【ピアノ】インヴェンション入門! 第13番「全運指」公開
► はじめに
本記事では、J.S.バッハのインヴェンションに初めて取り組む方のために「第13番 BWV784」を「全運指」付きで解説しています。初心者でも無理なく習得できるよう、具体的な演奏のヒントも説明します。
► インヴェンション入門に最適の楽曲
インヴェンションの中でも、第1番、第4番、第8番、第13番が入門用として多く用いられています。第13番が入門に適している理由として、以下が挙げられるでしょう:
親しみやすい調性
イ短調で書かれており、初心者にも馴染みやすい調性です。
認知度の高さ
ドラマなどでも聴かれる楽曲のため、イメージがつかみやすく、参考音源も豊富です。
技術的な取り組みやすさ
テンポは中庸で、「装飾音記号が出てこない」等、技術的に簡潔で弾きやすい構造になっています。
演奏による対位法学習に最適
対位法の技法が明確で、難所も比較的少なく、演奏による二声対位法の入門に理想的です。
►「全運指」の解説
この楽曲はパブリックドメインです。運営者が浄書ソフトウェアで作成した楽譜を使用しています。
運指について重要な注意点
この運指は一例です。手の大きさや個人差に合わせて調整してください。また、どのようなアーティキュレーションを付けるのかによっても適切な運指は変わります。お手持ちの楽譜の内容と照らし合わせながら、必要に応じて参考にしてください。
最終小節の運指バリエーション
譜例(曲尾)
左側の譜例において、丸印で示した3の指で取る部分が弾きにくいと感じる方もいるかもしれません。その場合は、代案として、右側の譜例で示したように、最終音を左手で弾いてしまうのも一案です。
► 具体的な練習のヒント
‣ 適切なテンポ設定
おすすめテンポ:
♩= 69
(ヘルマン・ケラー提案)
なぜ、このテンポが良いのか:
・初〜中級者でも無理のない速度設定
・作品の持つクラヴィコード的な素朴さを十分に表現可能
‣ 片手ずつ完璧にしてから両手で合わせる
対位法で書かれた楽曲では、各声部が独立した「線」として構成されています。通常の「メロディと伴奏」という構造とは異なるため、まず各パートを個別に練習することが重要です。
片手での練習が十分できてから、全体のバランスを整えていきましょう。
‣ 本楽曲でよくある問題点と対策
14-17小節の各4拍目における受け渡しが不自然:
・両手の受け渡しで、特に親指で弾く音が飛び出ないように意識
・右手の親指で弾く音(各4拍目頭)の音価が長くならないように意識
最後の3小節でテンポが速くなってしまう:
・メトロノームを使った練習を行ない、それまでの部分とのテンポの差が出ないように意識
8分音符の切り方が極端過ぎる:
・J.S.バッハの作品における8分音符は、当時の楽器の特性を考慮して切って演奏することが慣例
・ただし、切り過ぎず「テヌートスタッカート(やや保持する感覚)」で演奏
► 終わりに
運指をきちんと決めて、毎回その番号で練習することが重要です。そうすることで:
・使う運指が統一されるので、譜読みが捗り、練習が積み重なる
・記憶に定着して、暗譜対策にもなる
J.S.バッハの名曲に挑戦する喜びを感じながら、じっくりと取り組んでみてください。
この作品についてさらなる演奏ヒントが必要な方は、以下の解釈版を参考にしてください。
【ピアノ】園田高弘 校訂版 J.S.バッハ インヴェンション:独学学習者のための決定版
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