「無調音楽の当時の先駆者が、なぜ伝統的な音楽を重視したのか」
本記事では、「バロック」「古典派」「ロマン派」の作品を学ぶ重要性について、シェーンベルクの視点から解説していきます。
筆者が「楽器を演奏する方にも」よく推奨している書籍があります。
「作曲の基礎技法」著:シェーンベルク 音楽之友社
この書籍の特徴的なのは、
バロック、古典派、ロマン派の作品ばかりが例題として取り上げられているということ。
それ以降の作品はごくわずかしか登場しません。
例えば、J.S.バッハ、ベートーヴェン、ブラームスなど例を用いて、主題の展開方法や声部進行の技法、楽曲形式の基本原理などが説明されています。
なぜ、シェーンベルクは伝統を重視したのか
ここで考えていただきたいことがあります。
シェーンベルクは、キャリアの前半では「調性音楽」も作曲していましたが、
基本的には「無調音楽」の作曲に取り組んだ、当時としては先端をいっていた作曲家です。
ラフマニノフが美しいピアノソナタを作曲していた時期よりももっと前に、
シェーンベルクはすでに「無調音楽」の世界に踏み込んでいました。
それにも関わらず、この本では無調音楽のことはほとんど触れられていません。
どうしてなのでしょうか。
その理由は明確で、
シェーンベルクはやみくもに無調音楽を作曲していたわけではなく、
それまでの時代の基礎をしっかりと理解したうえで、それがイシズエになっていたわけです。
これには、伝統的なヨーロッパ音楽の形態も関連しています。
非常に伝統というものを重視したので、
シェーンベルクは、マーラーやベートーヴェンをはじめ、近しい地域の先人の影を常に感じていたとされています。
とがった針葉樹林のような歴史的形態の中で生きていたため、伝統的な音楽を当然重視していたわけです。
楽曲構造を理解することの重要性
シェーンベルクによる「作曲の基礎技法」の目的は、
「無調音楽の作曲方法」や「十二音技法のノウハウ」を伝えることではありません。
「バロック」「古典派」「ロマン派」という、本当の意味で音楽の根幹となる部分を理解するための書籍。
近現代以降の作品では、単純でない変則的なカタチも増えてきますが、
この書籍の内容をしっかりと理解しておけば、どこがどう変化しているのかを理解できるので、問題なく対応することができます。
演奏技術の向上につながる楽曲理解
楽器演奏をする方が、ある程度弾けるようになった段階からさらに一歩先のレヴェルへ進むには、「楽曲の成り立ちを理解すること」が欠かせません。
テクニック的にうまく弾けない部分というのは、音楽的な理解自体が足りていないことが原因となっているケースは多く、
楽曲の成り立ちを理解することで、技術的な問題の解決にもつながります。
まとめ
「基礎はバロック、古典派、ロマン派にある」といっても過言ではありません。
特に上級を目指す方は、これらの「イシズエ」を焦らずに丁寧に学習していきましょう。
【学習のための推奨ステップ】
1. まずは基本的な分析手法の理解から
2. 各時代の代表的な作品を分析的に聴く習慣をつける
3. 演奏する作品のライトな分析を行ってから練習を始める
4. 譜読みが終わってからさらに踏み込んだ分析をする
・作曲の基礎技法 著:シェーンベルク 音楽之友社
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