【ピアノ】基礎練習を効率的に:コルトーのピアノメトードの活用法
► はじめに
「コルトーのピアノメトード」は、20世紀を代表するピアニスト、アルフレッド・コルトーが考案した練習方法をまとめた教本です。
しかし、同書はすべてに取り組もうとすると、それだけで日が暮れてしまうほどの内容の多さ。
そこで、まずは「適切な抜粋」をおこない、効率よく学習を進めていく必要があります。
► おすすめの練習課題
本記事では、「コルトーのピアノメトード」の中で特に取り組むべきエクササイズを抜粋して、その理由とともに解説していきます。
結論からお伝えすると、筆者がおすすめする練習課題は以下の5曲です。
「4本の指の練習-1本の指を持続(指の均一と独立)No.2a-2e」
権利の関係で譜例は明示できませんが、楽譜をお持ちでない方は一冊手元に置いておくと練習の強い味方になります。
► 練習の特徴と効果
‣ なぜこの練習が重要なのか
この5曲には、2つの重要な特徴があります:
指の独立性向上
・基本的な指の独立性を養う練習
・1本の指を打鍵したまま他の指を動かすという、やや高度な課題
脳の処理能力向上
・「似ているけど少し異なるパッセージ」を「高速」で繰り返すことで頭が混乱する設計
・さらに「1本の指を打鍵したまま」演奏することで、より高度な集中力が必要になる
・ハノンなどの一般的な練習曲にはない特徴
‣ 実践的な効果
レベルアップのためには「基礎練習の中で、頭が混乱した状態を意図的に作り出す」ということが欠かせません。
ハノンは極端な話、考え事をしていても弾けてしまいますが、頭が混乱すると簡単なことでも出来なくなります。
それを出来るようにすることで応用力がつく。
なぜなら、実際の楽曲においては単純ではない中でさまざまなテクニックを求められるからです。
► 実践例:ブルグミュラーのバラード
具体例として、ブルグミュラー25の練習曲 Op.100 より「バラード」を見てみましょう。
譜例(PD作品、Finaleで作成、3-5小節)
この箇所は、一見単純に見えて頭の中は単純では済みません:
・「右手だけだと速く弾ける」
・「左手だけでも速く弾ける」 しかし、
・「両手で合わせると頭が混乱して速く弾けないどころか、両手のタイミングが合わない」
という学習者の悩みはよく耳にします。
つまり、指を速く動かすために必要なのは:
・「指の筋力」だけでなく
・「頭がその状況に慣れていること」 なんです。
► 効果的な練習方法
基礎練習の段階から「頭を混乱させる練習」に意図的に取り組むことで、
実際の楽曲演奏に必要な能力を養うことができます。
上記のコルトーの練習課題では、以下のような応用も効果的です。
「それぞれの手で異なる箇所にアクセントを入れておこなう練習」
これも頭を混乱させる効果的な方法の一つ。
► まとめ
「コルトーのピアノメトード」で特に取り組むべき練習は:
「4本の指の練習-1本の指を持続(指の均一と独立)No.2a-2e」
この5曲に集中して取り組んでみましょう。
この練習を通じて、ハノンをやっているだけでは感じなかった進歩を実感できるはず。
単なる指の独立性だけでなく、実際の楽曲演奏に必要な「頭の柔軟性」も同時に養うことができます。
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