定です。

 

► エチュード

‣ Op.10-1

 

この作品については以下の記事で解説していますので、参考にしてください。

【ピアノ】ショパン「エチュード Op.10-1」練習ポイント 3点

 

‣ Op.10-2

 

ショパンのエチュードのうち最難関として知られる作品なので、「練習への向かい方」を解説しておきます。

 

この作品の練習のキモは、「はじめの4小節」です。

この楽曲では同じ繰り返しが多く、はじめの4小節と共通している部分が他に12小節もあります。全曲が49小節なので、単純計算すると「49 ÷(4+12)」で、おおよそ1/3もの部分をはじめの4小節で学んだことに匹敵するのです。

たった4小節にしぼっていて練習しやすいので、コルトー版なども参考にありとあらゆるさらい方などを試しながら楽しんで練習してみましょう。

 

かつて筆者がこの作品を習ったとき、当時の指導者に「まずは、最初の4小節だけ練習してきて」と言われたのを覚えています。こういった練習方法は、他の難曲へ向かうときにも意外とうまく取り入れられるものです。

 

・コルトー版 ショパン 12のエチュード Op.10

 

 

 

 

 

 

‣ Op.10-3 別れの曲

 

この作品については以下の記事で解説していますので、参考にしてください。『‣ 例1:ショパン「エチュード(練習曲)ホ長調 Op.10-3 別れ」』で解説しています。

【ピアノ】楽曲分析の本質と実践法:より深い表現への道筋

 

‣ Op.10-4

 

譜例(PD作品、Sibeliusで作成、8小節目)

ショパン エチュード Op.10-4 8小節目 シンコペーションと声部バランスを示す譜例

【8小節目の音楽的特徴】

8小節目は、7小節目の右手の音型を巧みに縮小し、独自の音楽的表現を生み出しています。特に注目すべき点は:

1. リズムの骨格

・右側の譜例で示したように、シンコペーションが隠れている
・これにより、通常の拍節感とは異なる音楽的緊張感を演出

2. 声部のバランス

・右側の譜例で示したように、右手パートの下声と左手パートとで3度音程の和音が形成
・したがって、右手の下声のほうが少し大きめに聴こえるバランスで演奏する

 

‣ Op.10-5 黒鍵

 

この作品については以下の記事で解説していますので、参考にしてください。「‣ 35. ペダリングは仕上げのテンポ次第で変わってくる」で解説しています。

【ピアノ】ダンパーペダル 完全ガイド:音楽表現を豊かにする実践的ヒント集

 

‣ Op.10-9

 

譜例(PD楽曲、Finaleで作成、27-28小節)

ショパン エチュード Op.10-9 27-28小節 リズム変化とフレージングを示す譜例

注目ポイントは、「リズム」「フレージング」です。

カギマークを見てください。

ここまでは、「1小節を2等分する左手のリズム」でしたが、27小節目では、「1小節を3等分する左手のリズム」になっています。それにより、「バスの位置」がずれることで両手共にフレージングが変わり、リズムの感じ方が「切迫」します。ここでは、cresc. と accel. がかかっているので、これら2つの表現が「切迫」をサポートしているのです。

したがって、28小節目という一つの頂点へ向かって、ノンストップで弾き進めるべきだと分かります。

 

‣ Op.10-12 革命

 

この作品については以下の記事で解説していますので、参考にしてください。「‣ 14. 弱音高速パッセージの磨き方」で解説しています。

【ピアノ】速いパッセージを極める:演奏テクニックと効果的な練習方法

 

‣ Op.25-1 エオリアンハープ

 

この作品については以下の記事で解説していますので、参考にしてください。「· 楽譜の重要性」で解説しています。

【ピアノ】音楽の正常化計画:より自然な演奏表現へ

 

‣ Op.25-2

 

譜例(PD楽曲、Finaleで作成、曲頭)

ショパン エチュード Op.25-2 1-4小節 小節のつなぎ目と左手の多声処理を示す譜例

ブルーで示したところは「小節のつなぎ目」ですが、こういったところで音楽が途切れてしまいがちです。指がしっかり乗っかりきっている打鍵を心がけて音楽を続けましょう。

左手は、「バスの音」を少し深めに演奏し、それ以外の音との「差」をつけることで立体的になります。左手だけで「多声的」な音型になっています。

左手の丸印をつけた音は目立たないように。これらの音をたどると、「So-La-Si-La」というラインになっています。どれか一つの音だけ大きく飛び出てしまわないように注意しましょう。

