【ピアノ】シューマン作品の演奏ポイント解説集:譜例付き実践ガイド
► はじめに
本記事では、シューマンのピアノ作品における実践的な演奏アドバイスをまとめています。各曲の重要なポイントを、譜例とともに具体的に解説していきます。
この記事は随時更新され、新しい作品や演奏のヒントが追加されていく予定です。
► 小品
‣ アレグロ Op.8
シューマン「アレグロ Op.8」ワンポイントレッスン
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、170-171小節)

譜例の箇所から、長く充実したコーダになります。
下段にメインメロディがきているので、それらが一番主張するように聴かせましょう。右手で演奏する分散和音は、親指が軸になっていることを理解して、一つのスラーを一息で弾いてください。
一息で弾くコツは、ワンフレーズワンアクションにすることです。アクセントのついたはじめの音を深く弾いて、そのアクションの中で余力で他の音も弾いてしまうイメージです。一つ一つ一つ、にならないように気をつけましょう。
‣ 謝肉祭 Op.9
· 1. 前口上
譜例1(PD楽曲、Sibeliusで作成、14-16小節)

譜例2(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)

多声的な構造を理解しましょう。sf の和音が響く部分も、実際には「伸びているメロディの中に別の楽器が補強される」という多層的な作りになっています。この理解により、ダンパーペダルの踏み替えなど演奏解釈の判断ができます。
演奏のポイント:
・簡略化された記譜の背後にある多声構造を読み取る
・オーケストラのような多層的な響きをイメージ
・sf の部分でペダルを踏み替えない
詳細な解説記事はこちら
【ピアノ】煩雑さを避けた記譜の解釈に注意する
「‣ シューマンの記譜法に見る多声的思考」
· 5. オイゼビウス
譜例(PD作品、Sibeliusで作成、曲頭)

7連符など割り切れない連符の演奏法。小節終わりから次の小節頭への「つなぎ」の音符を丁寧に歌うことで、音楽的な接続が生まれます。
演奏のポイント:
・カギマークで示した、次の小節への「つなぎ」の音符に注意
・機械的に均等に弾かず、音楽的な流れを優先
詳細な解説記事はこちら
【ピアノ】連符を音楽の流れの中で自然に演奏する方法
「‣ あいまいな連符を上手く歌うコツ」
· 7. コケット
譜例(PD作品、Finaleで作成、曲頭)

一見複雑に見える音符の羅列も、実は和音を分散させただけの音型。手の形(ポジション)を事前に準備することで、演奏難易度が大幅に下がります。
演奏のポイント:
・分散和音の元の形を見抜く
・手の形を準備してから指を下ろす
・用意を怠ると手の動きが大きくなり失敗しやすい
詳細な解説記事はこちら
【ピアノ】実践的なアプローチで磨く音楽性と演奏力:独学でも確実に成長するための総合ガイド
「‣ 17. 手の形を準備できる音型」
· 12. ショパン
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、10-11小節)

10小節目のメロディでは、小音符から通常の音符へ戻るときに音色を変えて、それらの差を表現しましょう。小音符の部分をさらっと軽く演奏しておくのが、差をつけやすくするコツです。
11小節目の丸印で示した伴奏の音は右手で取ることもできます。これらの音は直後のメロディと音域が被っているため、メロディの一部として聴こえてしまわないようsf はやり過ぎないことが重要です。メロディと音色を変えるのが難しく感じるのであれば、あえて右手で取らずに弾いてもいいでしょう。
· 14. 再会
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、曲頭の右手)

多声における同一指同音連打の技法。指の各関節をとめて付け根から打鍵し、上声部のメロディに手の重心を置くことが重要。
演奏のポイント:
・指の関節をとめて、付け根からの動きで打鍵
・腕で鍵盤を押し付けない
・上声部のメロディに手の重心を置く
詳細な解説記事はこちら
【ピアノ】同音連打の基礎と応用
「‣ 13. 多声における同一指同音連打の繊細な技法」
· 15. パンタロンとコンビーヌ
譜例(PD作品、Finaleで作成、曲頭)

