【ピアノ】長い曲を作るコツ:繰り返しを活かせる「形式」を使う

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【ピアノ】長い曲を作るコツ:繰り返しを活かせる「形式」を使う

► はじめに

 

「16小節くらいのアイデアは作れても、2〜3分以上の曲として展開できない」

これは、作曲に挑戦するピアノ学習者の多くが経験する悩みです。

実際には、曲を展開する「形式」や、素材を再利用する「構造」を知っているかどうかが大きく関係しています。クラシック音楽では、こうした問題を解決するために、昔から様々な楽式(形式)が発展してきました。

その中でも特に実用的なのが、「複合三部形式」や「ロンド形式」です。

これらは「繰り返し」を効果的に使えるため、比較的少ない素材でも、自然に長さのある曲へ発展させやすい形式と言えるでしょう。しかも、この考え方はクラシックだけでなく、ポピュラー音楽などにも十分応用できます。

そこで本記事では:

・長い曲を作りやすくする考え方
・複合三部形式とロンド形式の基本
・実際のクラシック作品での例

を整理しながら解説していきます。

 

► 長い曲を作るために必要なのは「形式」

 

多くの場合、16小節ほど書いた時点で「次に何を書けばいいか分からなくなる」状態に陥ります。

作曲初心者が長い曲を書けない理由は、「アイデア不足」だけではありません。むしろ多いのは、「せっかく素材ができてもそれをどう展開すればいいか分からない」というケースです。

そこで役立つのが「形式」です。例えば:

・一度出した主題を再び登場させる
・別の場面を挟んで戻ってくる
・少し変化させながら再利用する

といった方法を使うだけでも、自然に曲全体を拡張しやすくなります。

特にクラシック音楽では:

・A-B-A
・A-B-A-C-A
・A-B-A-C-A-B-A

のような構造が非常によく使われてきました。この「戻ってくる安心感」が、曲にまとまりを与えてくれます。

 

► 形式の理解

‣ 複合三部形式とは?

 

(図)

複合三部形式の構造を示した図。

形式の特徴:

1. 階層構造

・大きな三部形式(A-B-A)の中に
・小さな二部形式(a-b)か三部形式(a-b-a)が含まれる(aとbはそれぞれ大楽節)
・この入れ子構造が「複合」の由来

2. 楽節構造の基本単位

・小節(1小節)×2=動機(2小節)
・動機(2小節)×2=小楽節(4小節)
・小楽節(4小節)×2=大楽節(8小節)

これは基本の形であり、小節数などは楽曲によっては変更になることもあります。「導入(前奏部分)」「経過句(つなぎ)」「エンディング(コーダ)」などは、楽曲の要求にしたがって適宜入れても構いません。

 

最初のA(a b もしくは a b a)を再現できるため、新しい素材を大量に作らなくても曲全体を長くできるメリットがあります。これは作曲初心者にとって非常に大きな利点と言えるでしょう。

 

‣ ロンド形式とは?

 

ロンド形式を理解するためには、前項目で取り上げた「複合三部形式」の理解が必須です。

・単純ロンド:ABACA
・複雑ロンド:ABACABA

ABAのみで、すでに複合三部形式になっているものが標準です。

 

複合三部形式の図(再掲)

複合3部形式の概念図。

つまり:

・単純ロンドは「複合三部形式 + C + A 」
・複雑ロンドは「複合三部形式 + C + 複合三部形式」

「導入(前奏部分)」「経過句(つなぎ)」「エンディング(コーダ)」などは、楽曲の要求にしたがって適宜入れても構いません。

「まず ABA を作り、あとから新しい場面を追加していく」という発想で、自然に長い曲を作りやすくなります。Aを何度も再利用できるため、新素材を大量に作らなくても曲全体を拡張しやすいのです。

 

► 調性は厳密に考えすぎなくてもよい

 

伝統的なクラシック楽式論では、構成の進行にしたがって:

・属調
・下属調
・平行調

などへの「進むべき調性の方向」がおおむね定型として重視されることがあります。

もちろん、それらを学ぶことには大きな価値がありますが、現代の作曲やポピュラースタイルでは、まずは、「戻る構造」や「対比を作る構造」を体感することのほうが重要です。

調性を厳密に考えすぎることで曲が作れなくなってしまう場合は、いったん無視してみましょう。

 

► やさしいピアノ曲の実例分析

‣ 複合三部形式の実例

 