 

‣ Op.25-7

 

譜例(PD楽曲、Finaleで作成、曲頭)

ショパン エチュード Op.25-7 1-3小節 小音符によるフレーズ接続を示す譜例

・丸印で示した小音符E音は先行フレーズの終結音
・直後のオクターブ上のE音は後続フレーズの開始音

ショパンはこのように、小音符を2つのフレーズの接続として使用するやり方を、他の作品でも時々用いました。音楽にちょっとしたうねりが生まれる書法です。

 

演奏で注意すべき点としては、丸印で示した小音符E音の音色を、そこまでの先行フレーズの音色と揃えることです。

うっかりすると、矢印で示したように小音符E音を次のフレーズの音として考えがち。このようにフレーズも音色も別のものにしてしまうと、3/4拍子に切り替わるところで音楽が分断されて、とってつけたように聴こえてしまいます。

 

► ポロネーズ

‣ 第1番 嬰ハ短調 Op.26-1

 

この作品については以下の記事で解説していますので、参考にしてください。「‣ 5. 「歌う」こととダイナミクスの関係」で解説しています。

【ピアノ】演奏におけるアゴーギク:音楽表現を深める重要ポイント集

 

‣ 第3番 イ長調 Op.40-1 軍隊

 

「鎖のつなぎ目」とでも言えるような、「フレーズ終わり」であり「フレーズ始まり」でもある音は、あらゆる作品で見られます。16小節1拍目表は、これに該当します。

 

譜例(PD作品、Finaleで作成、15-16小節)

ショパン ポロネーズ 第3番 イ長調 Op.40-1 軍隊 15-16小節 フレーズのつなぎ目を示す譜例

ここで注意しないといけないのは、楽曲分析の場合は「どちらとも解釈可能」という分析でいいのですが、演奏の場合はどちらにするか決めなくてはいけないということです。

ここでは、フレーズの終わりの音として飛び出ないようにフレーズをおさめるやり方をしている演奏が多い印象です。

 

16小節目は全体的に音楽が縦割りになりがちなので、手の運用として跳ねないようにし、横に長いフレーズを意識して演奏しましょう。

 

‣ 第6番 変イ長調 Op.53 英雄

 

この作品については以下の記事で解説していますので、参考にしてください。「‣ 30. あらゆるペダリングの可能性を軽視しない」で解説しています。

【ピアノ】ダンパーペダル 完全ガイド:音楽表現を豊かにする実践的ヒント集

 

‣ 第7番 変イ長調 Op.61 幻想

 

この作品については以下の記事で解説していますので、参考にしてください。『‣ 例2:ショパン「ポロネーズ 第7番 変イ長調 Op.61 幻想」』で解説しています。

【ピアノ】楽曲分析の本質と実践法:より深い表現への道筋

 

► マズルカ

‣ 変ロ長調 Op.7-1

 

譜例(PD作品、Sibeliusで作成、4-8小節)

ショパン マズルカ 変ロ長調 Op.7-1 4-8小節 倚音の解決と装飾音符の役割を示す譜例

丸印で示した6小節目のE音は、非和声音の「倚音(いおん)」です。したがって、以下の2点を留意して演奏するといいでしょう:

・2分音符一杯、非和声音としての緊張感を保ち続ける意識を持つ
・次のF音に解決して緊張感が解放されることを意識する

この非和声音E音から解決するF音までが一つのまとまりで、7小節目のメロディA音から新しいフレーズが始まります。

 

また、譜例に見られる装飾音符はただの飾りではありません。以下のような役割を持っています:

・5小節目の装飾音Es音は、直前の2分音符D音を解決させる音
・6小節目の装飾音B音は、直前の2分音符A音を解決させる音

 

► ワルツ

‣ 第2番 変イ短調 Op.34-1 華麗なる円舞曲

 

この作品については以下の記事で解説していますので、参考にしてください。「‣ 基本的な解釈方法」で解説しています。

【ピアノ】クレッシェンドの記譜法の違いから読み解く作曲家の意図

 

‣ 第6番 変ニ長調 Op.64-1 小犬

 

この作品については以下の記事で解説していますので、参考にしてください。「‣ 26. テンポが速いからこその注意点:小犬のワルツを例に」で解説しています。

【ピアノ】演奏におけるテンポの選び方とその表現方法

 