速い連続スタッカートは「指を使用したスタッカート」で演奏しましょう。鍵盤の近くから最小限の動きで打鍵するのがポイントです。
演奏のポイント:
・腕ではなく指を使用したスタッカートで
・鍵盤の近くからなるべく少ない動きで
・指を大きく上げてバタバタさせない
詳細な解説記事はこちら
【ピアノ】スタッカートを理解する:奏法、テクニック、音楽的解釈の深堀り
『· 1-1.「指を使用したスタッカート」の使用例』
· 16. ドイツ風ワルツ – 間奏曲(パガニーニ)
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、パガニーニの冒頭)

このような跳躍を伴う急速な部分を弾きこなすために必要なのは、とにかく、譜読みの段階から片手ずつ暗譜をしてしまうことです。そして、片手ずつ暗譜により Presto で弾けるようにしてから、両手でゆっくりと合わせ始めます。
両手でテンポを上げるときには、ごく短い単位に区切って速い速度で弾く練習をし、ピカピカにした部分部分をつなぎ合わせて長くする方法をとるといいでしょう。
· 18. プロムナード
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、曲頭)

オクターヴユニゾンでのバランス調整。上のラインと下のラインのどちらを強調するかで色彩が大きく変わります。作曲家の指定が mf でも、その中でのバランスは奏者の判断に任されています。
演奏のポイント:
・オクターヴの上下どちらを強調するか検討
・奏者の個性が出る部分
詳細な解説記事はこちら
【ピアノ】音色を操る:表現力と楽曲理解を深めるヒント集
「‣ 11. 和音の響きを際限なくする方法」
· 20. ペリシテ人と戦うダヴィッド同盟の行進
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、曲頭)

自信たっぷりに堂々と響かせたい行進なので、8分音符の動きがスタッカートのようになってしまわないように注意が必要です。それぞれの8分音符にテヌートがついているイメージで弾いてください。各小節の3拍目から次の小節へのつながりを意識して、1小節1小節1小節にならないよう、注意しましょう。
加えて、左手の内声にはところどころメロディックなラインが隠されているので、それらの動きをよく聴いて演奏することが重要です。
‣ 子供の情景 Op.15
· 1. 見知らぬ国
「子供の情景」の冒頭を飾る第1曲。ブルグミュラー中盤程度から挑戦できる技術レベルで、シューマンが描く子供の心の世界への入り口となる作品です。3連符伴奏の柔らかな音色作り、2小節単位のフレージング、5-6小節のタイに込められた作曲意図など、細部に宿る表現のポイントを解説。特に14小節目のフェルマータの解釈では、クレシェンド記号の延長線上にある音楽の流れを重視した演奏法を提案しています。
詳細な解説記事はこちら → 【ピアノ】シューマン 「見知らぬ国」演奏完全ガイド
· 7.トロイメライ
「子供の情景 Op.15」の中でも最も有名な第7曲。ブルグミュラー修了程度から挑戦できる技術レベルながら、シューマン特有の変則的な拍感覚や詩的な表現が求められます。全24小節が8小節×3の大楽節で構成され、同じ音型の反復を和声変化で彩る精巧な作り。ペダリングの工夫、14小節目のクライマックスへ向けたエネルギー配分など、演奏上の具体的な注意点があります。
詳細な解説記事はこちら → 【ピアノ】シューマン 「トロイメライ」演奏完全ガイド
‣ 幻想曲 Op.17
· 第1楽章
譜例(PD作品、Finaleで作成、77-79小節)

