【ピアノ】音楽学習を通したライフハック集
► はじめに
音楽学習は単なる技術の習得ではありません。それは毎日を楽しくする試行錯誤の実践でもあります。
本記事では、音楽経験を通じて得られたちょっとしたライフハックをお伝えします。技術だけでなく、心の持ち方や日常の工夫が、音楽人生の幸福度を高めてくれるでしょう。
► A. 人間関係ハック
‣ 1. 楽譜を貸してほしいと言われたときの断り方
「楽譜を貸してほしい」と言われることもよくあるはずです。
何でもかんでも楽譜を貸してほしいと言われるのは、あまり気持ちのいいものではありません。借りたい人物とは違って楽譜の持ち主は自分で身銭を切っているからです。
断り方があります。
「家族で共有して使っているものだから自分の判断で貸すことはできない」と言い張ってください。
よほど図々しい方でない限りは、「じゃあ、家族に許可を取ってくれる?」とは言ってこないはずです。
では、ひとり暮らしの方はどうすればいいのでしょうか。
「今丁度自分が練習している楽曲なので貸せない」と言い張ってください。
そして、「長期スパンで練習している楽曲」ということにしておいてください。またしつこくされるのは嫌ですからね。大事な楽譜なのであれば嘘にはなりません。本当にちょっと練習すればいい。
断りやすくするポイントとしては、原則、はじめから一回も貸さないことです。
何事も最初が肝心で、一度OKを出してしまうと別の曲でもあらゆるときにテイクされてしまう。
継続して求められたくないことははじめから断る。むしろ、はじめから断った方が後から断るよりもハードルは低いことが分かるはずです。
‣ 2. それでも貸してしまった楽譜が返ってこないときの対処法
昔の筆者にも、楽譜をはじめ、貸したモノが返ってこなかった経験はあります。
相手が借りたことを覚えているケースもありますが、借りたこと自体を忘れているケースもあります。どういうことかというと、どこかへしまうことで視界から消えると記憶からも消えてしまうのです。
また、普段から部屋にモノが山積みになっているような人物の場合は、目に見えるところへ出ていても、その他たくさんのモノと同じ扱いになっているケースもあります。
したがって、覚えていないのと同じで一向に返せないわけです。
「貸した楽譜が返ってこなかったときの対処法」はシンプル。
また会うから気まずい、などと気を遣わず、ガーガー言って返してもらってください。
その時に、こういったタイプの人物へ貸してしまった自分に反省し、同時に、相手にも反省させましょう。
こういうのは、クギを刺しておかないと自分が雑に扱われた気がしてずっとモヤモヤが残ります。
「貸してしまった自分に反省する」と書きましたが、つまり、「人にはモノを貸さないのが原則」ということ。余程の信頼関係が出来ている人物であれば話は別ですが。
もう一つの方法として、それでももし貸すのであればはじめからあげるつもりで貸してください。
あげるつもりで貸して、返してこなかった人物とは、以後、積極的には関わらないようにするといいでしょう。
少し厳しいようですが、貸したモノが返ってこない時点で相手からコミュニケーションを放棄しているので、そこにこれ以上健全な人間関係を築くことは難しいのです。
あげるつもりで貸して、心のどこかで返ってくるのを期待してしまっている自分を捨ててみましょう。即日返らなかった場合、9割以上は返ってきません。
‣ 3. 音楽をやっていると受ける迷惑への心の持ち方
音楽をやっていると、小さなことであれ迷惑をこうむることもありますね。大抵、以下の内容にまとめられます:
・自分は身銭を切り、相手は切っていない場合の、貸してほしいという甘え
・みんなに決められている決まりの違反
・アドヴァイスに見せかけたマウンティング
例えば:
・「楽譜を貸してほしい」と毎度頼まれる
・ストピで時間超過される
・弾くと、求めてもいないアドヴァイスらしきものを投げかけられる
筆者は、こういったような小さな迷惑を経験するたびに、同じことを人に対してやらないようにと気を引き締めることにしています。
当たり前のことのようですが効果あります。忘れた頃に迷惑を受けるので。
