【ピアノ】流れの中で突如出てきた要素すべてに目をつける

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【ピアノ】流れの中で突如出てきた特徴すべてに目をつける

► はじめに

 

ピアノを演奏する際、楽譜に書かれた音符や記号をただ機械的に読むだけでは、作曲者の真意を汲み取ることができません。重要なのは、音楽の「流れ」の中で突然現れる特徴的な要素に注目することです。これらの要素は偶然そこにあるのではなく、多くの場合は作曲者が意図的に配置した重要なメッセージです。

本記事では、古典派からロマン派、近現代に至るまでの作品を通じて、このような「突如現れる特徴」の読み解き方を具体的に解説します。

 

► タイトルの意味

 

「流れの中で突如出てきた特徴すべてに目をつける」とは、楽曲の進行において、それまでのパターンや流れとは異なる特徴的な要素が現れたときに、素通りせずにいちいちその意味を考察することを指します。

 

なぜ、このアプローチが重要なのか:

・「なぜそう弾くのか」を腑に落としてから演奏するので、自分の解釈に納得できる
・他の作品にも応用できる分析眼を養える

 

► 具体例で学ぶ分析方法

‣ ① 古典派:モーツァルト「ピアノソナタ 変ロ長調 K.570」

 

モーツァルト「ピアノソナタ 変ロ長調 K.570 第1楽章」

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)

 

注目ポイント:7小節目のB音上のスタッカート

この作品の冒頭で、7小節目のメロディB音に突然スタッカートが現れます。一見単純な奏法指示に見えますが、実はより深い意味があります。記号が現れたとき、「はい、スタッカートで切って弾けばいいですね」ではなく、「なぜ、スタッカートがついたのだろう」と考えるようにしましょう。

 

分析結果:

・スタッカートが付いたB音で前の素材が終了
・小音符C音から新しい素材が始まる
・スタッカートは「素材の切れ目・連結の仕方」を示す重要な記号

練習への活かし方:

・単に音を短く切るだけでなく、「素材の区切り」として意識する
・練習「初期」の段階では、切れ目でわざと多めに時間をとって演奏し、構造を身体へ入れる

 

‣ ② ロマン派:シューマン「献呈(クララによる編曲版)」

 

シューマン「献呈(クララによる編曲版)」

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)

 

注目ポイント:3小節目の8分休符

3小節目で右手の伴奏パターンが変化し、突然8分休符が現れます。「音符が書かれていないから弾かない」で済ませず、「なぜ、流れの中でここだけ間引かれたのだろう」と考えましょう。

 

分析結果:

・メロディC音と伴奏C音の同音程での同居を回避
・メロディーの明確性を保つための工夫
・演奏の実用性と音楽的効果を両立

練習への活かし方:

・休符も音楽の一部として大切に扱う
・その部分では左手パートが露呈されることを認識しておく

 

‣ ③ 近現代:ラヴェル「前奏曲(1913)」

 

ラヴェル「前奏曲(1913)」

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)

 

注目ポイント:3小節目の4分休符

流れの中で下段に突然4分休符が現れます。「流れの中でどうしてここだけ4分休符になるのだろう」と考えることで、音響の意図が見えてきます。

 

分析結果:

・3小節2-3拍目のメロディを無伴奏で表現したい意図
・詩的な効果を狙った音響設計

練習への活かし方

ピアニストの中には、この箇所でダンパーペダルを踏みっぱなしにする方もいますし、踏み変えることが絶対条件ではありません。ここで言いたいのは、「突然4分休符が出てきたことに目をつけて、あらゆる可能性を考えたうえでペダリング判断をしているか」ということです。

 

► 実践的な分析方法

 

楽譜の「異質さ」を発見する:

・今まで出てこなかった記号はないか
・パターンが変わった箇所はないか

「なぜ?」を問いかける:

・なぜ、そこだけ違うのか
・その変化で作曲者は何を表現したかったのか

音楽的文脈で考える:

・前後の流れとの関係
・部分や楽曲全体の構造における位置づけ

 

► 終わりに

 

本記事で紹介した3つの例は、それぞれ異なる時代の作品でしたが、共通しているのは「突然の変化には大体意味がある」ということです。日々の学習の中で、このような発見を積み重ねることで、より深い音楽的理解と表現を身につけることができるでしょう。

 


 

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