‣ 第7番 嬰ハ短調 Op.64-2

 

よく気になるのは、半音階を見た瞬間に機械的な弾き方になってしまう演奏が散見されることです。半音階は練習曲によく出てくるので、それが原因なのでしょうか。「メロディに出てくる半音階」には特に注意が必要です。

 

譜例(PD楽曲、Finaleで作成、13-16小節)

ショパン ワルツ 第7番 嬰ハ短調 Op.64-2 13-16小節 下行半音階のカンタービレを示す譜例

メロディに「下行型の半音階」が使われている例です。

同曲で、メロディに「上行型の半音階」が使われている例も見てみましょう。

 

譜例(46-48小節)

ショパン ワルツ 第7番 嬰ハ短調 Op.64-2 46-48小節 上行半音階のカンタービレを示す譜例

これらのメロディに出てくる半音階は決して機械的に演奏されるべきものではなく、美しいウタを含んだカンタービレによる半音階です。「ゴリゴリゴリゴリ」と弾くのではなく、ダイナミクスの松葉を参考に音楽の方向性を見定めて消え入るようにしましょう。

半音階というのは決してメカニックの指向性が強い表現ばかりではありません。

 

‣ 第10番 ロ短調 Op.69-2

 

この作品については以下の記事で解説していますので、参考にしてください。「‣ 36. アクセント記号を見たら考えるべきこと」で解説しています。

【ピアノ】ダイナミクスの理解と表現技法:完全ガイド

 

► ノクターン

‣ 第1番 変ロ短調 Op.9-1

 

この作品については以下の記事で解説していますので、参考にしてください。「‣ 5. スタッカートとペダルの同時指示」で解説しています。

【ピアノ】スタッカートを理解する:奏法、テクニック、音楽的解釈の深堀り

 

‣ 第2番 変ホ長調 Op.9-2

 

この楽曲のリズム面で注意すべきなのは、以下の3点です:

・装飾音の長さ
・曖昧な音価の連符
・バリエーションによる音価の変化

 

【装飾音の長さ】

右手に度々出てくる装飾音は「短く軽く」演奏しましょう。なぜかというと、右手に16分音符が多く出てくるので、装飾音を長く演奏してしまうと16分音符と区別がつかなくなってしまうからです。

 

【曖昧な音価の連符】

この楽曲では右手に「4連符(18小節目)」および「8連符(29小節目)」が出てきます。これは、ピッタリ4連符や8連符を入れて欲しい意図というよりは、歌っているような一種の「曖昧な表現」が求められていると解釈できるでしょう。

 

【バリエーションによる音価の変化】

最初の4小節は、非常にシンプルなリズムでのメロディメイクになっていますが、バリエーションになると「32分音符」や「付点16分音符」、さらには「連符」まで出てきます。

これが、意味しているのは「即興性」。特に「16小節目」や「24小節目」のパッセージは非常に即興性が強く、それが高まっていった結果、最後の「カデンツァ」という即興的なフレーズが出てくるという音楽構成になっています。

つまり、しっかり歌いながらも全体的に軽さを持って演奏していくのが、曲の特徴をとらえた演奏と言えます。

 

‣ 第7番 嬰ハ短調 Op.27-1

 

この作品については以下の記事で解説していますので、参考にしてください。「‣ 24. 効率良い譜読みは、グルーピングの発見に限る」で解説しています。

【ピアノ】譜読み力を劇的に向上させるための完全ガイド:基礎から応用まで

 

‣ 第8番 変ニ長調 Op.27-2

 

この作品については以下の記事で解説していますので、参考にしてください。「‣ 際立たせるべきでないことが明らかな例①」で解説しています。

【ピアノ】その和音のトップノートは本当に際立たせるべきなのか?

