【ピアノ】カリンニコフの2つの「悲歌」:初級から中級まで楽しめる名曲ガイド

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【ピアノ】カリンニコフの2つの「悲歌」:初級から中級まで楽しめる名曲ガイド

► はじめに

 

カリンニコフ(1866-1901)は、34歳の若さで亡くなったロシアの作曲家です。ピアノ音楽に関しては、全音ピアノピースでラインナップに加えられている「悲歌(Chanson triste)」はある程度知られていますが、実は「悲歌」というピアノ作品が2作品あることをご存知でしょうか。これらの作品は、初級者から中級者まで、それぞれのレベルで演奏を楽しめる名曲です。

本記事では、両作品の特徴、練習のポイント、推奨レベルを詳しく解説します。

 

※カリンニコフはカリニコフとも表記されることがあります。

 

► 2つの「悲歌」比較表

 

項目 悲歌(Chanson triste) 悲歌(Elegie)
作曲年 1892年 1894年
通称 悲しい歌
演奏時間 約2分30秒 約6分30秒
推奨レベル ブルグミュラー25番中盤程度〜 ツェルニー40番中盤程度〜
技術的特徴 装飾音と5拍子の弾き方 オクターヴの連続、後半部における連続する高速スケール
表現の特徴 5拍子(3+2)の流れるようなリズム 中間部の大きな場面転換
発表会での効果 短時間でありながらも印象的 場面転換を明瞭に表現できれば印象的
練習のしやすさ 短い曲尺で練習しやすい 和音は多出するが、極端な手の大きさは求められない
露出 全音ピアノピースで広く知られる 数人のピアニストが録音を発表

 

► 悲歌(Chanson triste)

‣ 魅力とポイント

 

譜例(PD作品、Sibeliusで作成、曲頭)

カリンニコフ「悲歌(Chanson triste)」冒頭部分の楽譜。

「悲しい歌」として親しまれるこの作品は、わずか2分半ほどの演奏時間ながら、シンプルな音遣いとロシア民謡的な美しいメロディを持つ作品です。カリンニコフ自身はあまり知られていない作曲家ですが、この楽曲は全音ピアノピースのラインナップに入っていることから、しばしば演奏されています。

 

演奏しやすい3つの特徴:

1. 手の大きさを問わない技術設定

手の大きさに関係なく無理なく演奏できます。広い音程の和音は最小限(最大1オクターヴ)で、それも限られた使用回数なので、安心してチャレンジできる設計になっています。

2. 5拍子ながらも規則性あり

初級〜初中級の方にはあまり馴染みがないであろう5拍子の作品ですが、終始「3+2」で進んでいくので、過度なハードルを感じずに演奏できるでしょう。

3. 短い曲尺による集中力の維持

2分半という演奏時間で、全音ピアノピースでは2ページしかありません。したがって、限られた時間で効率的に仕上げることができ、集中力を維持しやすいのが特徴です。

 

ブルグミュラー25の練習曲中盤程度の学習段階から挑戦できるでしょう。

 

‣ 練習のヒント

 

拍子の表現
「3+2」の5拍子ですが、「3・2」と刻んで分割してしまわず、一息で演奏することが大切です。

クライマックスの表現
クライマックスの16小節目を活かすために、その前のmfで大きくなり過ぎないよう注意しましょう。

セクションの差別化
17小節目の再現以降もオクターヴ演奏が出てきますが、曲尾まで pp が続くので、不注意に大きくならないよう気をつけましょう。

 

‣ おすすめ楽譜

 

国内版では全音ピアノピースで入手できます。

 

 

 

 

 

また、「カリンニコフ ピアノ小品集 / Compozitor」では、カリンニコフのピアノ独奏曲7曲と連弾編曲1曲が収録されており、次項目で紹介する「悲歌(Elegie)」も含まれています。

 

► 悲歌(Elegie)

‣ 魅力とポイント

 

譜例(PD作品、Sibeliusで作成、曲頭)

カリンニコフ「悲歌(Elegie)」冒頭部分の楽譜。

あまり知られていない作品ですが、舟歌(バルカローレ)的な魅力を持っています。約6分半の演奏時間で、以下の魅力を味わえます:

1. メランコリックな主題とその発展

上記の「悲歌(Chanson triste)」が美しい旋律を主体とするのに対し、この「悲歌(Elegie)」はよりメランコリックで大人っぽい主題が特徴です。それが様々な技巧的表現やシンコペーションなどを使って発展していきます。

2. 技巧的な面白さ

オクターヴの連続、和音の連続、高速スケールの連続、諧謔的なアーティキュレーションなど、様々なテクニックや表情が登場するため、技術的な面白さがあります。高速スケールが出てくる後半部は、ショパンの「ノクターン 第20番 嬰ハ短調 レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ(遺作)」を思わせる音遣いです。

3. 演奏発表会での存在感

上記のような技巧的な面白さに加え、中間部からは大きく曲想が変わるため、場面転換を明瞭に表現できれば印象的なステージになるはずです。

 

ツェルニー40番中盤程度の学習段階から挑戦できるでしょう。

 

‣ 練習のヒント

 

フレーズの表現
非常に断片的で息の短いメロディの連続ですが、「一つ一つ一つ」にならず、音楽を横へ引っ張る意識を持つことが重要です。

クライマックスの表現
ff が5回も出てきますが、最後の ff が真のクライマックスになるよう、すべてがフルマックスにならないよう配慮しましょう。

セクションの差別化
中間部の場面転換部分では、テンポ変化とアーティキュレーションに注意し、明瞭に場面を変えましょう。

 

‣ おすすめ楽譜

 

「カリンニコフ ピアノ小品集 / Compozitor」にて、カリンニコフのピアノ独奏曲7曲と連弾編曲1曲が収録されています。

 

► 終わりに

 

カリンニコフの2つの「悲歌」は、それぞれ異なる魅力と難易度を持つ作品です。どちらの作品も、ロシア音楽特有の美しさと哀愁を味わえる貴重な作品です。レベルに応じて選択し、演奏に挑戦してみてください。

 


 

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