【ピアノ】ツェルニー30番程度で弾けるバルトーク変奏曲 3選

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【ピアノ】ツェルニー30番程度で弾けるバルトーク変奏曲 3選

► はじめに

 

バルトーク(1881-1945)の変奏曲は、古典的な変奏技法と20世紀の音楽語法を融合させた作品群です。複数曲ありますが、本記事では、その中でもツェルニー30番程度の技術レベルで取り組める作品でありながら、近現代音楽の本質的な表現技法を学ぶことができる3つの変奏曲を紹介します。それぞれ異なる学習効果を持っており、段階的に近現代ピアノ音楽の世界へと導いてくれるでしょう。

 

► 厳選したバルトークの3つの変奏曲

‣ 子供のために 第2巻 第5曲 変奏曲

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)

出版年:改訂版 1947年出版
演奏時間:2分15秒(バルトーク自身による記載)
難易度:ブルグミュラー25の練習曲中盤程度

 

作品概要

「子供のために」は全79曲(改訂版の曲数)からなる作品集で、バイエル併用程度からソナチネ併用程度まで、幅広い難易度の楽曲を収録しています。

「第2巻 第5曲 変奏曲」は、主題と3つの変奏からなるシンプルな作品で、ホモフォニーとポリフォニーのそれぞれの特徴を含んでいます。手が大きくない方でも演奏できる音遣いとなっています。

 

表現や技術的なポイント:

・弾けるようになっても速くなり過ぎないように(テンポ指定は、意味深い「Molto andante」)
・各変奏の特徴をつかんで練習する:
 – 第1変奏:ポリフォニー
 – 第2変奏:ホモフォニー
 – 第3変奏:ポリフォニー+ホモフォニー

 

‣ ミクロコスモス 第3巻 87. 変奏曲

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)

作曲年:1926年
演奏時間:1分20秒(バルトーク自身による記載)
難易度:ブルグミュラー25の練習曲中盤程度

 

作品概要

「ミクロコスモス」は全153曲からなる作品集で、バイエル併用程度から上級用レパートリーまで、幅広い難易度の楽曲を収録しています。

「第3巻 87. 変奏曲」は、主題と2つの変奏からなるシンプルな作品で、左手にくるメロディ、息の短めのメロディなどが印象的です。手が大きくない方でも演奏できる音遣いとなっています。

 

表現や技術的なポイント:

・メロディよりも上の音域で演奏する音を静かに演奏する
・複数見られるテンポ変化の指示をよく観察し、ギクシャクしないように
・メロディのフレーズ線が細かく締めくくられるので、都度フレーズ終わりでコブができないように

 

‣ 15のハンガリー農民の歌 6. バラード(主題と変奏)

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)

作曲年:1914-1918年
演奏時間:2分30秒(バルトーク自身による記載)
難易度:ツェルニー30番中盤程度

 

作品概要

「15のハンガリー農民の歌」はその名の通り全15曲からなる作品集です。

「6. バラード(主題と変奏)」は、上記の2曲に比べると随分と内容的に充実しています。Poco adagioの変奏や最終変奏では、シンプルな中に多層的な音響表現が組み込まれ、近現代らしさを感じさせます。

 

表現や技術的なポイント:

・様々な拍子変化への対応と、テンポ配分の全体バランスに注意
・堂々とした最終変奏を活かすため、それ以前の変奏の f でマックスにならないように
・Poco adagioの変奏では直前の興奮をひきずらないように、ガラリと空気感を変える

 

► 作品比較表

 

 曲名 テン
主な学習効果 重点練習ポイント
子供のために 第2巻 第5曲 変奏曲 中程度 ポリフォニーとホモフォニー 各変奏の書法的特徴を捉えて練習する
ミクロコスモス 第3巻 87. 変奏曲 やや速め 速めのテンポで演奏される、左手で演奏するメロディ メロディよりも上の音域で演奏する音を静かに欠けずに弾けるように
15のハンガリー農民の歌 6. バラード(主題と変奏) 中程度 近現代色が濃い書法 メロディを明確に抽出する

 

► 推奨楽譜

 

推奨楽譜

「子供のために 第2巻 第5曲 変奏曲」収載

・ニュー・スタンダード・ピアノ曲集 バルトーク 子供のために 2 / 音楽之友社

 

 

 

 

 

「ミクロコスモス 第3巻 87. 変奏曲」収載

・ニュー・スタンダード・ピアノ曲集 バルトーク ミクロコスモス 3 / 音楽之友社

 

 

 

 

 

「15のハンガリー農民の歌 6. バラード(主題と変奏)」収載

・ニュー・スタンダード・ピアノ曲集 バルトーク ピアノ作品集 1 / 音楽之友社

 

 

 

 

 

特徴:

・入手しやすさと適正価格
・学習に適した見やすいレイアウト
・日本語解説による初学時の理解の促進

学術的信頼性:

・パップ晶子氏による研究に基づいた校訂
・ハンガリーでの留学経験を持つバルトーク研究の専門家による監修
・複数の資料を比較検討した高い精度

 

► 変奏曲学習の基本アプローチ

 

主題の理解
まず主題を「暗譜するくらい」しっかりと理解し、その音楽的特徴を把握する

変奏との関係性
各変奏が主題とどのような関係にあるかを分析する

全体の構成:
・変奏曲全体の起承転結を理解し、演奏プランを立てる
・特に、急速な変奏とゆるやかな変奏が続くときには、プランがないと差が不明瞭になる

 

さらに詳しい変奏曲の学習ヒントについては、以下の記事で解説しています。

【ピアノ】変奏曲を音楽的に仕上げるための3つのポイントと実践的アプローチ

 

► 終わりに

 

本記事で紹介した3つの変奏曲は、技術的な難易度は初中級〜中級程度でありながら、近現代音楽の本質的な表現手法を体験できる貴重な学習教材となっています。これらの作品を通じて、バルトークや近現代ピアノ音楽への理解をさらに深めていきましょう。

変奏曲全般についての演奏ヒントや他のおすすめ楽曲などは以下のカテゴリーで紹介しているので、あわせて参考にしてください。

「変奏曲」カテゴリー

 


 

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