 

‣ 第20番 嬰ハ短調 レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ(遺作)

 

譜例(PD作品、Sibeliusで作成、14-16小節

ショパン ノクターン 第20番 嬰ハ短調 遺作 14-16小節 3つのCis音の表現的差別化と音価による加速を示す譜例

【3つのCis音の表現的差別化】

カラー音符で示したように、メロディでは14小節3拍目からCis音が3連続演奏されます。これらを同じように並べてしまうのではなく:

・レッド音符のCis音:前からのフレーズの終わりなので静かに柔らかく
・ブルー音符のCis音:次の小節へ向かう準備音として、レッド音符よりは深く
・グリーン音符のCis音:con forza とともに最も高いCis音であることを示す強めの表現

段階的に:レッド<ブルー<グリーン

 

【音価による accel. を見抜く】

この箇所では、「8分音符による3連符」→「16分音符」→「16分音符による3連符」といったように、テンポ自体は変わっていなくても、音価の変化によって accel. しているように聴こえます。

このような表現を見つけ出すことがポイントです。例えば、「音価で accel. しているから、次の小節へ入るときには変な間(ま)を空けないほうが音楽的」などと、音楽解釈の参考になるからです。

 

► プレリュード

‣ 第4番 ホ短調 Op.28-4

 

譜例(PD楽曲、Finaleで作成、13-20小節の右手)

ショパン プレリュード 第4番 ホ短調 Op.28-4 13-20小節 メロディラインの動きを分析した譜例

メロディの動きに沿ってマーカーを引いてみると、音符だけで見るよりも動きがはっきり読み取れます。そうすることで、同じダイナミクスの領域の中でも変化をつける手がかりになります。

これは、シェーンベルクが書籍の中でおこなっていた分析方法をピアノ演奏に応用したものです。

 

・作曲の基礎技法  著:シェーンベルク / 音楽之友社

 

 

 

 

 

‣ 第7番 イ長調 Op.28-7

 

この作品については以下の記事で解説していますので、参考にしてください。

【ピアノ】ショパン初心者のための第一歩:前奏曲集 第7番 完全解説

 

‣ 第15番 変ニ長調 Op.28-15 雨だれの前奏曲

 

この作品については以下の記事で解説していますので、参考にしてください。「‣ 15. 同音連打における手首と親指の協調」で解説しています。

【ピアノ】同音連打の基礎と応用

 

► 即興曲

‣ 第4番 嬰ハ短調 遺作 Op.66 幻想即興曲

 

この作品については以下の記事で解説していますので、参考にしてください。『‣ 20. フレーズ終わりの「付加」はさりげなく』で解説しています。

【ピアノ】演奏におけるフレージングの深い理解と実践テクニック

 

► バラード

‣ 第1番 ト短調 Op.23

 

この作品については以下の記事で解説していますので、参考にしてください。「‣ 24. 音数の多い和音伴奏をモノにする方法」で解説しています。

【ピアノ】和音演奏を習得する25の実践的アプローチ

 

‣ 第2番 ヘ長調 Op.38

 

この作品については以下の記事で解説していますので、参考にしてください。「‣ 5. ショパンのペダリング解釈:音の微妙な現れと音楽的グラデーション」で解説しています。

【ピアノ】作曲家自身によるペダリング指示を読み解く

 

‣ 第3番 変イ長調 Op.47

 

譜例(PD楽曲、Finaleで作成、33-36小節)

ショパン バラード 第3番 変イ長調 Op.47 33-36小節 右手パッセージと左手メロディの処理を示す譜例

右手は、点線スラーで示した3音のカタマリごとに少し手首を使うと演奏しやすくなります。使い過ぎるとバタバタしてしまうので、一番しっくりくる度合いを探ってみてください。

 

左手の丸印をつけた音は「メロディ」なので、埋もれてしまわないように。右手のパッセージを柔らかく演奏することで相対的に左手を際立たせることも重要です。

 

譜例で「slow→fast→slow」と書いた箇所は、「ゆっくりから始まり、少しまいていき、またゆっくりにする」ようにまとめると音楽的です。ただし、やり過ぎると不自然ですし、譜例に書き込んだslowやfastの文字の位置はあくまで目安なので、耳で判断しながら調整してください。

 

‣ 第4番 ヘ短調 Op.52

 

この作品については以下の記事で解説していますので、参考にしてください。「‣ 12. クライマックスにおけるテヌート」で解説しています。

【ピアノ】演奏におけるアゴーギク:音楽表現を深める重要ポイント集

 

► スケルツォ

‣ 第1番 ロ短調 Op.20

 

この作品については以下の記事で解説していますので、参考にしてください。「‣ 64. 松葉の後ろにある音楽表現を読み取る」で解説しています。

【ピアノ】ダイナミクスの理解と表現技法:完全ガイド

 

‣ 第2番 変ロ短調 Op.31

 

この作品については以下の記事で解説していますので、参考にしてください。「‣ 10. 歌うべきところが分かりにくいメロディの歌い方」で解説しています。

【ピアノ】ソロ楽曲における伴奏部分の表現技術と楽曲理解

 