シューマン「ユーゲントアルバム(子どものためのアルバム)Op.68-11 シチリアーナ」

譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、楽曲全体)

シューマン「ユーゲントアルバム Op.68-11 シチリアーナ」の全楽譜。

 

1. 全体構造

この楽曲は「複合三部形式」となっており、以下のような3つの大きなセクションで構成されています:

A(aba) B(aba) A’(aba)

・A(1-24小節):主楽節群
・B(25-36小節):中間楽節群
・A’:ダ・カーポによる主楽節群の再現

 

2. 各セクションの詳細

A部分(主楽節群)

・a(1-8小節):主題提示
・b(9-16小節):中間部
・a(17-24小節):主題再現

 

B部分(中間楽節群)

・a(25-28小節):新しい主題
・b(29-32小節):中間部
・a(33-36小節):主題回帰

より活発な動きを持ち、主楽節群との明確な対比が意図されている点に着目しましょう。また、「4小節単位」の凝縮された構造になっているのが、上記の複合三部形式の定型との細かな違いです。

 

A’部分

・ダ・カーポによるA部分の完全な再現
・楽曲全体の統一感を強化

 

楽譜も1ページしかないため、この作品を丸ごと理解してしまいましょう。そうすることで、「複合三部形式って何だっけ?」と迷ったときに楽曲ごと復習することで:

・楽曲そのものが記憶の「フック」となり、形式の理解が定着
・用語の暗記に頼った学習方法を避けることができる
・実際の音楽と結びついた生きた知識が身につく

 

‣ ロンド形式の実例

 

ダカン「クラヴサン曲集 第1巻 第3組曲 かっこう ホ短調」

譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、楽曲全体)

ダカン「かっこう」の全楽譜①。

ダカン「かっこう」の全楽譜②。

ダカン「かっこう」の全楽譜③。

※この譜例は原典版を元にしているため、広く流布している実用版(教育用の目的などで、本来書かれていない各種記号などを補ったもの)とは異なる部分が多いことに注意してください

 

本作品は「ロンド形式」で構成されており、以下のような構造となっています:

ABACA(単純ロンド)

A(1-23小節)
B(24-42小節)
A(1-23小節)反復
C(43-69小節)
A(1-23小節)反復

 

単純ロンドの代表例として、非常に理解しやすい作品です。

ABAの部分だけで複合三部形式になっていることを読み取りましょう。それだけでも楽曲としては成立するのですが、Cセクションを経てAセクションを反復するロンド形式にすることで、楽曲が長くなっています。

 

‣ さらに分析を深めたい方へ

 

複合三部形式やロンド形式をより深く学びたい場合は、以下の記事も参考になります:

【ピアノ】シューマン「サンタクロース」の楽曲分析:セクション毎の特徴に着目して
【ピアノ】名著「楽式論」がピアノ学習者に必須な理由:70年を超える影響力

 

他に参考になる曲例

複合三部形式:

・モーツァルト「ピアノソナタ イ長調 K.331 第2楽章」
・ショパン「ポロネーズ 第3番 イ長調 Op.40-1 軍隊」
・シューマン「ユーゲントアルバム(子どものためのアルバム)Op.68-12 サンタクロース」※

ロンド形式:

・モーツァルト「ピアノソナタ ニ長調 K.311 第3楽章」※
・ベートーヴェン「ソナチネ Anh5(2)  第2楽章」
・ウェーバー「舞踏への勧誘」

 

※を付した楽曲は、各形式を追加分析するときに優先すべき作品です:

・シューマン「Op.68-12 サンタクロース」は、典型的な複合三部形式
・モーツァルト「K.311 第3楽章」は、複雑ロンド形式(A-B1-B2-A-C-カデンツァ-A-B1-B2-A)

 

► まずは「ABA」だけでも十分

 

最初から大作を書く必要はありません。まずは、複合三部形式から挑戦してみましょう。そして、「Cを追加する」「導入をつける」「コーダを加える」といった工夫を重ねることで、曲は自然に長く成長していきます。

形式を知ることは、「難しい理論を暗記すること」ではありません。むしろ、「少ない素材で、曲を自然に発展させる方法を知ること」と言えるでしょう。

 

► 終わりに

 

長い曲を書くためには、「大量の新しいアイデア」が必要だと思われがちです。しかし実際には、「繰り返し」「対比」を上手く使うことで、少ない素材でも十分に作品として成立します。「繰り返しは手抜きではない」という一言を心に留めておいてください。

 

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