・音楽をやっていると受ける迷惑への心の持ち方
・他人の小さな迷惑から学ぶ習慣の作り方
というのは、やられたことをやり返してもスッキリするどころか、むしろ面倒くさくなるということを腑に落とすことです。
‣ 4. 自分のコンプレックスを他人に押し付けない
「ああいう演奏は好きじゃない」などという話を耳にすることがあります。
例えば:
・とにかく速いテンポの演奏
・とにかく大きな音を出す演奏
などは嫌われやすい演奏の代表的なもの。
しかし、そういった演奏を嫌う方は、ひょっとしたら自分のコンプレックスを他人に押し付けているのではないかということを一度考えてみて欲しいと思います。
「表現かテクニックか」ではなく、両者は表裏一体なので「表現とテクニック」なのですが、敏捷性や大きな音へのコンプレックスが強いと、「自分は表現で勝負」などとよく分からないことを言い出してしまいます。
そして、表立ってパフォーマンス性が目立っている演奏を嫌ってしまいます。
音楽の好みがあることは、全く構いません。筆者にも好きな音楽や苦手な音楽はあります。
しかし、自分のコンプレックスを押し付けるような形で特定の作品や演奏について否定するのは、せめて自分の心の中だけの出来事にしておきましょう。
► B. 自己改善ハック
‣ 5. 音楽学習における自己肯定感の上げ方
「自己肯定感の上げ方」と言うと:
・昼寝の始め方
・紅茶の始め方
・ホームベーカリーの置き場所の決め方
みたいな感じで、 仕方も何もないと思いながらも、筆者なりの解説をしたいと思います。
結論的には、音楽をやるにあたって自己肯定感を上げるために重要なのは、視野を広げることだと考えています。
例えば、よく話題にしていますが、変えられない手の大きさの問題がありますね。
直接的な言い方ですが、筆者も含め手の大きくない方がどんなに頑張っても、12度や13度音程が届く作曲家の作った作品をバリバリ弾くのには無理があります。
我々には「選曲の自由」という武器があるのだから、視野を広げて自分にとって頑張ってもできないことは認めて、できるところで挑戦すればいい。
あきらめたり手放したりするのは、「選択肢を狭める」という意味ではなく、「視野を広げる」ということです。
その他、視野を広げることで自己肯定感を下げていた原因を消すことができます。
視野が狭いと、融通が効かないし良質な情報が入ってきたときに受け止められません。それで結局また、自分を責めたり人を恨んだりしてしまう。
「自己肯定感を上げる」という意味でもう一つ大事なのは、結果を自分の意思ではコントロールできないものには金輪際一喜一憂しないと誓うことです。
例えば、音楽で言うと「コンクール」とか、実生活で言うと「片想い」とか。
結果を良くするために様々な努力はできても、最終的な結果は自分では決められません。
それに向けて努力するのは当然ですが、上手くいかないのがデフォルトくらいで思っていないと結果が微妙だったときに傷ついてしまいます。
他人に決められた結果で自己肯定感を下げるのは、本当にやめた方がいい。
・視野を広げる
・結果を自分の意思ではコントロールできないものには、金輪際一喜一憂しないと誓う
この二つを腑に落として、音楽をやるにあたっての自己肯定感と付き合ってみましょう。
‣ 6.「少しだけ様子を見る」ということを重視しよう
行動は早いほうがうまくいくことが多いのですが、「少しだけ様子を見る」ということを重視すべきケースもあります。
例えば2024年に、楽譜浄書ソフトとして圧倒的定番とされていた「Finale」のサービス終了がアナウンスされ、大きな話題となりました。
このような時は大急ぎで別のソフトを購入してしまわずに、いったん無料トライアル版などで学習を始めるべき。数週間だけでいいので少し様子を見るべきなのです。
・その間に、新たなアナウンスがあるかもしれません
・その間に、この話題に乗っかるべく現在無料トライアルで学習しているソフトがセールを始めるかもしれません
・その間に、乗り換えるべきソフトの比較記事を専門家が出してくれるかもしれません
