【ピアノ】共通部分の比較分析:J.S.バッハ「行進曲 BWV Anh.127」を例に
► はじめに
本記事では、J.S.バッハの「アンナ・マクダレーナ・バッハの音楽帳 第2巻 行進曲 BWV Anh.127」より共通部分(5-8小節 および 23-26小節)を取り上げて比較分析し、その音楽的特徴と構造的な魅力を紐解いていきます。
► 実例分析:J.S.バッハ「行進曲 BWV Anh.127」
‣ 楽曲の特徴と構造
J.S.バッハ「アンナ・マクダレーナ・バッハの音楽帳 第2巻 行進曲 BWV Anh.127」
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、楽曲全体)
1. Aセクション(1-10小節)
・4+4+2の構成
・最初の4小節:主題の提示
・次の4小節:第4小節目に出てきた3連符要素の引用発展
・最後の2小節:セクションの締めくくり
2. Bセクション(11-22小節)
・4+4+4の構成で、合計12小節
・11-14小節と19-22小節:似た音楽的要素(和声進行、リズム、音の使い方)を共有
・15-18小節:橋渡し的な役割
3. A’セクション(23-28小節)
・最初のAセクションの後半部分(5-10小節)のみを使用
・4+2の構成
・効果的な曲の締めくくり
‣ 詳細な比較分析:変奏と発展
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、5-8小節 および 23-26小節)
5-6小節の反復として7-8小節が変奏された形で提示されます。
7-8小節で変奏された点:
・3連符の音の方向が上行形に
・和音の導入
・広い音域の使用によるメロディ線のエネルギー増大
この5-8小節を、対応する23-26小節と比較してみましょう。
メロディのリズムが対応しているのは、7-8小節(5-8小節の後半部分)と23-24小節(23-26小節の前半部分)であり、対応位置がズレていることが分かります。
25-26小節は23-24小節の発展であり、5-8小節には出てこないリズム。つまり、5-8小節と23-26小節を合わせると、メロディに関しては3パターンのリズムが出てきていることになります。A’だからと言って、単なる移調した繰り返しになっているわけではありません。
(再掲)
追加考察:
・「5-6小節→7-8小節」の繰り返しよりも、「23-24小節→25-26小節」の繰り返しの方が変奏感が強い
→ 入りの部分が似ているうえで、その後が変化しているから
・25小節目の高いG音のところは、流れからすると連打が続くように思わせる音
→ ささいな意外性だが、こういった部分が音楽をささいに面白くしている
・25小節目の左手には8分音符が出てくるが、これは7小節目には出て来なかった特徴
→ これに関しては、前後関係から見てもさほど大きな意図は読み取れない
音楽的特徴の深い考察
この短い行進曲には、J.S.バッハの工夫を示すいくつかの特徴があります:
・単純な繰り返しを避け、常に新しい要素を導入
・セクション間の有機的な関連性
・小さな音型変化による音楽的緊張感の創出
► 学びのポイント
この分析から学べる重要なポイントは、たとえ初級用の小品であっても、巨匠の作った音楽は「単なる音の並び」ではなく、緻密に構築された芸術的表現であるということです。
・小さな音型変化の重要性
・セクション間の関連性と発展
・リズムと音型の創造的な使用
► まとめ
本作品は、わずか28小節の中に豊かな音楽的要素を詰め込んだ小品です。音楽を深く聴き、分析することで、作曲家の音楽的知性を感じ取ることができるでしょう。
さらに学びを深めたい方へ:
・「楽曲分析学習パス」で分析の基本を学びながら、さらに深い理解を目指す
・楽譜を手に取り、実際に分析してみる
・他のJ.S.バッハ作品との比較を試みる
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