【ピアノ】ロマンティックなマイナー上級ロシア作品 3選
► はじめに
ロシア音楽の魅力は多岐に渡りますが、特にピアノ作品においては、メロディアスで哀愁を帯びた旋律と、華麗な技巧が見事に融合した名作が数多く生み出されています。
本記事では、ツェルニー40番修了程度の技術から挑戦できる、比較的マイナーなロマンティックで美しいロシアのピアノ作品を3曲紹介します。どの作品も演奏時間は5〜6分程度で、演奏発表会でも映える名曲ばかりです。
► 厳選した3つの作品
‣ グリンカ=バラキレフ「ひばり」
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)
出版年:1872年
演奏時間:約5分半
難易度:ツェルニー40番修了程度
作品概要
ミハイル・グリンカの歌曲集「サンクト・ペテルブルクとの別れ」より第10曲「ひばり」(The Lark)を、ミリイ・バラキレフがピアノ独奏用に編曲した作品です。
原曲に忠実な編曲というより、原曲のメロディを用いたパラフレーズ作品として仕上がっています。哀愁を帯びた美しい旋律と装飾的な華麗さを併せ持ち、コンパクトな演奏時間でありながら深い印象を残します。
演奏のポイント:
・速いパッセージをleggiero(軽やかに)で弾くテクニックが重要
・原曲の歌詞の内容を理解することで、より深い楽曲理解が可能
・メロディラインの歌心を大切に、装飾音符も軽く自然に組み込む
推奨楽譜
・グリンカ=バラキレフ「ひばり」 Schirmer
‣ リャードフ「舟歌 Op.44」
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)
出版年:1898年
演奏時間:約5分半
難易度:ツェルニー40番修了程度
作品概要
アナトーリ・リャードフによる美しい舟歌で、「いかにもピアノが得意な人物が作曲した」と感じられる作品です。音符の数は多いものの、手の動きとして無理のない書法で作られており、ピアニスティックな魅力に溢れています。
美しい旋律線と広い音域にわたるアルペジオ伴奏が印象的で、ショパンやラフマニノフの作品が好きな方には特におすすめです。中間部以降は音の密度が高くなるため、各音の役割分担の把握が音楽的な演奏のためには欠かせません。
演奏のポイント:
・聴かせるべき音と隠すべき音の弾き分けを徹底する
・中間部の密度の高い箇所でも、重要なラインを明確に浮き立たせる
・舟歌特有の揺らぎのあるリズム感を大切に
推奨楽譜
・リャードフ ピアノ作品選集 ペータース社
‣ ブルーメンフェルド「左手のための練習曲 Op.36」
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)
出版年:1905年
演奏時間:約6分
難易度:ツェルニー40番修了程度(最低取り組み難易度目安)
フェリックス・ブルーメンフェルドによる左手独奏のための作品で、「練習曲」というタイトル以上の内容的充実度を持つ美しい楽曲です。
冒頭はタールベルク的奏法(メロディを中間部に配置し、その上下に伴奏部を織りなす手法)で始まり、シンプルな美しいメロディが浮かび上がります。中間部では劇的な表現と充実したカデンツァが展開され、再びタールベルク的奏法が回帰して、消え入るように美しく楽曲を閉じます。
終結部の和声がグリーグの「抒情小品集 第3集 春に寄す op.43-6」を思わせることから、この楽曲自体がどことなく春のイメージを思い浮かばせます。
演奏のポイント:
・左手のみですべての要素を表現するバランス感覚
・タールベルク的奏法での声部の弾き分け
・手の横移動における時間の使い方とフレージング
推奨楽譜
Schirmer版の「Piano Music for One Hand A Collection of Studies, Exercises and Pieces」に収載されています。
この楽譜集は、入門から上級まで幅広いレベルの左手独奏作品を収録しており、左手のみの演奏を学ぶうえで非常に有用な教材となっています。
► 作品比較表
曲名 | テン ポ |
特徴 | 重点練習ポイント |
---|---|---|---|
グリンカ=バラキレフ ひばり | 中程度 | 原曲のメロディを用いたパラフレーズ作品 | 速いパッセージをleggieroで弾けるように |
リャードフ 舟歌 Op.44 | 中程度 | いかにもピアニストが作曲したことが伝わる作品 | 聴かせるべき音と隠すべき音の弾き分け |
ブルーメンフェルド 左手のための練習曲 Op.36 | やや速め | 左手のみでの演奏する作品 | 手の横移動における時間の使い方 |
► 終わりに
これらの作品は、いずれも豊かな情感と技巧的な充実度を併せ持つ名作です。ツェルニー40番修了程度の技術があれば挑戦でき、それぞれ異なる魅力と学習ポイントを持っています。どの作品も演奏発表会で取り上げるのに効果的で、聴衆に深い印象を与えることでしょう。
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