【ピアノ】シューベルト「音楽に寄せて(An die Musik)」:ピアノソロ編曲楽譜提供
► はじめに:本記事の趣旨
本記事では、シューベルト「音楽に寄せて(An die Musik)D.547」のピアノソロ編曲(初中級レベル)の無料楽譜を公開しています。
・難易度:ツェルニー30番入門程度
・演奏時間:約1分30秒(リピートをしない場合)
・PDFダウンロード可
・参考演奏音源あり
「弾いてみたいけど難しそう」と感じている方でも取り組めるよう、演奏ポイントも詳しく解説しています。シンプルな音数ながら、美しく響くよう丁寧に音を編んでいるので、ぜひ挑戦してみてください。
※本編曲は、国内外の主要作曲コンクールで受賞歴のある筆者が制作しています。
► シューベルト「音楽に寄せて」とは?(曲の解説)
1. 基本情報と成立背景
シューベルトが20歳の時(1817年)に作曲されました。
作詞:フランツ・フォン・ショーバー(Franz von Schober、シューベルトの親友)
編成:独唱とピアノ
形式:有節歌曲(複数の節が同じ旋律で繰り返される)
当時、シューベルトは経済的に苦しく、自らの才能への不安も抱えていました。そんな中で、自分を救い、慰めてくれる「音楽」そのものへの感謝を歌ったこの詩に深く共鳴し、この曲を書いたと言われています。
2. この曲の「精神性」
この曲は、簡潔に言うと「芸術(音楽)への心からの感謝」を歌ったものです。
多くの著名な歌手(ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウやエリー・アーメリングなど)が、自身のコンサートの最後や、あるいは引退公演のアンコールとしてこの曲を選んできました。音楽家が自らの人生を振り返り、「音楽がそばにいてくれて良かった」と語りかける、祈りのような作品です。
「音楽に寄せて(An die Musik)」対訳
美しき芸術よ、心が暗く沈んだ多くの時間に
人生の荒波が私を絡め取るときも
あなたは私の心に温かな愛を灯し
私をより良き世界へと運んでくれたあなたの竪琴からこぼれるため息や
甘く、清らかな響きは
より良き時代の天国を私に開いてくれた
美しき芸術よ、心からあなたに感謝を
作詞:フランツ・フォン・ショーバー(Franz von Schober)
作曲:フランツ・シューベルト(Franz Schubert)日本語訳:Piano Hack 運営者
3. 伝説の伴奏者「ジェラルド・ムーア」によるピアノソロ
20世紀最高の伴奏者の一人と称えられるジェラルド・ムーア(Gerald Moore, 1899–1987)は、1967年2月20日にロンドンのロイヤル・フェスティバル・ホールで行われた自身の引退記念コンサート(Farewell Concert)の最後に、この作品を、自ら編曲したピアノソロで演奏しました。
本編曲も、ムーアのこの編曲から影響を受けています。「原曲の伴奏を基に歌のメロディを添えたシンプルな編曲」の良さを感じ、その方向性でのソロ楽譜を学習者に提供したいと思い編曲したものです。
このエピソードについてさらに詳しく知りたい方は、【ピアノ】ジェラルド・ムーア引退コンサート最後の演奏「音楽に寄せて」ピアノソロ版を解説 をご覧ください。
► 無料楽譜と参考演奏音源
‣ 難易度:どのくらいで弾ける?
