【ピアノ】「バッハ平均律―48フーガの研究」(福本正 著)レビュー

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【ピアノ】「バッハ平均律―48フーガの研究」(福本正 著)レビュー

► はじめに

 

「バッハ平均律―48フーガの研究」は、平均律のフーガ構造を体系的に学びたい方にとって、有用な一冊です。本記事では、その内容の特徴や、平均律研究の分野における他の著名書籍との違いなどを解説します。

 

・出版社:音楽之友社
・発行年月:1968年
・ページ数:243ページ
・対象レベル:中級〜上級者

 

・バッハ平均律―48フーガの研究 著:福本正 / 音楽之友社

 

 

 

 

 

► 内容について

‣ 最大の特徴:フーガ分析に特化

 

本書の最も大きな特徴は、プレリュードを一切扱わず、48曲のフーガのみに焦点を絞っている点です。演奏法の解説や情緒的なコメントは排除され、純粋に楽曲分析に徹した構成となっています。

各フーガの解説は4〜5ページ程度とコンパクトで、主題、応答、対位法、ストレット、終止などの要素を明快に分析しています。

 

‣ 本書の構成

 

第Ⅰ部:フーガの概要(全曲俯瞰)

・主題一覧(譜例付き)
・拍子、主題の開始音の統計的整理
・2重フーガ・3重フーガの解説
・ストレット、声部構成などの理論的整理

フーガの基礎用語を知っている前提で、平均律全48曲のフーガがどのように構成されているかを俯瞰できます。

 

第Ⅱ部:各フーガの個別分析

第Ⅰ巻・第Ⅱ巻の全48曲を、調性順に1曲ずつ分析。楽曲構造を客観的に解説しています。

 

‣ 注意点

 

フーガの基礎知識は必須

「フーガとは何か」「ストレットとは何か」といった基本用語の詳細な説明はありません。これらを学びたい場合は、「楽式論 著:石桁真礼生 / 音楽之友社 」などの併読を推奨します。→ 詳しいレビューを読む

演奏法には触れていない

あくまで分析書であり、タッチや解釈、表現のヒントは含まれていません。

 

► 他の著名書との比較

 

平均律研究の分野では、以下の2冊が特に著名です。本書の立ち位置を比較してみましょう。

 

項目 ケラー「バッハの平均律クラヴィーア曲集」 市田儀一郎「平均律クラヴィーア 解釈と演奏法」 本書(福本正)
一曲あたりの情報量 少なめ 最も多い 中程度
文章の情緒性 豊か やや豊か 淡白(分析重視)
特化度 バッハ論中心に、分析+演奏法も 分析+演奏法 フーガ分析のみ

つまり、本書は「フーガの構造分析」という一点に特化した、専門的な研究書と言えます。

 

► こんな方におすすめ

 

平均律初学者の「最初の分析ガイド」として

初めて平均律に取り組む方にとって、市田本のような詳細過ぎる解説は情報過多になりがち。本書は分析がコンパクトにまとまっているため、「まず構造を把握したい」という入門段階に最適です。

上級者の「併読本」として

すでに平均律に慣れている方は、複数の分析書を比較することで多角的な視点が得られます。ケラー本や市田本と併せて読むことで、フーガ構造への理解が一層深まるでしょう。

 

► 終わりに

 

・初学者には「シンプルな分析の羅針盤」として
・上級者には「多角的視点を得るための併読本」として

それぞれの学習段階で活用できる研究書と言えるでしょう。演奏表現よりも「楽曲の骨格を知りたい」という方に、特におすすめします。

 

本記事で取り上げた関連書籍:

・バッハの平均律クラヴィーア曲集 著:ヘルマン・ケラー → 詳しいレビューを読む
・平均律クラヴィーア 解釈と演奏法 全2巻 著:市田儀一郎 → 詳しいレビューを読む
・楽式論 著:石桁真礼生 → 詳しいレビューを読む

 

・バッハ平均律―48フーガの研究 著:福本正 / 音楽之友社

 

 

 

 

 

 


 

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