【30秒で分かる】初心者でもできる楽曲分析方法① ~メロディラインの起伏を視覚化する~
► はじめに
楽譜を見ると、音符の羅列に圧倒されてしまうことはありませんか?
本記事では、楽曲の全体像を把握するための、シンプルかつ効果的な方法をご紹介します。
マーカー1本で始められる、初心者の方でも実践できる分析方法です。
► 対象者など
必要な準備物
・書き込み可能な楽譜
・マーカーか色鉛筆
・1日30-60分の練習時間
► 習得できるスキル
この方法で身につく能力
・メロディラインの起伏を視覚的に理解する力
・楽曲の山と谷を見つける力
・自然な強弱をつける感覚
・楽曲全体の流れを把握する力
► 具体的な分析方法
実例で解説
シューマン「ユーゲントアルバム(子どものためのアルバム)Op.68-1 メロディー」を例に説明します。
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、1-8小節)
基本の手順
1. メロディラインを見つける
2. 音の上がり下がりを観察する
3. マーカーで色付けする
► 演奏への活かし方
このように、メロディの動きに沿ってマーカーを引いてみると、
音符だけで見るよりも、エネルギーの動きがよりはっきり読み取れますね。
例えば、以下のようなものです:
・1-2小節というカタマリに対して、より大きなエネルギーで3-4小節が歌われる
・①、②、③というように、段階的に音域が上がって歌われる
・譜例の部分の頂点は、③の部分になる
・順次進行(2度上か下へ進むこと)が中心だが、スラーの切れ目ごとに大きな跳躍が含まれる
具体的には、以下のように表現を付けます:
・1-2小節よりも、3-4小節を少し大きめに
・音型の上行では少し膨らませて、下行ではおさめていく
・①よりも②、②よりも③というように、段階的に大きくしていく
このときに注意すべきなのは、
作曲家がクレッシェンド(徐々に大きく)やデクレッシェンド(徐々に小さく)を書いていなくても、
メロディの要求するエネルギーによって、上記のような多少のニュアンスはつけるべきということ。
それをしないと、真っ平な無表情の音楽になってしまいますので。
分析結果を演奏に活かすコツ:
音の高低と強弱の関係
・上行形→少しずつ大きく
・下行形→自然に小さく
・高いポイント→表現の頂点に
具体例(譜例の場合)
・1-2小節:p の強さで
・3-4小節:やや大きめに
・5-6小節:①より②をやや大きめに
・7-8小節:7小節目の頭でクライマックスをつくり、以降は自然におさめる
► 実践課題とチェックポイント
(再掲)
Step 1: 色付け
・メロディラインに沿って色を塗る
Step 2: 山と谷を見つける
・最も高い音を見つける
・曲の一番の山(クライマックス)を確認
・谷になる部分をチェック
Step 3: 強弱をつける
・自然な強弱の変化を想像する、もしくは書き込む
・強弱記号がない部分も工夫する
Step 2の着眼点の例
譜例は、1-8小節のみしか掲載していませんが、
楽曲全体としてのクライマックスは、7小節目の頭(および、繰り返しの15小節目の頭)となります。
全体的には順次進行が中心ですが、スラーの切れ目ごとに大きな跳躍が含まれていますし、
2小節1-2拍や8小節1-2拍のように、ジグザグした音型が用いられていることにも注目しましょう。
► 困ったときは
よくある質問と解決方法
Q1: 色付けしたけど特徴が見つからない
・楽譜から1m以上離れて全体を見る
・クライマックスだけでも見つけてみる
Q2: 強弱の付け方が分からない
・まずはクライマックスの表現から取り組む
・録音して客観的に聴いてみる
・音源や先生の演奏を参考にする
► 次回予告
次回は「偽終止の見つけ方と分析への活かし方」について解説します。
具体的な内容:
・偽終止とは何か
・どこで使われているか
・分析でどう活かすか
【おすすめ参考文献】
楽曲分析をより深く学びたい方へ:
・大人のための独学用Kindleピアノ教室 【シューマン ユーゲントアルバム より メロディー】徹底分析
・「楽式論」 著:石桁真礼生 音楽之友社
・「作曲の基礎技法」 著:シェーンベルク 音楽之友社
※「楽式論」「作曲の基礎技法」は、専門的な内容を含む中〜上級者向けの書籍です。
まずは本記事で紹介した基本的な方法から始めることをおすすめします。
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