【ピアノ】演奏における呼吸法:フォルテを美しく響かせるブレステクニック
► はじめに
ピアノ演奏において、「呼吸」という基本的な要素が音楽表現に大きな影響を与えています。
指揮者から学んだ経験を基に、ピアノ演奏における呼吸の重要性と、それを活かした演奏テクニックについて解説していきます。
► 良い音を生み出すブレスのポイント
‣ 1. 指揮者から教わった、良い音を出す秘訣
以前に2年間、 指揮者の先生のもとで指揮の個人レッスンを受けていました。その時に習った「アンサンブルで良い音を出してもらう秘訣」は ピアノで良い音を出すためにも活かせることでした。
結論から言うと、「演奏者に良い呼吸をさせること」です。
同じオーケストラでも、指揮者によって音楽が変わるという実感がありますね。
それは、「指揮者が適切な解釈を並べて音楽が変わる」ということもありますが、指揮者の役割としては「指揮者が演奏家にいかにいい呼吸をさせたか」ということの方がより重要とのことでした。そうすると良質な音が出るので、気持ち良い音楽になります。
「そのためにどういうテクニックを使うか」を指揮法で学ぶわけです。
ピアノ演奏においても、「フォルテなどで大きな音を出す場合、その直前の拍でタイミングよくブレスをすると豊かなフォルテの音を出せる」といったことをはじめとし、呼吸の重要性はあげればキリがありません。これについては次項目で解説します。
もし難しいことが分からなくても、演奏中に呼吸を止めないことだけは意識して欲しい思います。
どんなことでも改善するための第一歩は「意識すること」です。
呼吸を止めるのがクセになってしまっている方は、「タイマーをセットして、それが鳴った時に呼吸が止まっていないかチェックする」などといったように、”不意打ち” でチェックするのを定期的に行うと良いでしょう。
呼吸を止めてしまうクセがある方は:
・演奏中に顔に力を入れてしまっている
・首が前に出ている状態で演奏する習慣がついてしまっている
こういったケースが多いように感じます。
‣ 2. 拍の頭で重厚なフォルテの音を出す方法
重厚なフォルテを出すヒントは、力の強さというよりは、タイミング。タイミングが合うと良いフォルテの音を出すことができます。合わないと、動作ばかり大きく音は響かないという結果に。
では、そのタイミングを合わせるためにはどうすればいいのでしょうか。ポイントはやはり「呼吸」です。
プロコフィエフ「ピアノソナタ第1番 ヘ短調 Op.1」
譜例(PD作品、Finaleで作成、94-96小節)
譜例に書き込んだ「すって」のところで、文字通りすう。「はく」のところで、はく。
慣れるまでは呼吸の音が聴こえるくらい大げさにやってみて、タイミングをつかむ感覚を身体へ入れましょう。
この感覚が身につくと、フォルテの時に適切な力を適切なタイミングで使えるようになり、重厚な良い音のフォルテを出すことができます。
特に、拍の頭でフォルテの音を出したい時に試してみてください。
取り組んでいる楽曲の拍子やテンポを考慮したうえで、どれくらいの拍の長さを使って「すう」のかを決定しましょう。何パターンか試してみて、一番タイミングがつかみやすいところを選べばOKです。
‣ 3. ブレスは「口」と「鼻」どちらでするべきか
ブレスを「口」でするか「鼻」でするかということについては、演奏する楽器の種類や同じ楽器の中でも演奏家によって意見が分かれるところ。
声楽や管楽器などの発音自体に息を必要とする楽器とは異なり、ピアノ演奏では発音それ自体に息を使うわけではありません。したがって、基本的には ”鼻” でブレスするのが良いと感じています。
また、ピアノ演奏では主に横顔を見られるので、口呼吸だと見た目が良くないという理由も大きくあります。
一方、鼻でブレスをする時に一つ気をつけるべきことがあります。
「大きな音を出す前のブレス」について。
前項目で解説したようなブレスで「鼻をすするような爆音」を出してしまう方がいるのです。ブレス自体は必要ですが、フォルテの前だからといって “思いっきり” ブレスする必要はありません。
一般的に、思いっきり息を吸い込む場合は「口」でするよりも「鼻」でする場合の方が大きな音が出てしまいます。
► 終わりに
呼吸を意識することで音楽がより自然に表現されます。
まずは日々の練習で呼吸を止めないことを意識し、少しずつフレージングに合わせた呼吸法を取り入れていってください。
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