【ピアノ】発表会で映える知られざる珠玉のピアノ曲 4選:中〜上級者向け
► はじめに
定番曲も素晴らしいですが、時にはちょっとマイナーな楽曲に取り組んでみませんか。
本記事では、発表会で演奏すると必ず注目を集める、知る人ぞ知る珠玉の4曲を紹介します。演奏難易度は、ツェルニー30番を学習中の方から上級者まで、幅広い層の方にとって楽しめる作品をチョイスしました。
これらの作品は音楽的魅力と聴衆への訴求力を兼ね備えており、個性的なレパートリーを求める演奏者にとって理想的な選択肢となります。
► 珠玉の4曲
‣ グリーグ「抒情小品集 より 家路 Op.62-6」
演奏時間:2分半〜3分程度
難易度の目安:ツェルニー30番修了程度
主な特徴: 急-緩-急の三部構成、美しいカンタービレ中間部
譜例(PD作品、Finaleで作成)
北欧を代表する作曲家グリーグの手による小品です。
「急-緩-急」の構成で書かれ、中間部には美しいカンタービレを含んでいます。その後、勢いよく楽曲を締めくくる展開は、発表会での演奏効果を計算したかのような構成。コンパクトな曲尺ながら聴きごたえがあり、アンコールピースとしても最適です。
北欧らしい澄んだ響きと叙情性を備えた作品でありながら、ピアノ学習者の間ではあまり取り上げられていないのが不思議なほど。技術的な要求が適度であるため、音楽表現に集中できる一方で、十分な演奏効果も期待できます。
・グリーグ ピアノ名曲集(2) 全音楽譜出版社
‣ デュラン「ワルツ」
演奏時間:4分〜5分程度
難易度の目安:ツェルニー30番修了程度
主な特徴: 優雅なワルツスタイル、同難易度作品群の中では大きな演奏効果
譜例(PD作品、Finaleで作成)
全音ピアノピースでもお馴染みの一曲です。
手の動きは非常になじみやすく、技術的なハードルも比較的低めですが、その分だけ音楽表現の可能性が広がります。同じ難易度帯の楽曲と比べても、華やかさという点で一歩抜きん出ています。
優雅なワルツの流れに乗って、表現力を存分に発揮できる作品と言えるでしょう。
・全音ピアノピースー099 デュラン「ワルツ」 全音楽譜出版社
‣ カスキ「激流 Op.48-1」
演奏時間:3分程度
難易度の目安:ツェルニー40番中盤程度
主な特徴: 情熱的な性格、従来型の分散和音パターン
譜例(PD作品、Sibeliusで作成)
ヘイノ・カスキ(1885-1957)はフィンランドの作曲家、ピアニストであり、ピアノ曲も数曲残しています。その中でも本作は、コンクールの自由曲などでも時々耳にする演奏効果の高い情熱的な一作です。
オーソドックスな分散和音が多く使われており、演奏時間も短いため、聴感上よりも弾きやすく感じることでしょう。激しい性格を持ちながらも、技術的には意外にアプローチしやすい構造となっています。
北欧の作品がレパートリーにない方にも挑戦をおすすめします。短時間で強い印象を残せる、まさに発表会向きの作品です。
・カスキ ピアノ小品集 全音楽譜出版社
‣ ヤナーチェク「ピアノ・ソナタ 1905年10月1日 第1楽章」
演奏時間:6分程度
難易度の目安:ツェルニー40番修了程度
主な特徴: 歴史的悲劇に基づく、深い芸術的内容
譜例(PD作品、Finaleで作成)
20世紀初頭のチェコで起きた実際の出来事—ブルノ工科大学でのチェコ人学生の射殺事件—をモチーフにした異色の作品。作曲者ヤナーチェクは、この事件を目撃したとされています。
重厚で暗い雰囲気を持つ作品ですが、その芸術的深みと劇的な表現は、演奏発表会の場で聴衆の心を揺さぶることでしょう。
チェコ音楽特有の叙情性と激しさが同居する本作は、レパートリーに新しい色彩を加えたい方にもおすすめです。上級者にとって挑戦し甲斐のある、価値ある作品と言えます。
・ヤナーチェク ピアノ作品集 全音楽譜出版社
► 作品比較表
作品名 | 演奏時間 | 難易度 | 主な特徴 | 適用場面 |
---|---|---|---|---|
グリーグ 家路 | 約2.5-3分 | ツェルニー30番修了程度 | 北欧の叙情性、明瞭な場面転換 | アンコール、北欧レパートリー |
デュラン ワルツ | 約4-5分 | ツェルニー30番修了程度 | 優雅な舞曲、華やかさ | 明るく楽しげな選曲 |
カスキ 激流 | 約3分 | ツェルニー40番中盤程度 | 情熱的、分散和音中心 | アンコール、北欧レパートリー |
ヤナーチェク ソナタ 第1楽章 | 約6分 | ツェルニー40番修了程度 | 重厚・暗色、歴史的背景 | 上級演奏会、芸術性重視 |
► 終わりに
これらの作品は、いずれも作曲家たちが思いを込めて書き上げた珠玉の小品です。メジャーな作品に挑戦するのもいいですが、時には、これらのようなややマイナーな作品にも挑戦してみましょう。
各作品が持つ独特の魅力は、学習者にとって新たな表現の可能性を開いてくれるはずです。定番レパートリーを超えた音楽的冒険を通じて、より豊かなピアノ体験を得られることでしょう。
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