【ピアノ】「ピアノ音楽史事典」(千蔵八郎 著)レビュー
► はじめに
本記事で紹介する「ピアノ音楽史事典」は、ピアノ音楽の壮大な歴史を一冊に凝縮した、歴史解説と作曲家毎の作品解説が一冊になった貴重な資料です。著者の千蔵八郎氏は、ピアノ音楽関連の書籍などで非常によく知られています。
・出版社:春秋社
・初版:1996年
・ページ数:674ページ
・対象レベル:初級〜上級者
・ピアノ音楽史事典 著:千蔵八郎 春秋社
► 内容について
‣ 本書の特徴と構成
「ピアノ音楽史事典」は、総ページ数674ページという大ボリュームで、ピアノ音楽の歴史を体系的に学べる事典型の解説書です。注目すべきは以下の点です:
時代背景と個別作品の両方を網羅:
各章の冒頭には概説があり、その後に作曲家別の解説が続く構成
豊富な収録作品:
有名作品だけでなく、あまり知られていない作品も多数収録
実用的な情報:
資料が少ない連弾や2台ピアノ作品、ピアノ協奏曲についても詳しく解説
本書は序章から第9章まで、時代順に区分され、終章で現代のピアノ音楽についての考察で締めくくられています。各時代の音楽的背景、主要作曲家の生涯、そして代表的な作品解説という流れで構成されています。
‣ 広範な収録範囲
ピアノ音楽に特化した事典としての圧倒的な収録範囲の広さを持っています:
・バロック時代からモダンまで、約300年に及ぶピアノ音楽史を網羅
・パラディエス、チマローザ、ヘンゼルト、ゴットシャルクなど、ややマイナーな作曲家もピックアップ
・演奏会でよく取り上げられる作品はもちろん、レッスンで使用される教材的作品も収録
・チェルニーのエチュードのような、ピアノ教育上重要な作品も外さない
► 学習への役立て方、活用のヒント
本書は以下の点で非常に役立つでしょう:
レパートリー選びのガイド:
膨大なピアノ曲の中から、自分の好みに合った曲を探す際の参考になる
音楽的理解の深化:
曲の背景や時代様式を知るための取っ掛かりの資料になる
歴史的文脈の把握:
一曲だけを見るのではなく、ピアノ音楽の流れの中での位置づけを理解できる
未知の作品との出会い:
有名作品以外にも目を向けるきっかけになる
本書は辞書的に使うだけでなく、以下のような活用法もおすすめです:
・現在練習中の曲の作曲家について、まとまった知識を得る
・これから挑戦したい時代や様式の音楽について予習する
・コンサートやCDを聴く前に、その作品についての解説を読んでおく
・ピアノ音楽史を通読することで、音楽の発展の流れを俯瞰的に理解する
► 若干の制約
1996年の初版以降に世に出た最新の現代作品は収録されていない点は留意が必要です。また各曲の解説自体は数行程度と簡潔なものなので、特定の作品について深く知りたい場合は、別途専門的な解説書を参照する必要があるでしょう。
► 終わりに
「ピアノ音楽史事典」は、技術練習と並行して音楽的教養を深めたい方、レパートリーを広げたい方、演奏解釈に歴史的背景を取り入れたい方にとって、長く手元に置いて参照できる貴重な一冊となるでしょう。
教則本や楽譜と並んで、ピアノ学習者の書棚に加えるべき基本文献です。
・ピアノ音楽史事典 著:千蔵八郎 春秋社
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