この構造変化こそが、楽曲に生命力を与える重要な要素となっています。
構造変化による音楽的効果
無窮動の楽曲ではノンストップで常に一定したリズムがありますね。
では、作曲的にどのようにメリハリが付けられているのかというと、そのうちの一つが、構成の変化によります。
例えば、モーツァルトの「ピアノソナタ第8番 K.310 第3楽章」を見てみましょう。
全252小節という規模の楽章において、基本となる4小節単位の構造が支配的です。しかし、以下のような「例外」が計画的に配置されています:
・3小節単位の部分:4箇所
・2小節単位の部分:2箇所
・その他:4小節単位(236小節分)
単位の変わった数少ないところがメリハリに。
一見、数の上では小さな変化に思えるかもしれません。しかし、これらの「例外」は決して無作為ではありません。全て楽章の重要な転換点、つまりセクションの区切りに配置されているのです。
「隠された突っかかり」の概念
このような、一定したリズムや音型の流れの中に潜む構造変化のことを、「隠された突っかかり」と呼びたいと思います。なぜ「突っかかり」かというと、楽曲の自然な流れに対して、意図的な「引っかかり」として機能するため。
この「隠された突っかかり」は以下のような役割を果たします:
・フレーズ構造の明確化
・セクション間の効果的な区切り
・音楽的な緊張と解放の創出
・聴き手の注意喚起
実践的な活用法
「隠された突っかかり」を意識することは、以下の点で演奏者に利点をもたらします:
・楽曲構造の把握:曲の大きな構造を理解し、演奏の方向性を明確にできる
・効果的な暗譜:構造変化のポイントを記憶の手がかりとして活用できる
無窮動のような、一見単調に思える楽曲だからこそ、この「隠された突っかかり」の把握が重要になります。
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