【ピアノ】小澤征爾「おわらない音楽」レビュー:音楽への向き合い方と実践法
► はじめに
世界的な指揮者であった故・小澤征爾氏による自伝的エッセイ「おわらない音楽」は、音楽を学ぶ我々にとって、単なる伝記以上の価値を持つ一冊です。本書から学べる音楽への向き合い方や実践的な学習方法について解説していきます。
・おわらない音楽 私の履歴書 小澤征爾 著(日本経済新聞出版)
► 本書の特徴
「おわらない音楽」は182ページとコンパクトながら、音楽家としての深い洞察に満ちています。特筆すべきは以下の3つの視点です:
・演奏会への向き合い方
・日々の音楽の学習方法
・カラヤンから受け継いだ音楽への姿勢
これらは、ピアノ学習者が日々の練習に取り入れることのできる貴重な知見となっています。
► ピアノ学習者が特に注目すべき点
1. 徹底的な楽曲研究の方法
小澤氏は「毎日一時間半くらいかけて、四小節や八小節ずつ勉強する」という具体的な学習方法を紹介しています。指揮者は室内楽作品などを振ることもありますが、これはおそらく「オーケストラスコアを勉強する時のこと」でしょう。
この地道なアプローチは、ピアノ学習者にも応用できる実践的な方法です。小さな単位で深く理解していく姿勢は、確実な楽曲理解や技術の向上につながります。
2. 集中力の配分と管理
「今日音楽会でやった曲のことは終わった後にすぐ忘れないと、次の曲に入っていけない」という小澤氏の言葉は、我々の練習方法を見直すヒントとなります。もちろん、レパートリーの維持については別の考え方が必要ですが、ここで述べられているのは、「音楽会のために、主に新曲として取り組んでいく作品」のことでしょう。
一つの育てたい樹がある時に、それ以外のものはいったん排除して育てたいものに集中することの重要性を教えています。
3. 音楽への多角的なアプローチ
本書の特徴的な点は、ピアノという楽器の枠を超えた音楽への視点です。指揮者としての経験から得られた感覚は、ピアノ演奏の表現力を豊かにする示唆に富んでいます。
► 実践のためのアドバイス
本書の学びを実践に活かすために、以下の3つのポイントを意識することをおすすめします:
・毎日の練習時間を確保し、小さな単位での丁寧な練習を心がける
・一つの曲に取り組む際は、その曲に集中できる環境を整える
・ピアノ曲に限らず様々な演奏家の解釈や演奏を聴き、自身の音楽へ活かす視点を養う
► 読者に適した対象レベル
本書は、初心者から上級者まで、音楽に興味を持つ全ての方に適しています。特に以下の方々におすすめします:
・音楽の視野を広げたい方
・音楽への理解を深めたい方
・勇気づけられたい方
► まとめ
小澤征爾氏の「おわらない音楽」は、技術書ではありません。音楽に対する真摯な姿勢と深い洞察が、我々の音楽生活に新たな視点をもたらしてくれます。一人の音楽家の音楽への向き合い方からエネルギーと知見をもらうことができるという点で、本書は大きな価値を持っています。
ピアノが弾けるようになってくるとなおさら、ピアノ以外の楽器の演奏家や作曲家、指揮者などから吸収できることは多くなってきます。このことに是非気づいてください。それに、そういった分野の方から私淑できることは、ピアノだけを見ていても気づきにくいことばかりなのです。
作曲家が埋め込んだキラリと光る宝石を見つけ出すためにも、いつもとは視点を変えて音楽に接してみましょう。
・おわらない音楽 私の履歴書 小澤征爾 著(日本経済新聞出版)
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