【ピアノ】変奏曲を音楽的に仕上げるための3つのポイントと実践的アプローチ
► はじめに
変奏曲は、一つの主題から様々な表情を引き出していく魅力的な音楽形式です。しかし、その演奏時間の長さや各変奏の独立性から、一つの作品として音楽的にまとめ上げるのは容易ではありません。
この記事では、変奏曲を効果的に練習し、魅力的に演奏するためのポイントと、難しい変奏曲に向き合うための実践的なアプローチを紹介します。
► 変奏曲を音楽的に仕上げる3つのポイント
‣ 1. とにかくまずは「主題(テーマ)」を理解する
変奏曲では、主題を「シンプルな旋律」と「シンプルな和声」にしておいて、それをバリエーションで発展させていくことが常套的なやり方になっています。
つまり、練習するときは「主題」をしっかりと理解することが何よりも大切です。逆に言うと、この段階の勉強次第で、他の変奏の理解度が全く変わってきてしまいます。
先を焦らず、主題をしっかりと音楽的に理解してきちんと譜読みをしておく。
ここまでできてから先の変奏へ進みましょう。
‣ 2. 変奏ごとのキャラクターを良く考える
キャラクターとは、「テンポ」や「音色」などによって表現される性格のこと。
テンポは、説明するまでもありませんね。
音色では、例えば f 一つとっても:
・活き活きとしているのか
・少し攻撃的なのか
・重厚的に鳴らしていくのか
などとキャラクターには幅があります。
こういったことを、変奏ごとに吟味して適切なキャラクターを考えていきましょう。
通常の楽曲でも必要なことですが、変奏曲の場合は特に各変奏ごとの細かなキャラクター設定が重要。それを怠ると、聴衆を退屈させてしまう恐れがあります。
変奏曲というのは変奏されているとは言えども「繰り返しの音楽」なので、それらの繰り返しを退屈させずに聴かせるよう心がけましょう。
‣ 3. 変奏同士のつなぎ方を有機的に
上手な奏者は、各変奏同士のつなぎ方が上手なのは間違いありません。
原則としては、各変奏同士のつなぎでは時間を取り過ぎないことを踏まえましょう。なぜかというと、それをしてしまうと、各変奏が終わる度にいちいち段落感がつき過ぎてしまうからです。
例外として、モーツァルト「ピアノソナタ第11番 K.331(トルコ行進曲付き) 第1楽章」の「第5変奏」から「最終変奏」へ行くところは時間を長めにとる演奏が多く、慣例的な解釈と言えます。
おそらく:
・第5変奏(Adagio)と最終変奏(Allegro)との対比を際立たせる
・最終変奏をフィナーレとして独立したもののように扱っている
このような解釈をするピアニストが多かったのでしょう。
► 弾きたいけれど難しい変奏曲との付き合い方
「ピアノへの道」アンドル フォルデス (著)、渡辺 護 (翻訳) 音楽之友社
という書籍の中に、以下のような記述があります。
此の変奏曲(ブラームス「パガニーニの主題による変奏曲 Op.35」のこと)を演奏出来る、出来ないは別にして、此の変奏の中の幾つかを日常の練習のレパートリーの中へ加えるべきである。
(抜粋終わり)
変奏曲を自分にとっての良いエチュードと考えて抜粋で取り組むことには、期待できる学習効果があります。
まず何よりも一つの変奏は短く、かつ、音楽的なものが多いですし、将来同曲の難しい変奏へ挑戦するモチベーションにもなります。取り出す変奏によっては本当にエチュードとしての効果をあげることもできるでしょう。
変奏の一つが単独で有名になっている作品もあるように、弾きたい変奏があれば通常のレパートリーとして取り組むのもアリです。
シューマン「交響的練習曲 Op.13」は全体としては難易度の高い作品ですが、「Etude XI (Variation 9) , Andante espressivo」は非常に美しく、短尺でもあるので、とりあえず単独で弾いてみる変奏としておすすめ。
どんな変奏曲でも全変奏にトライした方が学習になるのは言うまでもありません。しかし、「弾きたいけど全曲は難しい」という変奏曲がある場合は、まずは上記のように付き合ってみてください。
・ピアノへの道 アンドル フォルデス (著)、渡辺 護 (翻訳) 音楽之友社
► レベル別:おすすめ変奏曲
おすすめの変奏曲については、以下の記事にまとめています:
初〜中級:
・【ピアノ】初中級者から弾けるおすすめ変奏曲3選:ツェルニー30番レベル
中〜上級:
・【ピアノ】ツェルニー50番、このまま続けるべき?:代用としての「エロイカ変奏曲」のすすめ
・【ピアノ】バッハ=ブラームス「シャコンヌ」完全ガイド:難易度・楽譜選択のポイント
► 終わりに
変奏曲は、演奏者の音楽性と技術力を総合的に試される作品です。主題の理解、各変奏のキャラクター付け、そして変奏同士のつなぎ方という3つの要素を意識しながら、じっくりと取り組んでいきましょう。
また、難しい変奏曲に対しても、部分的な練習や抜粋演奏という形で柔軟に向き合うことで、より多くの学びを得ることができます。
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