1836-38年作曲の大作。片手で弾くアルペッジョを含む部分は、両手で分担するとソリスティックな性格が失われます。特にアルペッジョが書かれている部分は、片手で弾くことで独特のニュアンスが生まれます。
演奏のポイント:
・ここでのメロディを含む片手の部分は両手で分担しない
・アルペッジョは表現のために書かれたもの(手が届いても省略しない)
・「やさしくするため」ではなく「理想の響きに近づけるため」に弾き方を変える
詳細な解説記事はこちら
【ピアノ】作曲家の意図を実現する運指選択のポイント:楽曲構造に基づく演奏技術論
「‣ 37. 両手で分担した途端に魅力がなくなるパッセージ」
‣ 3つのロマンス Op.28
1839年、シューマンとクララの結婚前年に作曲された3曲からなる作品集。詩的な表現とユーモア、適度な技術的挑戦を兼ね備えた隠れた名作です。第1番は終始分散和音で貫かれた無窮動作品、第2番はタールベルク奏法による美しいカンタービレ、第3番はユーモアとシリアスな表情が交錯する充実した内容を持ちます。難易度はツェルニー30番中盤〜40番修了程度。
演奏のポイント:
第1番:オクターヴのバス音を叩かず、低音同士の響きのつながりを意識
第2番:メロディより高い音域で動く伴奏は、主旋律を邪魔しないよう注意
第3番:リズム重視の部分とウタ重視の部分の性格の差を明確に表現
詳細な解説記事はこちら → 【ピアノ】シューマン「3つのロマンス Op.28」特徴と演奏のヒント:中上級者向け
‣ ユーゲントアルバム(子どものためのアルバム) Op.68
· 1. メロディ
メロディラインの動きを視覚化することで、音楽のエネルギーの流れを理解する良い教材です。マーカーで音の上がり下がりを色付けすることで、段階的な音域の上昇や、フレーズごとの頂点が明確になります。
作曲家がクレッシェンドやデクレッシェンドを書いていなくても、メロディの自然な要求に応じて多少のニュアンスをつけることが重要です。
演奏のポイント:
・メロディの動きに沿って音量を調整(上行→膨らませる、下行→おさめる)
・段階的に上がる音型では、各段階で少しずつ大きく
・真っ平な無表情にならないよう、自然なニュアンスを
詳細な解説記事はこちら → 【30秒で分かる】初心者でもできる楽曲分析方法① ~メロディラインの起伏を視覚化する~
・大人のための独学用Kindleピアノ教室 【シューマン ユーゲントアルバム より メロディー】徹底分析
· 2. 兵士の行進
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、17-22小節)

団子和音でまとめられた中に複声部構造が隠れている好例。声部の連結を見抜く力を養う教材として有効です。
演奏のポイント:団子和音の中の声部連結を意識(マーカーの書き込み参照)
詳細な解説記事はこちら
【ピアノ】楽曲分析が深まる、エバーグリーン作品の選び方と実践例
『‣ シューマン「兵士の行進」のワンポイント分析例』
・大人のための独学用Kindleピアノ教室 【シューマン 兵士の行進】徹底分析
· 4. コラール
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、曲頭)

後踏みペダルの習得に最適な教材。2分音符主体のゆったりした進行で、ペダルのタイミングを明確に意識できます。
演奏のポイント:
・発音後、4分音符ぶん遅れてペダルを踏む練習
・前の音の残響を拾わないクリーンなサウンドを目指す
・テンポがゆるやかなので初心者でも取り組みやすい
詳細な解説記事はこちら
【ピアノ】ダンパーペダル 完全ガイド:音楽表現を豊かにする実践的ヒント集
「‣ 2. 後踏みペダルへの第一歩:感覚をつかむトレーニング」
· 6. 哀れな孤児
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、6-8小節)

上下段の声部連結のまたがりを学ぶ好例。大譜表での記譜特有の注意点を理解できます。
演奏のポイント:
・矢印で示した、段をまたぐ声部の連結を見落とさない
・ラインで示されていなくても音のつながりを意識
・重要なラインが音楽的に途切れないよう表現
詳細な解説記事はこちら
【ピアノ】上下段をまたぐ書法3つ:音楽性を損なわない譜読み方法
「‣ 2. 上下段の声部連結のまたがりを見抜く」
・大人のための独学用Kindleピアノ教室 【シューマン 哀れな孤児】徹底分析
· 8. 勇敢な騎手
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、楽曲全体)

sf の解釈について深く考察できる作品。アーティキュレーションの強調としての sf の役割を理解することで、演奏解釈が明確になります。すべての sf がスラー始まりの音に書かれ、配置が小節頭に限定されている点が特徴的です。
演奏のポイント:
・sf は2音ひとカタマリのスラーというアーティキュレーションの強調
・1小節1つでとる意識
・楽譜の配置から演奏解釈を導く分析的アプローチ
詳細な解説記事はこちら → 【ピアノ】シューマン「勇敢な騎手」のsfの解釈と演奏法:楽曲分析からのアプローチ
· 10. 楽しき農夫
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、9-14小節)

