【ピアノ】J.S.バッハ作品に学ぶピックアップの区分分析
► はじめに
楽曲分析において、フレーズ間の接続部である「ピックアップ」の理解は、作品の構造を把握するうえで重要な要素となります。
本記事では、J.S.バッハの作品を例に、ピックアップの区分分析手法と実践的な分析演習を提供します。
想定読者:
・譜読みの基礎知識をお持ちの方
・音楽理論に興味のある方
・作曲・編曲を学習中のピアノ学習者
この記事で学べること:
・ピックアップの構造的分析手法
・実践的な分析の進め方
► ピックアップの構造的理解
ピックアップとは、フレーズとフレーズを接続する音型を指します。単なる「つなぎ」ではなく、以下のような音楽的機能を持つ重要な構造要素です:
構造的機能:
・フレーズ境界の明確化
・調性進行の補強
・声部進行の連続性確保
分析的視点:
・和声進行との関係性
・声部進行のパターン
・リズム構造の特徴
► 実践編:J.S.バッハを例に
‣ 実践分析:J.S.バッハ作品での検証
基礎分析例
J.S.バッハ「アンナ・マクダレーナ・バッハの音楽帳 第2巻 メヌエット BWV Anh.114」
譜例1(PD楽曲、Sibeliusで作成、1-12小節)
8小節目のピックアップについて、以下の観点から分析を行います:
区分の判断基準:
・和声的機能
・声部進行の方向性
・音程関係
構造的特徴:
・7度音程による区分点の形成
・バス声部の進行パターン
カギマークで示した区分になります:
・丸印で示した音は前の流れからのバス音
・C音からがピックアップ
7度音程跳躍があるので、このように分析するといいでしょう。
仮に、以下の譜例2のような左手パートだったとしたら:
・丸印で示した音は前の流れからのバス音
・丸印で示した音からピックアップ
このように、鎖のつなぎ目として共有することになります。
譜例2(7-9小節)
レッドの音符を1オクターヴ下げたことで、7度跳躍が無くなったため、ひと流れとして捉えることができます。
‣ 分析演習
J.S.バッハ「アンナ・マクダレーナ・バッハの音楽帳 第2巻 メヌエット BWV Anh.115」
譜例3(PD楽曲、Sibeliusで作成、1-6小節)
※この楽曲はト短調ですが、調号がフラット一つなのは、バロック時代に使用されていたドリア調号によるものです
この譜例の左手パートの中からピックアップを抽出し、区分を考えてみてください。
分析手順:
1. 左手パートの進行パターンや特徴の確認
2. 区分点の特定
3. 構造的な意味づけ
考察のポイント:
・声部進行の連続性
・跳躍への着眼
・リズム構造との関連
迷った場合は、上記、譜例1と譜例2の分析結果の違いとその理由を、もう一度チェックしてみましょう。
解答例と解説
譜例4(1-6小節)
跳躍の位置に着目してください。2拍目頭のD音からはひと流れとして捉えることができるため、区切りを入れるのは「1拍目のバス音D音と2拍目のD音の間」になります。
► 発展的な分析への展開
本記事で学んだピックアップの区分分析は、以下のような場面でも応用が可能です:
様々な声部数での分析:
・3声・4声での声部進行の考察
・各声部間の関係性の検証
異なる舞曲での検証:
・サラバンド:特徴的な拍節構造とピックアップの関係
・ブーレ:2拍子系舞曲でのピックアップの扱い
・ジーグ:複合拍子における声部進行の特徴
分析の実践的活用:
・楽譜への書き込み方法
・声部進行の図式化
・和声分析との組み合わせ方
関連内容として、以下の記事も参考にしてください。
【ピアノ】ピックアップの種類とパターン:J.S.バッハ作品での実例解説
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