【ピアノ】ベートーヴェン「ピアノソナタ第18番 第1楽章」から学ぶ、跳躍克服の実践的運指法
► はじめに
ベートーヴェン「ピアノソナタ第18番 変ホ長調 Op.31-3 第1楽章」には、多くの跳躍と技巧的な課題が含まれています。本記事では、この作品の具体的な箇所を例に、効果的な運指法と実践的な練習方法を解説します。
► 重要ポイント:両手の使い分けによる技術的難所の克服
ベートーヴェン「ピアノソナタ第18番 変ホ長調 Op.31-3 第1楽章」
譜例(PD作品、Sibeliusで作成)
音符のカラーの意味:
・通常のブラック音符 → 右手で弾くことを提案する音
・レッド音符 → 左手で弾くことを提案する音
この作品では跳躍が多くミスタッチをしやすい箇所があるので、音楽の内容を損なわずに両手分担の工夫ができる箇所を6箇所ピックアップしました。
A. 75小節~76小節の跳躍部分
・技術的課題:右手の跳躍の連続
・解決策:左手で一部の音をサポートすることで、右手の無理な動きを避ける
・実践方法:
– 1. 左手で取る音(赤い音符)を特定する
– 2. 新しい運指で何度もゆっくり練習し、動きを定着させる
– 3. 音の繋がりを確認しながらテンポを上げていく
B. 126小節目の頭の跳躍部分
・技術的課題:右手の大きな跳躍
・解決策:左手で一部の音をサポートすることで、右手の無理な動きを避ける
126小節の跳躍部分ではフレーズが改まるので「多少の時間」を取ってもいいのですが、この大きな跳躍とポジション準備のためには「多少の時間」では済みません。したがって、左手で一部の音をサポートしてしまいましょう。
C. 161小節目の頭の跳躍部分
・特徴的な課題:右手の跳躍
・解決策:左手で一部の音をサポートすることで、右手の無理な動きを避ける
レッド音符で示した上段のEs音は、左手でとってしまいましょう。ただし、この音は16分音符で他の左手パートの音は4分音符なので、音価に注意して親指のみすぐに離す必要があります。
D. 205小節~206小節の跳躍部分
「A. 75小節~76小節の跳躍部分」の時と同様です。
E. 246小節目の入りにおける跳躍部分
・特徴的な課題:和音をつかもうとした時の右手の跳躍
・解決策:左手で一部の音をサポートすることで、右手の無理な動きを避ける
246小節目の左手で取るG音は4分音符で他の左手パートの音は16分音符なので、音価に注意して親指は保持する必要があります。
F. 252小節3拍目の入りにおける跳躍部分
・特徴的な課題:和音をつかもうとした時の両手同時の跳躍
・解決策:
– 右手で一部の音をサポートすることで、左手のポジション移動を楽にできる
– 結局右手は跳躍するが、両手で同時に跳躍するよりもずっと確実な演奏ができる
► 注意すべきポイント
両手分担を決めていく過程や演奏時の注意点:
1. 音楽的表現の維持と身体的な負担への配慮
・運指の工夫が表現を妨げないよう、よく検討する
・フレージングを意識した前後も含めた運指選択
・無理のない手の使い方
2. 音色への注意
・両手で分担する際の音色の統一
・強弱の表現のしやすさ
► まとめ
本作品に見られる技術的な課題は、適切な運指法の選択によって克服することができました。
重要なのは、単に難しい箇所を弾けるようにすることではなく、音楽的な表現を実現することです。何でもかんでも両手で分担するのではなく、分担した方が明らかにスムーズになると思うところのみで検討してみるのが得策でしょう。
この作品で学んだ運指法の考え方は、他の作品の演奏にも応用できます。自身の手の特徴や技術レベルに合わせて、最適な運指を見つけていきましょう。
関連内容として、以下の記事も参考にしてください。
・【ピアノ】運指の決め方 大全:43の技術と戦略
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・【ピアノ】特殊な音楽効果を生み出す書法における運指テクニック
・【ピアノ】運指の書き込みによる譜読みの効率化と練習管理法
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