【ピアノ】演奏の「弾き崩し」対策5選:本番で実力を発揮するために
► はじめに
・本番にピークを持っていくのが難しい…
・今まで弾けていたところが本番直前に弾けなくなる…
このような悩みを抱えているピアノ弾きは少なくありません。
本記事では、本番で最高の演奏をするための具体的な対策をお伝えします。
【本記事のポイント】
・本番直前に新しいアプローチの練習方法は取り入れない
・本番直前に奏法の根本的な修正は行わない
・本番直前に大きく解釈を変更しない
・本番直前に通し練習をやりすぎない
・本番当日に机鍵盤で演奏しない
►「弾き崩し」について
練習を重ねていく中で、本番前に演奏の安定感が失われていく現象を「弾き崩し」と呼びます。
これは、ピアノに限らずフィギュアスケートなど、他の演技系の分野でもよく見られる課題です。
本番にピークを持っていくことの難しさは、多くのパフォーマーが直面する共通の課題。
では、本番前の「弾き崩し」を防ぐために、具体的にどのような対策が効果的なのでしょうか。
► 失敗しない、本番前の「弾き崩し」対策 5選
‣ 本番直前に、新しいアプローチの練習方法は取り入れない
「新しいアプローチ」を取り入れることは、十分な練習時間がある時期には効果的ですが、それは必ず「一時的な不安定さ」を伴います。
本番直前は、新しい練習方法を試すのではなく、「今までずっと取り組んできた弾きこみのやり方」を継続することが重要です。
焦って新しい方法を試しても、わずかな時間で劇的な上達は望めません。
むしろ、今までの方法で安定感を保つことを優先すべき。
これは演奏面だけでなく、解釈面でも同様です。
「本番直前に、今まで聴いていなかったピアニストの音源を聴く」ことも避けましょう。
※弾きこみ:楽曲を繰り返し練習して、安定して演奏できる状態へ持っていくこと
‣ 本番直前に、奏法根本のテコ入れは行わない
「身体の使い方」や「音の出し方」といった基本的な技術の修正(テコ入れ)は、本番直前には避けるべき。
こうした根本的な変更は、必ず一時的な不安定さを生みます。
奏法の基本的な見直しは、本番期間を避けて計画的に行うことが絶対に必要です。
これは単なる「弾き崩し」とは異なりますが、本番前に避けるべき重要な事項として覚えておきましょう。
‣ 本番直前に、大きく解釈を変更しない
楽曲の解釈を大きく変更するのは、修正のための十分な時間が残されている「それまでの弾きこみ期間」に行うべきです。
例えば、本番直前に大きくテンポを上げると、以下のような問題が起きやすくなります:
・弾く時の感覚が大きく変わり、解釈に迷いが生じる可能性がある
・弾きこみが間に合わず不安定になる
・無理な弾きこみによって弾き崩してしまう
このことからも、本番に至るまでの「弾きこみ期間」がいかに重要であるかが分かります。
‣ 本番直前に、通し練習をやりすぎない
「通し練習」は、我々が考えている以上に大きな集中力と体力を必要とします。
過度な通し練習は、かえって弾き崩しの原因となりかねません。
推奨される練習方法:
・1曲につき1日1回まで通し練習を行う
・残りの時間は部分練習に充てる
・通し練習時はICレコーダーで録音し、質を高めることに集中する
電子ピアノでヘッドフォンを使用している場合は、機器の録音機能を活用するのも効果的です。
‣ 本番当日に、机鍵盤で演奏しない
控え室での待ち時間に、イヤフォンで録音を聴きながら机の上で指を動かすことは推奨されません。その理由は:
・「机」と「鍵盤」では感触が全く異なる
・指の動きだけを確認することになり、音色への意識が薄れる
・打鍵速度や打鍵角度は実際の鍵盤がないと確認できない
「弾き崩し」には、雑な弾き方による良くないクセの定着も含まれます。
本番当日は以下のような過ごし方を推奨します:
・リラックスする時間を確保する
・必要に応じてイメージ練習を行う
なお、机鍵盤を使う方の多くは、普段から鍵盤の「離鍵(リリース)」を意識せずに練習している可能性があります。
► 本番に向けて:一進一退を受け入れる心構え
譜読みの段階では、新しく弾ける部分が増えていく目に見える進歩が実感できます。
しかし、弾きこみを重ねていく中では:
・弾けていた箇所が弾けなくなったり
・上手くいったり失敗したりを繰り返す部分が出てきたり
という一進一退の状態に直面します。
「100パーセント大丈夫な状態になるための練習」は存在しないことを理解しましょう。
それでも、ここで諦めずに本番まで練習を継続することが重要です。
練習を止めてしまうと、「本番まで出来ることをやり切った」という自信すら持てなくなってしまいます。
► おわりに
弾き崩しへの不安は常に存在するものです。しかし、本記事で紹介した注意点を守っている限り、実際に深刻な弾き崩しに陥ることは稀です。
本番にピークを持っていくことは確かに難しい課題ですが、それを乗り越えて成功を収めたときの喜びは格別です。
この記事の内容を参考に、次の本番へ向けて「弾き崩しなし」の練習を重ねていきましょう。
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