【ピアノ】L・H・フィリップ「ピアノ演奏のテクニック 音色・タッチ・フレージング・ダイナミクス」レビュー

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【ピアノ】L・H・フィリップ「ピアノ演奏のテクニック 音色・タッチ・フレージング・ダイナミクス」レビュー

► はじめに

 

L・H・フィリップの「ピアノ演奏のテクニック 音色・タッチ・フレージング・ダイナミクス」は、優れた教育者として知られている著者の豊富な知識と経験を反映した一冊。定番書ではありませんが、良質な内容を含んでいるので、短期集中学習でピアノの演奏技術を体系的に深化させたい方には一読をおすすめします。

 

・出版社:シンフォニア
・邦訳初版: 2008年
・ページ数:125ページ
・対象レベル:中級~上級者(初心者でも読める部分はある)

 

・ピアノ演奏のテクニック 音色・タッチ・フレージング・ダイナミクス   著 : L・H・フィリップ  監修:星出雅子 訳 : 村上信行 / シンフォニア

 

 

 

 

 

 

► 特徴と内容

 

本書は表現技法・基本奏法に関する幅広い項目をカバーしていますが、各章毎にコンパクトに凝縮されており、忙しい方にも短期間で有益な情報を吸収できるようになっています。

以下のような特徴があり、ピアノ学習者にとって有用な一冊と言えるでしょう:

豊富な譜例と図例:
解説において、譜例や図解が豊富に使われており、視覚的に理解しやすくなっています。例えばフォームの説明では、リヒテルやボロフスキーなど様々な手の大きさを持ったピアニストの写真が例示され、あらゆる学習者にとって腑に落としやすくする工夫がされています。

基礎から高度な技術まで:
座る姿勢や手の位置といった基本的なテクニックから、フレージング、ダイナミクス、ルバートなどといった表現技法まで、段階を踏んで解説されています。特に「音階を九九の掛け算のようにマスターしなければならない」という言葉は、基礎の重要性を再認識させてくれます。

一貫した演奏技法の強調:
フィリップ氏のアプローチはテクニックの一貫性を重視しており、例えば「親指」の重要性と運用方法など、実践的なアドバイスが目立ちます。

独特な付録:
本書の特徴として、付録が独特なことが挙げられます。シューマンやショパンなど、巨匠の名言が多く収められており、深い洞察が得られます。さらに、「鍵盤楽器の名手と弟子の系統図」が載っており、ピアノの歴史や教育の流れを一目で把握できるため、音楽史にも興味がある方には価値ある資料となるでしょう。

 

► おすすめする理由

 

本書はその内容の濃さに対して非常にコンパクトで、「短期間」でピアノのテクニックや表現技法を深めたい方にとって非常に有用です。特に、演奏技術の基礎をすでに理解している中級者以上の方にとっては、集中的に学べる良書です。

一方、特定のテクニックを徹底的に掘り下げる書籍ではなく、あくまで「一通りの内容を学ぶ」「視野を広げる」といった目的に適しています。

 

► 特徴的な抜粋

 

(以下、抜粋)
バッハの時代以前と彼の存命中には、他の指が使えない時、例えば大きく手を広げなければならない時にだけ親指が使われました。バッハは例外で、黒鍵でも白鍵でも自由に親指を使った最初の人です。
(抜粋終わり)

 

(以下、抜粋)
九九の掛け算のように音階をマスターしなければなりません。なぜならば、これがマスターされれば、曲のフィンガリングがすべての調で自然に生まれるからです。奏者にとってこれ以上の準備はなく、耳のためにも有効な訓練です。
(抜粋終わり)

 

(以下、抜粋)
間違った音に気付く以上に多くのことを自分自身に問いただす必要があることを忘れてはなりません。
(抜粋終わり)

 

(以下、抜粋)
個々のフレーズに磨きをかける努力をしなければ、時間の浪費です。
(抜粋終わり)

 

► まとめ

 

「ピアノ演奏のテクニック 音色・タッチ・フレージング・ダイナミクス」は、中級者以上のピアノ愛好者にとって非常に貴重な教材です。特に、演奏技術を体系的に学び直したい方や新たな視点で演奏を深めたい方にぴったりです。名言や系統図など、ピアノの歴史や教育にも触れることができるため、ピアノ演奏の背景を学びながら実践的なテクニックも身につけられます。

短期集中で学べるこの書籍を是非手に取ってみてください。

 

・ピアノ演奏のテクニック 音色・タッチ・フレージング・ダイナミクス   著 : L・H・フィリップ  監修:星出雅子 訳 : 村上信行 / シンフォニア

 

 

 

 

 

 


 

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この記事を書いた人
タカノユウヤ

ピアノ音楽(ピアノソロ、ピアノが編成に入った室内楽 など)に心惹かれ、早何十年。
ピアノ音楽の作曲・編曲が専門。
物書きとしては楽譜だけでなく文章も書いており、
音楽雑誌やサイトなどでピアノ関連の文筆を手がけています。
Webメディア「大人のための独学用Webピアノ教室」の運営もしています。
受賞歴として、第88回日本音楽コンクール 作曲部門 入賞 他。

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