【ピアノ】「ハイドン・ピアノソナタ 演奏の手引き」(ブロッホ、コラジオ 共著)レビュー

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【ピアノ】「ハイドン・ピアノソナタ 演奏の手引き」(ブロッホ、コラジオ 共著)レビュー

► はじめに

 

ハイドンのソナタは、モーツァルトやベートーヴェンと並ぶ古典派の重要なレパートリーです。しかし、日本語で読める解説書や参考資料はあまり多くありません。「楽譜はどの版を使えばいいのか」「装飾音はどう弾くのが適切か」などといった疑問を抱えたまま練習を進めている方も少なくないのではないでしょうか。

今回紹介する「ハイドン・ピアノソナタ 演奏の手引き 鍵盤楽器ソナタの概要と分析」(ヨセフ・ブロッホ、ピーター・コラジオ 共著 / 全音楽譜出版社)は、そうした疑問に正面から向き合った一冊です。版の問題や装飾音の解釈から楽曲の詳細分析まで、演奏者の視点でまとめられており、ハイドンのソナタを本格的に学びたい方にとって心強い手引きとなっています。

 

・出版社:全音楽譜出版社
・初版:2002年
・ページ数:187ページ
・対象レベル:中級~上級者
・書籍副題:鍵盤楽器ソナタの概要と分析


 

► 著者について

 

(以下、書籍より引用)

ヨセフ・ブロッホ (Joseph Bloch) 
ハーバード大学大学院卒業。ジュリアード音楽院ピアノ科教授 (1948~83年、1989~96年)。ピアノ・レパートリーのアナリーゼと文学的裏付けに関する博識で世界的に有名。2004年5月にジュリアード音楽院より’名誉博士号’を授与される。

ピーター・コラジオ (Peter Coraggio) 
コンサート・ピアニスト。ジュリアード音楽院大学院卒業。ハワイ大学ピアノ科名誉教授。近年はアメリカを始め、日本や東南アジアでリサイタル、マスタークラスなどに幅広い活躍をしている。

(引用終わり)

 

► 本書の内容

‣ 本書の概要

 

本書はハイドンの鍵盤楽器ソナタ全体を俯瞰する第1章と、6曲の代表的なソナタを分析する第2章で構成されています。

主な対象レベルは中級〜上級者ですが、第1章には、ハイドンの入門ソナタを学ぶ段階でも役立つ情報が多く含まれているため、レベルを問わず参照してみてください。

 

‣ 第1章:ハイドンの鍵盤楽器用ソナタ

 

第1章では、以下のような幅広い内容が扱われています。

・ハイドンのソナタの成立経緯と版(エディション)の問題
・ホーボーケン番号(作品番号)の捉え方
・ハイドンが実際に使用していた鍵盤楽器の種類
・J.S.バッハ、ヘンデル、スカルラッティ、クレメンティ、グルック、エマヌエル・バッハなど、各作曲家からの影響
・ハイドンがベートーヴェンのどんなピアノソナタに影響を与えたのか
・ハイドンのモチーフの展開手法、メヌエットを多用した理由
・ハイドン特有の「驚愕(サプライズ)」の要素(突然の転調、大胆な旋律の動き、テクスチュアの変化 など)
・ハイドンの対位法の使われ方

日本ではハイドンのソナタに関する資料がモーツァルトやベートーヴェンと比べて少ないため、必要な背景知識を日本語で体系的に確認できる点は大きな魅力です。

 

‣ 第1章の装飾音解説は特に重要

 

第1章の中でも「ハイドンのさまざまな装飾について」の項目は、演奏者にとって特に参考になることでしょう。ハイドンのソナタを演奏する際に多くの学習者が迷う次のような疑問に答えています:

・装飾音は上から弾くのか、下から弾くのか
・拍の前に出すのか、拍の頭に合わせるのか
・「ハイドンのターン」と呼ばれる特殊な記号の解釈
・ハイドンの作品で、録音によって装飾音の入れ方が千差万別である理由

扱われる装飾音の種類は、モルデント、アポジャトゥーラ(単前打音)、複前打音、ターン、転回ターン、トリル、転回モルデント、フェルマータなど13種類にわたります。また、「ソナタ 変ホ長調 Hob.XVI/49 第2楽章」を実例として、装飾音と演奏指示の解釈方法が具体的に示されています。

 

‣ 第2章:6曲の詳細分析

 

第2章では以下の6曲が取り上げられています。

「ソナタ ハ短調 Hob.XVI/20」(1771年)
「ソナタ ロ短調 Hob.XVI/32」(1776年)
「ソナタ ニ長調 Hob.XVI/37」(1777〜79年)
「ソナタ ハ長調 Hob.XVI/48」(1789年)
「ソナタ 変ホ長調 Hob.XVI/49」(1789〜90年)
「ソナタ 変ホ長調 Hob.XVI/52」(1794年)

詳細な分析がされているのはこの6曲のみですが、分析の内容は楽曲の構造説明にとどまらず、「実際にどう弾くか」という演奏上の視点が含まれています。著者2名がピアニストであるため、理論的な分析が演奏の実践に直結する形で書かれているのが特徴です。

 

留意点:

・詳細分析の対象は6曲に限られる
・それ以外のソナタについては、第1章の通則的な解説を参照しながら自身で応用していく必要がある

 

► こんな方におすすめ

 

・ハイドンのソナタをこれから本格的に学びたい方
・ハイドンの装飾音の解釈に迷っている方
・ハイドンの音楽的な背景や影響関係を、特にソナタ周辺を中心にして理解したい方
・楽曲分析の視点を演奏に活かしたい方

 

► 終わりに

 

ハイドンのソナタを演奏するうえで最低限知っておくべき知識が、一冊にまとまっています。特に第1章は、演奏レベルに関係なくハイドンを弾くすべての方にとって読む価値のある内容と言えるでしょう。日本語でハイドンのソナタをここまで丁寧に解説した資料は多くなく、手元に置いておきたい一冊です。

 

 


 

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