9-14小節が難所となる約40秒の短い作品。運指の工夫により、手の横移動を最小限にしてミスタッチを減らせます。難易度はブルグミュラー25の練習曲入門程度。
演奏のポイント:
・11小節目の右手跳躍は和音でポジションをつかむ予備練習が効果的
・フレーズは③へ向かう方向性を意識(①の入りが大き過ぎないように)
・13小節目の右手パートなど、4分音符と8分音符の長さを明確に区別
・テンポは速くても♩=112まで(「焦っている農夫」にならないように)
詳細な解説記事はこちら → 【30秒で分かる】シューマン「楽しき農夫」の難所対策! ~ユーゲントアルバム Op.68-10 弾き方のポイント~
· 11. シチリアーナ
複合三部形式の典型例として優れた教材。楽曲構造、メロディの規則性、構造的メリハリ、似た文脈での差異など、多角的な分析が可能です。
・A(1-24小節):主楽節群
・B(25-36小節):中間楽節群
・A’:ダ・カーポによる主楽節群の再現
演奏のポイント:
・複合三部形式(A-B-A’)の構造を明確に理解したうえで弾く
・似ているフレーズこそ、その微妙な違いに注目する
・違いを意識することで、楽曲の構造が聴き手に伝わりやすくなる
詳細な解説記事はこちら → 【ピアノ】シューマン「ユーゲントアルバム Op.68-11 シチリアーナ」の詳細分析
· 12. サンタクロース
三部形式の楽節群より成る複合三部形式。セクション毎にリズム、音の形、ダイナミクス、音域の使い方が明確に異なります。全72小節の充実した作品です。
演奏のポイント:
・Aセクション:アクセント位置でダイナミクスを聴かせる音楽
・Bセクション:多声的な書法による表情的なウタの音楽
・曲頭から出てくるくさび形アクセントの位置から、隠れたメロディ「La Do La Do La Do」を抽出
・4小節目の3つの f はファンファーレのような言い切るアクセント
この作品については以下の記事で解説していますので、参考にしてください。
【ピアノ】シューマン「サンタクロース」の楽曲分析:セクション毎の特徴に着目して
· 13. 愛する五月よ
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)

「アーティキュレーションをもらう」という重要な概念を学べる作品。右手パートの特徴的なアーティキュレーションを左手パートが模倣・継承する構造です。
演奏のポイント:
・先行する声部のアーティキュレーションを後続の声部が継承
・ニュアンスを揃えて対話感を表現
・模倣関係は作曲上の意図であることを理解
詳細な解説記事はこちら
【ピアノ】演奏におけるアーティキュレーションの重要性と実践法
『‣ 7.「アーティキュレーションをもらう」という考え方を取り入れる』
· 15. 春の歌
限られた書法に着目する分析手法を学べる作品。楽曲全体で数箇所にしか現れない書法が、構造的転換点に配置されています。音域の使い方やタイを介した役割移行など、高度な作曲技法も学べます。
演奏のポイント:
・両手の音域の離れ具合と近づき具合のコントラストを意識
・タイを介したメロディ→内声、内声→バスという役割移行部分を見つける
・25小節目・41小節目では両手が一体となっていることを意識
詳細な解説記事はこちら → 【ピアノ】シューマン「ユーゲントアルバム Op.68-15 春の歌」の詳細分析
· 16. 初めての悲しみ
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、19-25小節)

対位法的な絡み合いとダイナミクス解釈などを学べる作品。演奏時間約1分30秒、難易度はブルグミュラー25の練習曲入門程度。21小節目から始まる部分が難所となります。
演奏のポイント:
・21小節目からの対位的部分を丁寧に練習
・23-24小節では曲頭のメロディが連続して重なるため、上声だけ強くせず、同等のバランスで
・点線で示されるメロディの入りの音をやや明確に弾いて対位法的特徴を表現
詳細な解説記事はこちら → 【30秒で分かる】シューマン「初めての悲しみ」の難所対策! ~ユーゲントアルバム Op.68-16 弾き方のポイント~
· 19. 小さなロマンス
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、楽曲全体)

