【ピアノ】なぜ、ピアノアレンジを自分で手がけると幸せを感じるのか
► はじめに
ピアノを演奏する読者の方の中には、市販の楽譜を弾くだけでなく、一度は自分で作曲や編曲に挑戦してみたことがあるのではないでしょうか。そして、その創作の中で特別な幸福感を味わった経験はありませんか。
ピアノ音楽の楽譜は数多く売られているにも関わらず、自分で作曲や編曲を手がけると、創作の最中や完成後に不思議と幸せな気分になります。これは、筆者自身が昔から感じていて興味深いと思っていたので、本記事ではそのように感じる理由を言語化してまとめてみようと思います。 もちろん、「レパートリーが増える」などの現実的な恩恵もありますが、もっと根本的な理由があると感じました。
► ピアノアレンジによる幸福感の源泉
‣ 1. 目に見える、耳でも聴ける結果による達成感・満足感
人間は本能的に「手を動かして何かを生み出すこと」によって、自己肯定感や幸福感を感じる傾向があると言われています。
ピアノ音楽の作曲や編曲には、真っ白の楽譜に音符や休符を乗せていくというプロセスがしっかりとあり、そのプロセスを経て「自分で手がけた楽譜ができた」という結果が目に見えるため、達成感が強いのでしょう。また、自分の作った音が形となって耳に届くという「感覚的なフィードバック」「身体へ返ってくる喜び」が、視覚だけでなく聴覚を通じても満足感を倍増させてくれます。
‣ 2. 「今、この瞬間」を大切に味わうマインドフルな時間
出来上がるまでの間、「ああでもない、こうでもない、そうでもない」と悩んだり、いい響きをつかめて舞い上がったりと、「今、この瞬間」を大切に味わうマインドフルな時間が生まれます。これが、日常の中のちょっとした瞑想や自己啓発にも似た効果を持っていて、幸福を感じやすくなるのでしょう。
‣ 3. 「育てていく」プロセスの楽しみ
小説を読んでいると、いきなり訳の分からないキャラクターが出てくることもありますが、あれは、必ずしも最終的な役割まで見通されているキャラクターというわけではなく、一回出した後に、小説を書き進めるにしたがって育てていくケースも多いそう。作家自身がまだよく分からないままそのキャラクターを置くということです。
作曲や編曲でもこれと似た制作方法はよくとられます。また、創作を進めていくこと自体がそもそも「育てていく」プロセスを含んでいます。
完成形に向かうプロセスそのものが、すでに幸せに感じるのでしょう。
‣ 4. 「誰かのため」や「共有する」喜び
自分の作曲作品や編曲作品で誰かが感動してくれたり、「この曲すごく好き」「このアレンジすごく好き」と言ってくれたりしたら、それだけで心が満たされるでしょう。
自分に返ってくる喜びだけでなく、他人へ向けて、自分なりの音遣いで届けるという行為には、大きな喜びがあります。音楽は言葉を超えたコミュニケーションの手段であり、そこに自分らしさを込められることが創作の醍醐味です。
‣ 5. 小さな「生活の理想」を叶えている感覚
「自分で新しい音楽を生み出す暮らし」というのは、ピアノを弾いている方にとって、どこか理想のライフスタイルの象徴でもあると思います。そのイメージに実際に触れていることが、ちょっとした憧れを叶えてくれていて、日常が少しだけ特別に感じられる──それもまた幸せの理由の一つだと思います。
毎日創作に携わることがなくても、時間を見つけて音楽創作の世界に浸ることで、日常に彩りと充実感をもたらしてくれます。
‣ 6. 「自由」が与えてくれる喜びと充実感
楽譜通りに弾くのは安心感がありますが、依頼ではなく自由に取り組む創作では、あらゆることが自由。自分の好きな世界観で組み立てられるという「選択の自由」「想像の自由」があります。
「選ぶ自由」は心理学的にも幸福感の重要な要素とされているそうです。「選ぶ自由」=幸せの源泉なのですね。
► おまけ:好きな人への気持ちを込めたピアノアレンジの効果
本項目で取り上げる、好きな人に音楽で気持ちを伝えるコツは演奏方法に関してではありません。
やり方はシンプルです。たどたどしくてもいいので、自分で音を編んで演奏する楽曲をこしらえてください。つまり、弾きたい曲をピアノアレンジするということ。作曲できるのであれば、それでも構いません。
自分で作曲や編曲をしたものの場合、たとえそのクオリティがまだだったとしても、世の中にありふれたようなものだったとしても、作った人しか持っていないレパートリーになります。この価値は、すごく大きいと思ってください。
特別感が必要なのかというと、必ずしも聴いている人がそこまで分からなくてもいいのです。 楽譜さえ買えば誰にでも演奏できるものをいつも使うのではなく、一つの機会のために一つの作品を生み出そうとすると、自分なりにできる限りピュアな音を選びます。また、演奏にも気合いが入って、相手に伝わる可能性が高くなるはずです。
そして、気持ちを伝えたい人を想いながら音を選ぶ過程まで含めて楽しんでください。 そうすることで、仮にうまく気持ちが伝わらなくても自分にとって意味のない期間にはならないので。 力が湧き出るような、充実した期間になるとベストです。
► 終わりに
ピアノ音楽の作曲や編曲は難しそうに感じるかもしれませんが、まずは小さな一歩から始めてみてください。自分の音楽を生み出す幸せを一度でも感じると、辞められなくなります。
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