【ピアノ】J.S.バッハ インヴェンション 第2番 BWV773 全運指付き楽譜と練習のコツ
► はじめに
本記事では、J.S.バッハ「インヴェンション 第2番 BWV773」に取り組む方のために、「全運指」を付けた楽譜を提供し、練習のヒントも解説していきます。
►「全運指」の解説
この楽曲はパブリックドメインです。運営者が浄書ソフトウェアで作成した楽譜を使用しています。
運指について重要な注意点
この運指は一例です。手の大きさや個人差に合わせて調整してください。また、どのようなアーティキュレーションを付けるのかによっても適切な運指は変わります。お手持ちの楽譜の内容と照らし合わせながら、必要に応じて参考にしてください。
► 具体的な練習のヒント
‣ 適切なテンポ設定
おすすめテンポ:
♩= 52
(ヘルマン・ケラー提案)
なぜ、このテンポが良いのか:
・初〜中級者でも挑戦できる速度設定
・作品の持つカノン風の静的印象が活きる
・プラルトリラーを美しく演奏できる余裕がある
‣ 本楽曲でよくある問題点と対策
本楽曲で最も問題となるのは、左右の手が重なってしまう部分が何箇所も出てくることです。以下、個別に解決策を見ていきましょう。
· 13-14小節の手のぶつかり
譜例(13-14小節)
問題点:
左手パートのプラルトリラー(装飾音の一種)が書かれている箇所で、両手が重なってしまう
解決策:
市田儀一郎氏推奨の変則的なプラルトリラー(実際の演奏でよく聴かれる方法)
譜例(13-14小節 左手のプラルトリラーの演奏例)
上記「全運指」も、この弾き方をする場合の運指を付けておきました。
代替案:
バロック時代の演奏慣習に従い、装飾音を省略することも可能です。当時の装飾音は演奏家の裁量に任されていた部分が大きく、現代でも省略している演奏家が見られます。
· 18小節目の手のぶつかり
譜例(17-18小節)
問題点:
18小節3拍目で、両手が重なってしまう
解決策:
右手で弾く「Es音」と左手で弾く「G音」を左右逆の手で取るやり方をしている奏者もいますが、各声部のニュアンスが分かりにくくなってしまいます。そこで、譜例で示した運指を使って、通常通り演奏することをおすすめします。ポイントは:
・18小節2拍目辺りから、右手は奥へ、左手は手前へ動かしながら弾く
・18小節3拍目の左手のG音は、弾いたら早めに離鍵し、直後の右手のG音が鳴り損ならないように配慮する
18小節2拍目辺りに、右手「sopra(上に)」と左手「sotto(下に)」を書き込んでおくといいでしょう。
· 19小節目の音の省略に伴う不揃い
譜例(19-20小節)
問題点:
19小節1拍目でF音が左右の手で重なり、声部のバランスが崩れやすい
解決策:
こういった時には、ニュアンスを整えるために「より重要なパートを弾く手の音は省略しない」のが原則です。しかし、ここでは左右の手のパートはどちらも重要度が高いので、より目立つ右手パートのほうでF音を弾くといいでしょう。
F音を右手で弾いたうえで、録音&チェックをする時に、左手の「Re Fa Mi Fa」がバランスよく聴こえているかをチェックするようにしましょう。
► なぜ、手のぶつかり合う部分が存在するのか
この作品に限らず、ピアノを弾いていると、左右の手が衝突してしまって楽譜通りに弾けないところが時々出てきます。バロックや古典派の作品などで見られます。
これはなぜなのでしょうか。
音楽学で言われている理由の一つは、 「元々、二段鍵盤の鍵盤楽器のために作曲された、もしくはそれを使って作曲した」という背景があるからです。それを現代のピアノで演奏すると、ある部分では手の衝突する部分が出てくるため、技術的な工夫が必要となるのです。
► 終わりに
本記事で紹介した全運指と練習のヒントを参考に、楽曲の奥深さを味わいながら練習してみましょう。
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