補足リズムの技法を学ぶのに最適な作品。わずか6小節を除いて全体が補足リズムで構成され、その多様な使い方を理解できます。
演奏のポイント:
・メロディが伸びている間、伴奏部分で拍を取るように刻む補足リズムを意識
・内声の動きがある箇所(A部分)ではさりげなく聴かせる
・補足リズムのパターン変化(12小節目と14小節目 など)に着目
詳細な解説記事はこちら → 【ピアノ】シューマン「小さなロマンス」に見る補足リズムの分析
· 20. 田舎の歌
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、楽曲全体)

自然なセクション移行技法、隠れたメロディライン、バスラインの声部分けなど、多角的な分析が可能な作品。A-durの穏やかな田園風景を描写します。
・Aセクション:1-16小節
・Bセクション:17-24小節
・A’セクション:25-40小節
演奏のポイント:
・16小節目のメロディA音と17小節目のメロディH音は隠れた音階的上昇ラインとして連続性を保つ
・8分休符で音楽的な意識を途切れさせない
・Bセクションの声部分けされたバスラインは第二の旋律として扱う
詳細な解説記事はこちら → 【ピアノ】シューマン「ユーゲントアルバム Op.68-20 田舎の歌」の詳細分析
· 21. 無題
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、楽曲全体)

対主題の展開方法とストレッタ技法を学べる作品。Bセクションが通常の8小節ではなく10小節に拡張されている点が特徴的です。
演奏のポイント:
・14小節目からの「3音によるアウフタクト的導入」が5つのパターンで展開
・ストレッタ(追迫)的に重ねられる主題群で緊張感と推進力を表現
・拡張部分(14小節3拍目から16小節2拍目まで)では音楽の自然な流れを維持
・対位法的な部分では声部間のバランスに注意
詳細な解説記事はこちら
【ピアノ】アウフタクト(弱起)とは?ピアノ演奏での意味と具体例を徹底解説
『‣ シューマン「ユーゲントアルバム Op.68-21 無題」』
· 24. 収穫の歌
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、楽曲全体)

素材発展の技法と対比表現を学べる作品。Bセクションが10小節に拡張され、特徴的な音型の反復発展が見られます。わずか26小節という短い楽曲ながら、作曲の工夫が随所に散りばめられています。
演奏のポイント:
・16小節目からの特徴的音型の4回反復は、属音(E音)の二重保続音による和声的緊張感を表現
・AセクションとBセクションの明確な対比(ダイナミクス、アーティキュレーション、テクスチャー)
・Bセクション内部の微細な対比(9-10小節のスタッカートvs.11-12小節のスラー)も意識
詳細な解説記事はこちら → 【ピアノ】シューマン「ユーゲントアルバム Op.68-24 収穫の歌」の詳細分析
· 25. 劇場からの余韻
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、楽曲全体)

リズムと音の形を多角的に分析できる作品。Bセクションが15小節という奇数構成で、付点リズムの発展的使用が特徴的です。
演奏のポイント:
・7小節目の付点リズムがBセクションの主要素材へ発展する伏線を意識
・Bセクションでは両手のリズミックユニゾンで明快で力強い印象を表現
・「音の形」の多様性の意識(2オクターヴユニゾン、ff による和音のファンファーレ、10度のハモリ など)
詳細な解説記事はこちら → 【ピアノ】シューマン「ユーゲントアルバム Op.68-25 劇場からの余韻」の詳細分析
· 26. 無題
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、9-13小節)

二重奏の書法とメロディと従属的声部のバランスを学べる作品。特に11-12小節の二重奏や、6小節目からの左手での多声演奏が学習ポイントです。
演奏のポイント:
・10小節4拍目のオクターヴユニゾンは二重奏の開始点として機能
・11小節2拍目からの声部の交叉を意識
・6小節目からメロディとバス音を左手一つで演奏する際、バス音が強過ぎないように
・この際、メロディを不自然に強調せず、前後の流れの中で自然に聴かせる
詳細な解説記事はこちら → 【ピアノ】シューマン「ユーゲントアルバム Op.68-26 無題」の詳細分析
· 36. イタリア水夫の歌
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)

