【ピアノ】サン=サーンス おすすめピアノ小品 3選:初中級者向け、3分以内
► はじめに
サン=サーンスは「動物の謝肉祭」などで有名な作曲家でありながら、ピアノ音楽の分野ではあまり知られていません。そこで、本記事では、ツェルニー30番程度のレベルから取り組めて、かつ3分以内で演奏できるコンパクトな小品を3作品紹介します。
► 厳選した3曲について
選曲基準
以下の4つの観点から慎重に選曲しました:
・演奏しやすさ:技術的負担が適切で、楽曲が3分以内に収まること
・楽譜の入手性:信頼できる楽譜が容易に入手できること
・音楽的価値:レパートリーとして価値のある作品であること
・作品の性格の多様性:全く異なるキャラクターの3曲を選択すること
► 3選の詳細解説
以下では、ワンポイント楽曲解説と演奏のヒントを紹介します。解説は事典的内容ではなく、実際の演奏経験に基づいた実用的な内容を中心にしています。
‣ 無言歌
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)
作曲年:1871年
演奏時間:約2分
難易度:ツェルニー30番中盤程度
楽曲の特徴
メランコリックで切ない旋律が印象的な小品です。常に内声部にメロディが埋め込まれているため、作りはシンプルながらも立体的な演奏が求められる作品です。
表現や技術的なポイント:
・内声に埋め込まれたメロディがしっかりと聴こえるように弾くのをファーストステップとする
・内省的な楽曲の性格を考慮し、f の部分でも乱暴にならないよう注意
・1小節1つの区切りにならないよう、横の流れを意識して演奏する
‣ 6つのバガテル Op.3 より 第1曲
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)
作曲年:1855年
演奏時間:約2分
難易度:ツェルニー30番後半程度
楽曲の特徴
覚えやすいメロディがあるわけではなく、一見つかみどころのない楽曲ですが、演奏を重ねるほどに魅力が増す作品です。幅広い音域を使った音響効果と、細やかな和声変化が印象的です。
表現や技術的なポイント:
・3度音程が連続する箇所ではペダルを使ってもいいが、よく耳を使って適切に踏み替える
・細かなダイナミクス変化をきちんと表現し、音楽を立体的に読み取る
・旋律に頼らず、和声の響きの変化を楽しむ意識も持つ
8小節目からの無伴奏部分を音楽的に演奏するコツ
推奨記事:【ピアノ】レガート奏法大全:ペダルに頼り過ぎず美しくつなぐテクニック
『響きを横へつなげて、一音一音にならないで」の感覚の身に付け方』の項目を参考にしてください。
‣ ガヴォット Op.23
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)
作曲年:1871年
演奏時間:約3分
難易度:ツェルニー30番後半程度
楽曲の特徴
音楽劇「銀の音色」のための音楽をピアノ曲にしたもので、オーケストラの演奏を思わせる重厚かつ多層的なピアノ書法がとられています。本記事で紹介している3曲の中では最もよく知られている作品です。
表現や技術的なポイント:
・古典舞曲のイメージが強く出ているので、リズムを正確に弾くことをファーストステップとする
・それぞれの音に対して「オーケストラで演奏するとしたらどの楽器が演奏する音か」という視点を持つ
・部分的に3段譜も用いられているため、複数の声部を意識した多層的なイメージを持って音を出す
► 作品比較表
曲名 | テン ポ |
楽曲の性格 | 重点練習ポイント |
---|---|---|---|
無言歌 | 中程度 | メランコリックな作品 | 内声メロディの確実な抽出 |
6つのバガテル Op.3 より 第1曲 | 中程度 | ややつかみどころがないながらも、味のある作品 | 3度音程の連続の滑らかな処理 |
ガヴォット Op.23 | やや速め | オーケストラを思わせる古典的舞曲作品 | リズムの正確性と多層的思考 |
► 推奨楽譜
推奨楽譜:サン=サーンス ピアノ曲集 / カワイ出版
・取り組みやすい小品を中心に11作品収載
・本記事で紹介した3作品をすべて収載
► 演奏会での活用方法
抜粋演奏のパターン
3曲のうち1曲のみを演奏する場合は、聴きやすい「無言歌」か演奏効果の高い「ガヴォット Op.23」がおすすめです。
全曲演奏:
所要時間:約8分(楽曲間の間隔含む)
適用場面:10分程度の持ち時間がある演奏会
全曲を演奏する場合、以下の順序をおすすめします:
1. 無言歌(親しみやすいメロディでの導入)
2. 6つのバガテル Op.3 より 第1曲(やや聴き手を選ぶ作品を中間に配置)
3. ガヴォット Op.23(最も演奏時間が長く演奏効果も高い楽曲でフィナーレ)
他作品との組み合わせ:
・導入として:導入でどれか1曲を演奏し、他のフランスものなどの大曲と組み合わせる
・サン=サーンスプログラム:「主題と変奏 Op.97」などの華やかな作品との組み合わせ
筆者自身は、「左手のための6つのエチュード Op.135」の学習を通してサン=サーンスのピアノ音楽に興味を持ち、本記事で紹介している3作品も演奏しました。特に「6つのバガテル Op.3 より 第1曲」は弾くほど味が出てくるお気に入りの作品です。
► 終わりに
サン=サーンスのピアノ曲には、マイナーながらも興味深い作品がいくつもあります。本記事で紹介した3作品をきっかけに、さらに多くの作品に触れてみて欲しいと思います。
同難易度帯の別の作品は、「おすすめの楽曲(初中級)」カテゴリーで紹介しています。
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