【ピアノ】ブルグミュラー作品の演奏ポイント解説集:譜例付き実践ガイド
► はじめに
本記事では、ブルグミュラーのピアノ作品における実践的な演奏アドバイスをまとめています。各曲の重要なポイントを、譜例とともに具体的に解説していきます。
この記事は随時更新され、新しい作品や演奏のヒントが追加されていく予定です。
► ブルグミュラー 25の練習曲 Op.100
‣ 1. 素直な心
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、曲頭)
× よくある間違い
・1音1音を独立して演奏
・各音に同じような重みをつける
・音を縦に刻むように演奏
○ 改善方法
・フレーズを「一息」で捉える
・「ピ・ア・ノ」ではなく「piano」というイメージで
・音楽を横に引っ張るように意識する
実践ポイント:
まずは4小節単位で一つの大きな流れを作ることを意識してみましょう。その際、次の音を予測しながら演奏することで、自然な流れが生まれます。
左側の譜例のように全てのメロディ音に拍を入れてしまう弾き方では、全てが縦割りになってしまって音楽は流れません。
右側の譜例のように、音楽をグーっと横に引っ張っていく意識を持って、ワンフレーズを一息で弾いてみましょう。
‣ 2. アラベスク
譜例(PD作品、Finaleで作成、曲頭)
この楽曲を、とにかく猛スピードで遊びのように弾くのを耳にすることが多いのですが、決してそういう音楽ではありません。
2/4拍子の1・2のうち、2もしっかりと感じて弾いてください。2が適当になってしまうと、音楽が転んでしまいます。
速弾き大会ではないので、良くないクセがつくような弾き方はやめておきましょう。
‣ 3. 牧歌
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、曲頭)
こういった音型では
ただパタパタと真上から打鍵するのではなく、
「手の平で砂を横へかき分けるときの手の使い方」
の動きの中で打鍵すると
びっくりするくらいまろやかな音色のレガートが得られます。
右手の場合、
◉ 音型が鍵盤の左方向へ向かうところは手が少し右側に傾く(手の甲が右側へ向く)イメージ
まさに「砂かき分け奏法」。
指はできる限り鍵盤へつけたまま演奏します。
この奏法では、
はじめのうちは音が転んでしまったりするかもしれませんが、
習得できれば
「レガート」「音色」の面で
大きな向上を期待できます。
‣ 7. 清らかな小川
譜例(PD作品、Finaleで作成、曲頭)
「声部分けされている音は、どこまで指で残せばいいのか」について解説します。
「右手の下声の音」の音は4分音符になっていますね。
初心者の方は良い意味で真面目に考え込んでしまって、「4分音符なのだから、4分音符いっぱい指で残さないといけない」と思い込んでしまっている方が多いようです。
しかし、それではほとんどの楽曲は演奏できません。「親指を連続して使用する場合」や「同音連打をする場合」は、わずかでも切らないと再度打鍵できないからです。
「声部分け」というのは、あくまでも「声部を分かりやすく示すためのもの」です。「指で残す長さ」は別の話だと理解しておきましょう。
(再掲)
もちろん、なるべく保持することは大事です。
譜例であれば、右手の親指で演奏する下声の音は8割程度保持し、次の打鍵の準備に移ればOK。「8割」という言葉も厳密に考え過ぎないでください。
本当に4分音符になるくらいギリギリまで残そうとすると、次の音への移り方がギクシャクしてしまい、美しい流れになりません。
ただ、一つ疑問が残りますね。「それでは音が切れてしまうけれどいいのか」という疑問。
そういった部分をダンパーペダルで補佐して音楽を仕上げていくのです。この考え方は上級になってからもずっとつきまといます。
・指だけで何とかしようと悩むのではなく
・ペダルに頼り切るのでもなく
・指でできる限りのことをしたら、後はペダルで補佐する
これで乗り切れる場面は山ほどあります。
