【ピアノ】園田高弘、諸井誠「往復書簡 ロマン派のピアノ曲 分析と演奏」レビュー

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【ピアノ】園田高弘、諸井誠「往復書簡 ロマン派のピアノ曲 分析と演奏」レビュー

► はじめに

 

本書は、ピアニスト・園田高弘氏と作曲家・諸井誠氏による、ロマン派の四大作曲家(シューマン、ショパン、リスト、ブラームス)のピアノ曲についての往復書簡と対談をまとめた音楽書です。

 

・出版社: 音楽之友社
・初版:1984年(初出:「音楽芸術」誌 1977年1月号〜12月号連載)
・ページ数:337ページ
・対象レベル:初中級~上級者

 

・往復書簡 ロマン派のピアノ曲 分析と演奏 著:園田高弘、諸井誠 / 音楽之友社

 

 

 

 

 

 

► 内容について:本書の特徴

 

各作曲家について章立てされており、諸井氏の分析的視点による意見、園田氏の演奏家としての視点からの意見、そして両者による対談が収録されています。タイトルに「分析と演奏」とありますが、従来の楽曲分析書のような細かな和声分析や形式分析に終始するものではなく、むしろ作曲家の人間性や時代背景、創作の原動力に迫りながら、作品の本質を探究していく内容となっています。

 

1. 二つの視点からの立体的な音楽理解

作曲家と演奏家という異なる専門性を持つ二人の音楽家の対話から、ロマン派ピアノ音楽の本質に迫っている点は、本書の大きな特徴と言えるでしょう。二つの視点が交差することで、どちらかに偏ることなく割とフラットな視点で全貌を眺めることができます。

2. 現役音楽家ならではの生きた知見

出版当時、両著者とも第一線で活躍する音楽家でした。したがって、ただの学術的分析ではなく、実際の演奏経験や創作経験に基づいた生きた知見が随所に散りばめられています。

3. 作曲家間の関連性への言及

本書では、シューマン、ショパン、リスト、ブラームスという四人の作曲家が互いにどのように影響し合い、また区別されるのかについても論じられています。例えば、シューマンとショパンの友情関係、リストとショパンの技巧的な違い、各作曲家同士の芸術的継承関係などが浮き彫りにされ、ロマン派音楽の大きな流れを俯瞰する視点も提供されています。

4. 具体的な演奏家への言及

ホロヴィッツ、ブレンデル、ルービンシュタインなど著名なピアニストの演奏解釈についても言及されており、実際の録音と合わせて聴くことで、より深い学びが得られます。

5. 読みやすさと深さの両立

専門的な内容でありながら、書簡と対談という形式が採用されていることで、読者は二人の音楽家の会話を覗き見るような親しみやすさを感じることができるでしょう。また、手紙というパーソナルな形式によって、著者たちの音楽への情熱や思いが直接伝わってくる点も魅力です。

 

► おすすめの読者層

 

・初中級〜上級のピアノ学習者で、ただの「弾き方」「分析の仕方」を超えた音楽的理解を深めたい方
・ロマン派音楽の精神性や哲学的背景に興味がある方
・演奏解釈の幅を広げたい学習者
・音楽史や音楽美学にも関心のある方
・優れた音楽家の思考プロセスを知りたい方

 

► まとめ

 

「往復書簡 ロマン派のピアノ曲 分析と演奏」は、ロマン派ピアノ音楽の奥深さを、二人の著名音楽家の対話を通して伝える一冊です。技術的な「弾き方」よりも、作曲家や作品の「捉え方」に重点を置いている点で、貴重な資料となるでしょう。

 

・往復書簡 ロマン派のピアノ曲 分析と演奏 著:園田高弘、諸井誠 / 音楽之友社

 

 

 

 

 

 


 

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