今振り返ってみれば、これら全て現実になりました。
あまりにも様子を見過ぎていてはいけませんが、焦ったときこそ、少しだけ時間を挟むように心がけましょう。
このようなことは音楽以外の日常生活にも言えますね。例えば:
予約済みのところからキャンセル料金を取られてしまう。
などといったもの。
何かが決まったり発表になった直後というのは、変動が起きやすいのです。特に個人対個人の場合、直後だと、相手も悪びれなく変更をお願いしてきます。
あまりに予約を先延ばしにしても良い飛行機や良い前泊宿はなくなってしまいますが、もし旅行までにある程度の期間があるのであれば、日程などの決定からせめて2-3日だけでも様子を見てから予約をするべき。
とにかく、いますぐに動かないといけない場面でない限りは「少しだけ様子を見る」ということを重視するようにしましょう。
その後にガンガンに行動すれば、一時的に行動が遅くなっても構いません。
‣ 7. 音楽の知識は継続的な学習から得られる
10代の頃からの筆者の友人で、音楽に関してものすごく詳しい人物がいます。
特に、自分の専門やその周辺音楽に関しては知らないことはないんじゃないかという知識量で、当然、音楽の才能もありました。
初めて会ったときから天才だと思っていたのですが、ある時に、とある新人チェリストの名前を挙げたら、さっとメモ帳を取り出して思いっきりメモを取り始めたのです。
そこには様々なアーティストや曲名などがズラリと書かれていました。どうやら、帰宅してからカゲで勉強していたようです。
それ以降も、たまに知らない楽曲名や演奏家名を耳にすると、「えっ、何それ?」などといちいち反応して、いちいちメモを取り始める。時代が変わって、メモ帳からスマホになりましたが。
意識高い系というわけではなく、本当に好きで楽しんでやっている感じが伝わってきます。
やはり、詳しい人やできる人というのは負けず嫌いで、ガンガンに時間を投下しているのです。
あからさまに表へ出す必要はありませんが、音楽が好きであればこれくらい貪欲に吸収しようと思っていていいですし、筆者もそのように心がけています。
音楽のあらゆるジャンルに詳しくなる必要はありません。
しかし、ピアノを弾いているのであれば、せめてその周辺音楽についてはいつもアンテナを張っているようにして欲しいと思います。
‣ 8. ネガティブな思い出がある曲との向き合い方
クラシック音楽の様々なアルバムを聴いていたら、昔ケンカ別れした友人が良く弾いていたピアノ曲が流れてきて、当時のことがフラッシュバックしました。
筆者にとっては、ある意味、良くない想い出がある曲なのですが、誰であってもアルバムを通しで聴いていると、こういった作品をまたふと耳にすることはあるでしょう。
自分にとって良くない想い出のある曲というのは、様々な理由で生まれます。例えば:
・コンクールで上手くいかなかった曲
・先生に強く怒られた曲
・やりたくないのに与えられた曲
・ケンカ別れした友人がよく弾いていた曲
こういった作品とのおすすめの付き合い方があります。
余程でない限り、あえて避けないようにしてください。
クラシック音楽というのは、単曲で聴くばかりではなくて、曲集や組曲などアルバム単位で聴くことも多いので、避けようとすると聴くもの全体が歪んでしまいます。
それに、「このトラックの後は、あの曲が流れてきてしまうな…」などといつも考えていると、常に頭の一部をわしづかみにして持って行かれている状態になるので、毎日の楽しさが激減します。
良くない想い出 ”も” あるというだけで良い想い出もあるはずなので、ゼロイチ思考とならずに「流れてくれば、聴く」くらいの距離感で付き合ってみましょう。
良い想い出がないのであれば、今からできることを期待してください。
‣ 9. 古本市で足を止めよう
歩いていると、屋外古本市を目にすることがあると思います。
商店街などの道の真ん中にズラーっとワゴンが並べられて、真っ黄色・真っ茶色な古本が売られている。
こういうイベントでは、意外と音楽関連書籍の掘り出し物が出てくることも。
