【ピアノ】バルトーク「子供のために」でペダリングを学ぶ:初級者向け効果的練習法
► はじめに
ピアノ演奏において、ペダリングは音楽的表現の重要な要素です。しかし、多くの初級〜初中級者にとって、適切なペダリング技術を学ぶことは大きな課題となっています。
本記事では、バルトーク作曲「子供のために」を活用した効果的なペダリング学習法を紹介します。この作品集には作曲家自身による明確なペダリング指示が記されており、ペダリング学習の入門に最適な教材と言えます。
► 初級〜初中級におけるペダリング学習の現状と課題
教材の限界:
・既存のペダリング教材の多くは教則本に組み込まれており、独学者には取り組みにくい
・練習曲として作られた楽曲が中心で、長期的なレパートリーとしての価値が限定的
・音楽的な文脈でのペダリング活用法が不十分
独学学習者にとっての理想の教材:
・取り組みやすい難易度設定と、単曲価値のある楽曲
・一生のレパートリーとして弾き続けていける楽曲
・音楽的な表現力を高めるペダリング技術の習得
これらすべてを満たす理想的な教材が、バルトーク「子供のために」です。
► バルトーク「子供のために」の特徴と魅力
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、第1巻 第2番「子供の歌」曲頭)
‣ 作品概要
「子供のために」は全79曲(改訂版の曲数)からなる作品集で、バイエル併用程度からソナチネ併用程度まで、幅広い難易度の楽曲を収録しています。
タイトルに「子供のために」とありますが、実際には多くのピアニストがレパートリーとして演奏する、高い芸術性を持った作品集です。
‣ ペダリング学習における優位性
作曲家自身による信頼できる指示:
・バルトーク自身が記した詳細なペダリング指示
・必要な箇所のみに絞り込まれたペダリング
学習効果の高さ:
・短時間で完成する短い楽曲での学習
・各楽曲を組み合わせることで、様々なペダリングパターンの習得が可能
・ただの音の延長に留まらない、音楽的なペダリング活用法の習得
‣ 音楽作品としての価値
和声の魅力:
・親しみやすいメロディーでありながら、古典作品にはない現代的な和声感覚も散りばめられている
・20世紀音楽への導入としても適した作品群
構造的特徴:
・シンプルな対位法が使われた作品もある
・民謡の引用による作品もある
・バルトーク特有の音楽語法を無理なく体験
► ペダリング学習入門におすすめの4曲
以下に紹介する4曲は、バイエル後半〜ブルグミュラー25の練習曲入門程度で演奏可能で、それぞれ異なるペダリング技術を学習できます。全曲に取り組む場合は、「2番 → 7番 → 10番 → 12番」順で取り組むと段階的な学習が可能です。
‣ 第1巻 第2番「子供の歌」
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)
技術レベル:バイエル後半程度
演奏時間:48秒(バルトーク自身による記載)
ペダリング学習のポイント:運指ではつながらない和音の連結技術
楽曲の最後3小節にのみペダリング指示があります。手だけではつながらない音の連結をペダルによって自然に実現する基本技術を習得できます。
‣ 第1巻 第7番「遊びの歌」
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)
技術レベル:バイエル後半程度
演奏時間:28秒(バルトーク自身による記載)
ペダリング学習のポイント:動くメロディーラインを配慮した和音連結
全16小節中、3箇所のみにペダリング指示が見られます。ペダリングの学習内容は第2曲とほぼ同様ですが、この作品では、動くメロディラインを配慮した学習になります。
‣ 第1巻 第10番「子供の踊り」
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)
技術レベル:ブルグミュラー25の練習曲入門程度
演奏時間:40秒(バルトーク自身による記載)
ペダリング学習のポイント:分散和音でのペダル判断基準と響きの豊かさ
前2曲とは対照的に、楽曲の大部分にペダリング指示があります。しかし、それぞれが音楽的必然性に基づいて配置されています。
学習内容:
・分散和音でペダルを踏む場合と踏まない場合の判断基準
・楽曲終結部での響きを豊かにするペダル活用法
・より積極的なペダル使用による表現方法
‣ 第1巻 第12番「無題」
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)
技術レベル:ブルグミュラー25の練習曲入門程度
演奏時間:1分20秒(バルトーク自身による記載)
ペダリング学習のポイント:長めに踏んで、複数の音型をひとまとめにする
3箇所のみのペダリング指示ですが、必須とも言える重要ペダリング視点を学習できます。
学習内容:
・長めのペダル保持で音楽的まとまりを示す技術
・より高度な音楽表現への橋渡し技術
► おすすめの楽譜
・ニュー・スタンダード・ピアノ曲集 バルトーク 子供のために 1 / 音楽之友社
特徴:
・入手しやすさと適正価格
・学習に適した見やすいレイアウト
・日本語解説による初学時の理解の促進
学術的信頼性:
・パップ晶子氏による研究に基づいた校訂
・ハンガリーでの留学経験を持つバルトーク研究の専門家による監修
・複数の資料を比較検討した高い精度
► 効果的な練習方法
原則、バルトークの指示を厳守:
・バルトークによるペダリング指示の遵守:作曲家の意図した音響効果の実現
・本作品においては、指示のない箇所では基本的にペダルを使用しない
・バルトークによる運指指示の遵守:運指が変わると適したペダリングも変化するため
バルトークが残したペダリングと運指をきちんと守ることで、ペダリング入門学習が最も理想的なものとなります。
ペダル効果の体験:
・ペダルありとなしでの音響効果の比較
・「なぜ、その箇所にペダル指示があるのか」の理解
► 終わりに
バルトーク「子供のために」は、初級〜初中級者のペダリング学習において理想的な教材です。作曲家自身による信頼できる指示、段階的な難易度設定、音楽作品としての高い価値を兼ね備えています。
本記事で紹介した4曲を通して基礎的なペダリング技術を習得することで、より高度な音楽表現への確実な基盤を築くことができるでしょう。
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