実像の中から出てくるエコーという革新的な音響効果を学べる作品。通常のエコー表現とは異なる、ペダリングによる響きの重層化が特徴です。
演奏のポイント:
・シューマン自身によるダンパーペダル指示を守る
・f による実像の響きの中から pp のエコーが生まれる効果を演出
・通常のエコー(強奏の響きが消えてから弱奏)との表現の違いを意識
詳細な解説記事はこちら → 【ピアノ】ピアノ曲のエコー表現4タイプ:楽曲分析の視点から
‣ アルバムの綴り Op.124
1832年から1845年にかけて作曲された20の小品集。技術的には比較的手の届く範囲でありながら、シューマン特有の詩情豊かな表現を学べる作品集です。ブルグミュラー25の練習曲を修了した程度で取り組める曲が多く、中級へのステップアップを目指すピアノ学習者に特におすすめです。
主要な作品:
Op.124-4「ワルツ」(演奏時間約1分)
上下の音域幅の大きい運動的なメロディが特徴。舞曲特有のアクセント表現が印象的で、アクセント記号やダイナミクスの松葉を正確に表現することが重要です。
Op.124-5「幻想的舞曲」(演奏時間約50秒)
わずか24小節の短い作品で、無窮動的な16分音符の流れが印象的。テンポをできる限り上げてノンストップで弾き切ることで音楽的に聴こえます。
Op.124-6「子守歌」(演奏時間約2分)
終始統一された分散和音伴奏による穏やかな揺れが子守歌らしい雰囲気を作り出します。メロディーとそれ以外の音を明確に区別し、立体的な響きを作ることが重要です。
Op.124-7「レントラー」(演奏時間約1分)
シンコペーションや連続した装飾音の扱い方など、シューマンの他の作品にも見られる特徴が使われています。曲尾の装飾音の連続は極めて軽く演奏します。
Op.124-16「子守歌」(演奏時間約3分30秒)
「アルバムの綴り Op.124」の中で最も有名で親しまれている作品。16分音符を交えた揺りかごのような伴奏が重くならないよう注意し、穏やかながらもAllegrettoのテンポを保ちます。
詳細な解説記事はこちら → 【ピアノ】シューマン「アルバムの綴り Op.124」おすすめ楽曲 5選:初中級者向け
► ピアノソナタ
‣ ピアノソナタ 第2番 ト短調 Op.22
· 第1楽章
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、192-195小節)

以下の記事では、192-195小節を例に、「強弱と同時にフレーズも示すデクレッシェンド」の演奏テクニックを解説しています。16分音符4音でひとかたまりの音型に書かれたデクレッシェンドを、各4音ワンアクションで処理する実践的なコツを紹介。高速で連続するデクレッシェンドを、4音でひとかたまりのニュアンスを残しながら演奏しやすくする方法を学びましょう。
詳細な解説記事はこちら
【ピアノ】譜読み力を劇的に向上させるための完全ガイド:基礎から応用まで
「‣ 60. 強弱と同時にフレーズも示すデクレッシェンド」
· 第2楽章
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、曲頭)

以下の記事では、第2楽章冒頭を例に、楽譜から突然ニュアンスが省略された際の「simile(同様に)」判断の方法を解説しています。判断の鍵は「直後の音楽(曲想)がどうなっているのか」。リズム、音の厚さ、曲想の変化を観察することで、作曲家の意図を正確に読み取る力を養えます。様々な作品で応用できる楽譜解釈の基本的視点を学びましょう。
詳細な解説記事はこちら
【ピアノ】楽譜の「ウラ」を読み解く譜読みの技術と心構え
「‣ 9. simileか否かの見分け方」
► 終わりに
シューマンの作品には、独特の音楽語法と表現技法が詰まっています。
本記事では、実践的な演奏アプローチを紹介していますが、これらはあくまでも一つの解釈として捉えていただければと思います。
今後も新しい作品や演奏のヒントを追加していく予定ですので、定期的にご確認いただければ幸いです。
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