【ピアノ】大人の独学ピアノ:鍵盤シールに頼らない上達法
► はじめに
「ドはどの鍵盤だっけ?」「楽譜の音と鍵盤を素早く結びつけられない…」
ピアノを始めたばかりの方なら、誰もが経験するこうした悩み。その解決策として、鍵盤シールという選択肢が目に入ってきます。
確かに、どの鍵盤がどの音なのかが一目で分かる便利なアイテムです。
子どもの入門者の場合は、頭でしっかりと考えて学習することがスムーズにいかないケースも多いので、シールを利用するのもアリでしょう。
しかし、特に大人の学習者の場合、この「便利さ」が思わぬ落とし穴になることをご存知でしょうか?
► 鍵盤シールが上達を遅らせる理由
経験豊富な指導者の間でよく言われることですが、「シールを使わなかった学習者の方が、総じて上達が速い」という興味深い傾向があります。
これには、以下のような理由が考えられます:
1. 視覚的な距離感の習得阻害
・演奏時に重要な「鍵盤を視覚的な距離で捉える力」が育ちにくくなる
・シールの文字を読むことに依存してしまい、鍵盤そのものへの理解が深まらない
2. 音の相対関係の理解の遅れ
・1オクターブの中の白鍵は7個だけで、これが繰り返されているだけの単純な構造
・シールに頼ることで、この基本的な構造や音程関係の理解が遅れがちになる
3. 実践的なスキル形成の妨げ
・演奏中、シールを読む余分な動作が入ることで、スムーズな運指の妨げになる
・楽譜を見ながらの演奏時、視線の移動が増えて効率が下がる
► 筆者のヴァイオリン経験から学んだこと
実は筆者自身、ヴァイオリン学習時に似たような経験をしています。
初心者用の指板シールを使って練習を始めましたが、最初のレッスンで先生から「これでいくら練習しても、自分で判断して演奏する力はつかない」と指摘され、全て剥がすことになりました。
その結果、それまでできていたことが突然できなくなり、大幅なやり直しを強いられました。この経験から学んだのは、補助具に頼った「見かけの上達」は、本当の意味での技術習得にはつながらないということです。
► 効果的な学習アプローチの提案
では、具体的にどのように進めていけばよいのでしょうか。以下の3つの方法を、おすすめ順にご紹介します:
‣ 1. クリーンスタート方式(最推奨)
シールを一切使用せず、最初から鍵盤そのものに慣れていく方法です。
メリット:
・最も早く本質的な鍵盤感覚が身につく
・余計な依存関係がない分、スムーズな上達が期待できる
コツ:
・まずはド・ミ・ソのような主要な音の位置を覚える
・黒鍵のパターン(2個組と3個組)を目印に位置を把握する
‣ 2. 基準音マーク方式(次点でおすすめ)
一時的に「ド」の音だけにシールを貼り、それを基準に他の音を把握していく方法です。
メリット:
・完全な手探りよりは取り組みやすい
・基準音があることで、相対的な音の位置関係を学びやすい
注意点:
・基準音の位置が分かってきたら、できるだけ早くシールを外す
・シールに依存しすぎないよう意識する
‣ 3. 段階的撤去方式
全ての音にシールを貼り、覚えた音から順次剥がしていく方法です。
メリット:
・最も取り組みやすい
・進捗が目に見える形で分かる
デメリット:
・シールへの依存度が高くなりがち
・剥がす時期の判断が難しい
► まとめ:大人だからこそできる効率的な学習を
大人の学習者には、子どもとは異なる強みがあります。
・理論的な理解力
・自己分析能力
・計画的な練習の実行力
これらの強みを活かし、シールという「見かけの便利さ」に頼らない本質的な学習を進めることで、より確実な上達が期待できます。
最初は少し大変に感じるかもしれません。しかし、基本的な鍵盤の構造を理解し、実践を重ねることで、必ず「見なくても分かる」段階に到達できます。
自身の学習スタイルや目標に合わせて、上記の方法から最適なものを選んでいただければと思います。
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