■楽曲分析の基礎 : 小節の「付け足し」「拡大」を見抜こう
♬ 小節の付け足し
具体例を挙げます。
楽曲が変わっても基本的な考え方は応用できます。
ベートーヴェン「ソナチネ Anh5(2) ヘ長調 第2楽章」
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、37-48小節)
譜例(37-48小節)は、
まとまったひとつのかたまりになっています。
今回は詳述しませんが
音楽用語では
このようなひとかたまりを「大楽節」と呼びます。
通常、大楽節は「8小節」で出来ていることが多いのですが、
この譜例の大楽節は12小節もあります。
基本のカタチの8小節に
4小節ぶん付け足された部分があるのですが、
どこが付け足されたのか分かりますか?
こういった付け足しを見抜くのは
身につけるべき
基本的な「楽曲分析(アナリーゼ)」のひとつ。
(再掲)
結論的には、
41-44小節の4小節間が付け加えられた部分です。
そうすると、
大枠の部分というのは
「37-40小節 プラス 45-48小節」で、
結局は
大楽節の基本のカタチ、「8小節」になっています。
試しに、
41-44小節目を省略し、
40小節目から
即、45小節目へつないで
演奏してみてください。
違和感なく成り立つのがわかると思います。
成り立つけれども、
「楽曲全体のバランス」や「音楽的要求」を考慮し
ベートーヴェンは
あえて4小節ぶん追加することを選んだのでしょう。
♬ 小節の拡大
同じ作品から
もう一箇所勉強しましょう。
(49-58小節)
譜例(49-58小節)は、
やはり、まとまったひとつのかたまりになっています。
先ほども書いたように、
大楽節は「8小節」で出来ていることが多いのですが、
この譜例の大楽節は10小節あります。
基本のカタチの8小節よりも
2小節ぶん増えていることになります。
前項の譜例では
「付け足し」で小節数が増えていたわけですが、
この例では
「小節の拡大」で増えているのです。
どこが拡大しているのか分かりますか?
やはり、
こういった拡大を見抜くのも
身につけるべき
基本的な「楽曲分析(アナリーゼ)」のひとつ。
(再掲)
53-56小節に注目してください。
この4小節間は、
ほんらい2小節で済むものを2倍に拡大しています。
仮に2倍に拡大されていなければどうなるのかを
譜例に示しましたので
音を出しながら確認してください。
(原曲の49-58小節を、8小節で表現した例)
もちろん成立するのですが、
これでは原曲に出てくる左手のメロディが
欠落してしまいますね。
(メロディまで圧縮してしまうと、音楽がせわしなくなってしまいます。)
左手のメロディをたっぷりと歌うことも考えると
ベートーヴェンが書いたように
2倍の小節数へ拡大したほうが
都合が良かったのでしょう。
今回取り上げたように、
「小節の付け足し」「小節の拡大」というのは
ありとあらゆる楽曲で登場します。
本記事で解説したような視点で、
② どこが付け足されたり拡大した部分なのかを見抜く
③ 通常のカタチへ戻したとしたらどのようになるのかを考える
この3ステップをこなせるようになると
楽曲のことを深く理解できるので
解釈を施したり
暗譜をしたりする際に
大きく活かすことができるようになります。
ちなみに、
楽曲によっては
「小節の間引き」「小節の縮小」などといった
反対の方向性をもった例もあります。
事例に数多く触れていくことが
自分ひとりで分析できるようになるポイントです。
そのためにも、
まずは本記事の例をマスターしてください。
本記事では「大楽節」についての詳述はしませんでした。
「大楽節」について詳しく学びたい方は
以下のレビューで紹介している書籍を使うことで
もっとも優れた学習効果をあげることができます。
ピアノ演奏に活かせる!参考書「楽式論(音楽之友社)」レビュー
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