‣ 第3番 嬰ハ短調 Op.39

 

譜例(PD楽曲、Finaleで作成、52-56小節)

ショパン スケルツォ 第3番 嬰ハ短調 Op.39 52-56小節 模倣と対比表現を示す譜例

ブルーで示したメロディを、レッドで示した箇所で「模倣」しています。

メロディのカギマークで示した箇所はE音を連打しますが、同じ音質で並べないようにしましょう。54小節目のE音のほうにより重みが入ります。「強拍」にあり、なおかつ「長い音価」だからです。

譜例の「丸印をつけた休符」は重要です。というのも、57小節目からは「スタッカート混じりのフレーズ」になり雰囲気が変わるので、休符をしっかりとることで「対比表現」が強調されるからです。

 

‣ 第4番 ホ長調 Op.54

 

譜例(PD楽曲、Finaleで作成、69-72小節)

ショパン スケルツォ 第4番 ホ長調 Op.54 69-72小節 4音反復パターンと左手メロディを示す譜例

ここでの右手のパッセージは、成り立ちさえ分かってしまえば怖くありません。カギマークで示したように、「Re-Do-La-Mi」という4音が音域を変えながら繰り返されているだけです。

4音ずつにアクセントはつけず、全体を「1本の線」のように一息で演奏しましょう。ノンストップで72小節目へ入ると音楽的です。こういったパッセージでは、指をベタッとせずに「角度」をつけて演奏すると効率よく打鍵できます。

 

左手のブルーで示したところはカンタービレで。このメロディは後ほども展開されて出てくる重要な素材です。

 

► ソナタ

‣ 第2番 変ロ短調 Op.35

· 第3楽章 葬送行進曲

 

譜例(PD楽曲、Finaleで作成、37-38小節)

ショパン ソナタ 第2番 変ロ短調 Op.35 第3楽章 葬送行進曲 37-38小節 装飾音の効果を示す譜例

丸印で示したB音の前で様々な装飾がされていますが、仮に、8分音符装飾音として書かれている直前のC音を省略して弾いてみてください。

たった一音を省いただけで、丸印で示したB音の意味が全く変わってしまうと思いませんか。装飾音C音の効果で、B音の訴えかけが強化されるのです。

一般的には、装飾音が入ることで長く続くトリルによる持続効果」や「旋律を飾る効果」など、あらゆることを表現できます。一方、上記のような感覚に訴えかけてくる効果についても感じ取るようにしましょう。

 

「その装飾音があることで生まれる感覚的表現を感じ取る」のが、譜読みで読み取るべき隠れた課題となります。

 

‣ 第3番 ロ短調 Op.58

· 第1楽章

 

この作品については以下の記事で解説していますので、参考にしてください。「‣ 7. ワンフレーズメロディにある2つの頂点」で解説しています。

【ピアノ】ダイナミクスの理解と表現技法:完全ガイド

 

· 第4楽章

 

譜例(PD作品、Sibeliusで作成、9-11小節 100-102小節 207-209小節)

ショパン ソナタ 第3番 ロ短調 Op.58 第4楽章 左手伴奏の音価変化を示す譜例

この楽章の構造的特徴は、基本テンポを保ちながら左手伴奏の音価が段階的に細分化されることにあります。そこがこの楽曲の美しさと言っていいでしょう。

 

楽曲進行における伴奏の音価の変化:

・9小節目〜:8分音符の伴奏
・100小節目〜:8分音符の4連符による伴奏
・207小節目〜:16分音符の伴奏

この構造により、テンポ自体は変わらずとも音楽に推進力と緊張感が生まれます。

 

演奏上の注意点

左手の音価が細かくなっても、基本テンポは一定に保つことが重要です。音価の細分化に引きずられてテンポが遅くなってしまうと、作曲家が意図した構造的効果が損なわれてしまいます。音価の変化による自然な推進力を活かし、楽曲全体の大きな流れを意識した演奏を心がけましょう。

 

► 終わりに

 

ショパンの作品には、独特の音楽語法と表現技法が詰まっています。

本記事では、実践的な演奏アプローチを紹介していますが、これらはあくまでも一つの解釈として捉えていただければと思います。

今後も新しい作品や演奏のヒントを追加していく予定ですので、定期的にご確認いただければ幸いです。

 


 

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