以前に、ネット中古では数万円のプレミアがついている絶版のピアノ関連書籍が、なんと260円で手に入りました。しかも、そういう書籍が一気に4冊手に入ったのです。
古本市に楽譜はあまり多く出てきません。楽譜はその使用用途からも、売るくらいなら持っておいてしまっておく傾向があるからでしょう。しかし、ピアノ関連書籍の絶版になっているものは結構目にします。
ピアノに限らず、本Webメディアでも紹介している「フレージングとアーティキュレーション―生きた演奏のための基礎文法」著 : ヘルマン・ケラー / 音楽之友社 とか、その他音楽理論系の絶版本などはよく並んでいます。
古本市は音楽学習者の味方。必読の音楽書には古いものが多くあり、しかも、それらを破格で手に入れられる可能性が高いからです。
急ぎで欲しいものを手に入れる手段としては向きませんが、「読みたいと思っているけど、プレミア価格で尻込みしている」という書籍を手に入れられる可能性があるという意味ではよいチャンスだと言えます。
古本市を見かけたら足を止めましょう。
‣ 10. 音楽の力を落とす最大の理由は不健康
筆者は以前に、入院しながら2週間近く寝込んでいたことがあります。もっと大病をしたことのある方もいるかもしれませんが、少なくとも筆者の中では過去一番の寝込みでした。
退院して歩いたときに驚いたのですが、5分歩いただけで息が切れるんですよ。本当に力が入らない。
食べる量が減って体力が落ちて歩かず筋力も落ちていたので、当然と言えば当然なのですが、こんなにも早く日常の身体を維持できなくなるのかと驚いた覚えがあります。
寝込んでいたらもちろんピアノは弾けないですし、再開してからもブランクを痛感します。「音楽の力を落とす最大の理由は不健康」と言ってもいいでしょう。
分かっていても結局、気を抜いてしまい、体調を崩してから涙目にならざるを得ません。
この辺りの管理の大切さについて身をもって学んだので、少しでも「やばいかも」と思ったら、すぐにかかりつけ医のところへ足を運ぶようになりました。
とにかく、事前対策やらあらゆる手を尽くし不健康とサヨナラして自分の音楽ライフを守ることが、良い練習方法よりも何よりも最優先事項です。
‣ 11. 柔軟な目標設定と妥協点の見つけ方
何か、辞めたいことや回数を控えたいことがある時に、それを代替案で置き換えるという方法があります。
これは中々良くできた考え方で適度に取り入れてもいいのですが、「原則、うまくいかないことの方が多い」と思っておいてください。
例えば:
・「○○の学習では、あの音楽書籍が定番だけど、高価だからこっちにしておこう」
・「寒いから、ピアノへ向かわないで机鍵盤で練習しよう」
・「度胸をつけたいけど、発表会は怖いから弾き合い会に参加しよう」
こういうことをしても、大抵満足できません。後になってやり直すことになります。妥協した部分が、ずっと後ろ頭をうろついて気になり続けるから。
ではどうすればいいのかと言うと、迷っているのであれば、とりあえず代替しないでください。
細々したことは代替しないでやってみる。代替案を検討すべきなのは、数年単位で膨大な時間がかかるようなものの場合のみにしてみましょう。ツェルニー100番とか。
筆者は原則、日常生活でも代替案での置き換えを最小限にしています。
例えば、「コーヒーは依存するから、ノンカフェイン紅茶で代用する」という考え方があります。
しかし、筆者の感覚としては紅茶よりコーヒーの方がおいしく感じます。コーヒーを我慢して紅茶を飲むのではなくて、コーヒーも紅茶も飲みたいのです。
だから、「コーヒーを飲むのは午前中だけにする」というように、折り合いの付け方を考えていくようにしています。
音楽学習でも日常生活でも同じですが、「必ずしもゼロにしてしまうのではなく、ムリのないやり方で落としどころを見つける」ようにすると、代替案でゼロイチにしてストレスをためるよりも幸福度が上がります。
► 終わりに
本記事で紹介したライフハックは、ピアノ学習に限らずあらゆる場面で活用できるはずです。
一つでも二つでも実践してみてください。
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