【ピアノ】ジョージ・ウィンストン「柊とつた」完全ガイド:演奏法と楽譜の選び方
► はじめに
「柊とつた(The Holly and The Ivy / 柊と蔦 / ひいらぎとつた)」は、ピアニスト・作曲家のジョージ・ウィンストン(1949-2023)が1982年にリリースした名盤「December」に収録されている一曲です。このアルバムは発売以来、冬の定番アルバムとして世界中で愛され続けており、本作は「Variations on the Kanon by Johann Pachelbel(パッヘルベルのカノンによる変奏曲)」に次ぐ人気を誇る代表曲となっています。
本記事では、楽曲情報や演奏法から楽譜の買い方まで解説します。
► 原曲の由来
この曲の原曲は、イギリスに古くから伝わる伝統的なクリスマスキャロルです。日本では「讃美歌 第2編 第217番」としても知られており、イエス・キリストの降誕を祝う讃美歌として歌い継がれてきました。
ウィンストンは、この素朴で美しいメロディーに独自の解釈を加え、変奏曲風の編曲を施すことで、原曲が持つメロディラインを保ちながらも、より現代的なピアノ作品へと昇華させています。彼の編曲は、クラシカルな構造と即興性、そしてニューエイジ音楽特有の透明感が融合したスタイルを確立しています。
► 難易度と技術的要求
‣ 全体的な難易度
本作品の難易度は「ツェルニー30番中盤程度から挑戦可能」であり、全音ピアノピースの難易度区分では「C-D」相当に位置づけられると思ってください。
ただし、この難易度評価はあくまで技術的な側面に基づくものであり、ウィンストン特有の音楽性や即興的な表現力を再現するには、さらに深い音楽的理解が求められます。
‣ 演奏上の重要ポイント
記譜間違いかと感じる箇所を無視する
ゆっくりとしたテンポで弾いていると、「本当にこれで合っているのだろうか」と不安になる箇所が随所に現れます(A♭6になる20小節目など)。これは、即興的な感覚で演奏したものを後から採譜したからこそ起こっているのでしょう。
しかし、こういった箇所でテンポを乱したりせず、インテンポで自信を持って通り過ぎることが重要です。そうすることで、音の並びがむしろ独特の「味」として機能します。
左手の同音連打と拍子感覚の意識
曲頭から、左手には同音連打のパターンが頻繁に登場します。ここで注意すべきは、同音連打が大きく突出しないように心がけることです。
また、この曲は3拍子で書かれていますが、曲頭から出てくる伴奏形は3拍目頭の打点がないので、拍子が曖昧になってしまう可能性があります。必ず拍子感覚を意識して練習し、最終的には一小節一つで取るようにしましょう。
中間部のアドリブ的フレーズの表現
曲の中間部には、ウィンストン独特のアドリブ的なフレーズが展開されます。このセクションでは、アクセントを入れる箇所と軽く弾く音を明確に区別することが、演奏の質を分けるポイントとなります。
ウィンストンの演奏を注意深く聴くと、彼は意図的に特定の音を強調し、他の音は軽く流すことで、メロディーに立体感と動きを与えていることが分かります。この強弱のコントラストこそが、単なる音符の羅列を「語りかける音楽」へと変える秘訣です。
譜面に書かれた音符をただなぞるのではなく、どの音が「主役」でどの音が「脇役」なのかを考えながら演奏しましょう。
► 楽譜と音源資料
‣ 楽譜の選び方と入手方法
推奨楽譜:「ぷりんと楽譜」
ジョージ・ウィンストンはライブの度にアレンジを変えて演奏することで知られており、同じ曲でも演奏によって異なるバージョンが存在します。
「ぷりんと楽譜」から入手できる版が、アルバム「December」に収録された原曲に最も近い形でまとめられており、多くのピアノ演奏者がこのバージョンを使用しています。
‣ アルバム「December」で演奏を聴く
アルバム「December」で作曲者自身による演奏を聴くことができます。楽譜の解釈や表現方法を学ぶうえで欠かせないリファレンスとなります。
楽譜を見ながら音源を繰り返し聴くことで、ウィンストンがどのように音楽を構築しているのか、どこにアクセントを置いているのか、ペダリングはどうなっているのかなど、譜面だけでは読み取れない情報を得ることができます。
ジョージ・ウィンストン December(20th Anniversary Edition)
► 活用シーンと演奏機会
「柊とつた」は、その美しいメロディーと適度な難易度、そして幅広い聴衆に受け入れられる普遍性から、様々な場面で効果的に活用できます。例えば:
・発表会やリサイタルのレパートリー
・レストランやブライダルでの演奏
・ストリートピアノでの演奏
・クリスマスイベントでの演奏
► 終わりに
ジョージ・ウィンストンの「柊とつた」は、伝統的なクリスマスキャロルに現代的な感性を吹き込んだ、中級ピアノ学習者にとって理想的なレパートリーです。クリスマスシーズンはもちろん、一年を通じて演奏できる普遍的な美しさを持つこの曲を、ぜひレパートリーに加えてみてください。
※「柊とつた(The Holly and The Ivy)」は、「柊とつた」「柊と蔦」「ひいらぎとつた」など、様々な日本語表記で親しまれています。
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