‣ 15. バラード
ブルグミュラー「バラード」の曲頭では、左手で高速メロディを演奏して右手が和音伴奏します。ここがうまく弾けないという悩みをよく耳にします。
譜例1(PD作品、Finaleで作成、3-5小節)
以下の3ステップを踏むと上達が見込めます:
① 左手音型の理解と練習
② 右手の音を間引いた、両手練習
③ 楽譜通りの両手練習
【① 左手音型の理解と練習】
まず、メロディである左手のパッセージについて学習しましょう。
このパッセージは、分解してみると譜例2のようになっています。
(譜例2)
丸印で示したC音がつなぎ目と考えると、「トリルとスケールがあわさったパッセージ」になっていることが分かります。
そこでまずは譜例3の練習を行い、相当の速さでこなせるようにしてから先へ進んでください。
(譜例3)
運指は実際に原型弾くときに使う番号を使わないと、この練習をする意味がありません。譜例に書かれている運指を守ったうえでさらってください。
ここまでクオリティ高く出来てから先へ進みます。
(譜例4)
パッセージの頂点にくるC音に着目すると、譜例4で示したように「1・2・ウン 1・2・ウン」というリズムが内包されています。
演奏する時に、ただ単にカタマリでガガガガガと弾くのではなく、拍を感じながらこれらの1・2を少し意識すると、音楽の特徴が出ますし、演奏もしやすくなります。
ちなみに、この「1・2・ウン」の要素は、19-23小節などにも出てくるリズムです(譜例5)。
(譜例5、19-23小節)
(譜例1の再掲)
ここまでで左手のパッセージは、かなりピカピカになったことと思います。しかし、両手で合わせてみるとまだ上手く弾けないはず。
両手で演奏することで頭が混乱するからです。それを解決するための練習が、次の項目。
【② 右手の音を間引いた、両手練習】
ここからは両手練習へ入ります。
いきなり楽譜通りに弾くのではなく、譜例6 a〜fのように右手の音を間引いて練習しましょう。
(譜例6-a)
(譜例6-b)
(譜例6-c)
(譜例6-d)
(譜例6-e)
(譜例6-f)
a〜fの6パターン全てを練習して、それぞれ、理想のテンポで弾けるところまでさらいましょう。
この練習ではわざと頭を混乱させることになるので、あらゆるパターンでそれに慣れることが有効な練習となるのです。
両手をそろえた状態で速く弾けない原因は、必ずしも「指の強さ」にあるわけではなく、「頭が混乱せずにきちんと働くかどうか」という部分にもあるということを理解してください。
【③ 楽譜通りの両手練習】
いよいよ、楽譜通りの両手練習を進めます。
「ゆっくり練習(拡大練習)」をするのは当然のことですが、加えて、譜例7のように「1小節ずつ速く弾く練習」をしてみましょう。
(譜例7)
ポイントは、「次の小節の頭の音まで弾く」ということ。そうすることでつなげて弾くときにも音楽が流れてくれます。
これで理想のテンポヘ。その後、一度に弾く長さを2小節へ増やします。
右手に意識を持っていくよりは、意識の比重を左手においた方が、タイミングがバラバラにならずに弾けるはず。
残るは、全体のバランス。
右手の伴奏がうるさくならないように気をつけながら仕上げていきましょう。
ここまでのステップを、必要に応じて戻ったりもしながら繰り返し練習してください。少なくとも、本記事を読む前よりは向上が見られるはずです。
似たようなテクニックはあらゆる楽曲に出てくるので、その都度、本項目の内容を思い出して練習方法を応用してください。
► 終わりに
ブルグミュラーの作品には、独特の音楽語法と表現技法が詰まっています。
本記事では、実践的な演奏アプローチを紹介していますが、これらはあくまでも一つの解釈として捉えていただければと思います。
今後も新しい作品や演奏のヒントを追加していく予定ですので、定期的にご確認いただければ幸いです。
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