本編曲はツェルニー30番入門程度の初中級レベルです。
・ブルグミュラー25の練習曲修了程度で対応可能
・テンポを抑えれば中級手前でも挑戦可能
・原曲のピアノ伴奏部分と比べても、ほぼ同程度の難易度
音を拾うのはそれほど大変ではありませんが、和音連打の伴奏形が全曲を通して続くので、音が欠けないようにするなどのニュアンス表現に練習を必要とするでしょう。
‣ ピアノソロ編曲の楽譜(無料PDFあり)
以下、編曲楽譜を提供します。
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、楽曲全体)

PDF版ダウンロード
より鮮明な楽譜が必要な方は、こちらからPDFファイルをダウンロードできます。
‣ 演奏音源
An die Musik (Schubert) – Piano Solo (Sheet Music) / 音楽に寄せて(シューベルト:初中級ピアノアレンジ)
‣ 編曲者プロフィール
本記事のピアノソロ編曲は、当Webメディア「Piano Hack」運営者が制作しています。
専門は作曲と編曲ですが、その中でも特にピアノ音楽について深く研究を行っており、ヤマハ、NHK出版などからの楽譜出版をはじめ、ピアノ学習者に向けた教材制作や解説コンテンツの発信を継続しています。
【主な受賞歴】
・チッタ・ディ・スポレート国際作曲コンクール(イタリア)大賞
・第88回 日本音楽コンクール 作曲部門 入賞
・トロンボーン ピース・オブ・ザ・イヤー2019 作曲賞(大賞)
・月刊ピアノ×ピティナ編曲オーディション 上級部門 第1位
本編曲では、原曲「音楽に寄せて(An die Musik)」の和声と伴奏形を基盤としつつ、初中級のピアノ学習者でも無理なく演奏できるよう音域・音数・手の配置を最適化しました。
また、単に簡略化するだけでなく、「歌の旋律が自然に響くこと」「音楽の流れが損なわれないこと」を重視し、演奏表現の学習にもつながる編曲を目指しました。
► この編曲の活用例
初中級レパートリー:発表会などの演奏曲として(他の歌曲ピアノ編曲との組み合わせもおすすめ)
編曲学習の教材:シンプルな編曲の参考資料として
歌曲コンサートの間奏曲に:歌のコンサートで歌手を休ませる、プログラムの間に弾くピアノソロとして
BGM:リラックスした雰囲気の鑑賞用音楽として
► 演奏ポイント
極端に高度なテクニックは必要ありませんが、以下の点を意識するだけで音楽の質が大きく変わります。
アゴーギクについて:
・「どこでどうやって音楽を揺らそうか」と考え過ぎない
・下記のように、フレーズを改める箇所で少し時間を使ったり、テヌートの音などを大切に表現する
・そうすることで、勝手に音楽に揺らぎが生まれる
‣ 前奏部分
テンポ設定:
・原曲では「mäßig(中庸の速さで)」と指定されており、それを編曲でも残した
・これは「Moderatoと同じくらいの速さ」と解釈されることが多い
・ただし、ピアノソロで演奏する場合は、少しテンポを抑えめにしっとりと弾くのも一案
前奏部分は、原曲歌曲の伴奏部分をそのまま使用しています。
曲頭から出てくる8分音符による刻み:
・和声の持続を、減衰楽器であるピアノに適した書法へ翻訳しただけ
・曲頭に限らず、1拍ずつ和音を伸ばして弾いてみることで、和声の響きを把握する
・縦に刻むと音楽が縦割りになってしまう
・音楽を横へ引っ張っていくイメージを持つ
・鍵盤のすぐ近くから押し込むように打鍵する
左手のメロディ:
・1小節目から左手にメロディが出てくる
・右手の刻みよりも聴こえるようにバランスをとる
‣ 3-18小節
3小節目の入り:
・3小節1拍目はフレーズ終わりの音なので、大きくならないようにおさめる
・1拍目表に少しだけ留まり(時間を使う)、1拍目裏から新たなフレーズを作る
呼応の低音:
・4小節目の低音の動きは、直前のメロディの呼応
・メロディよりも大きくなると不自然だが、きちんと拾ってあげる
・8分音符の刻みよりは聴こえるバランスで
つなぎ部分:
・10小節目は、原曲では歌詞のない「つなぎ部分」
・この後に大きめの表現が待っているため、このつなぎ部分では極端な表現をつけずに通り過ぎる
編曲で付け加えたテヌートの意味
・10小節目以降のメロディにテヌートが書かれた部分は、丁寧に歌ってほしい意図
音遣いの些細な変奏:
・10-11小節の左手と12-13小節の左手の違いをよく感じて演奏する
・原曲と全く同じ音遣いを採用している
クライマックスの表現:
・16小節目の後半は、クライマックス
・ここへ向かうために、15小節目の頭は抑えておく
・スラーを参考に、16小節目で留まらずに一息でワンフレーズ歌う
‣ エンディング部分
エンディング部分も、原曲歌曲の伴奏部分をそのまま使用しています。
エンディング部分:
・19小節1拍目表に少しだけ留まり(時間を使う)、1拍目裏から新たなフレーズを作る
・19小節目では音楽の方向性がクレッシェンドで示されている
・したがって、fp へ入るときにはゆっくりにせず、「入ってから」少し時間を使う
・20-21小節は左手も歌(ウタ)になっている
► よくある質問(FAQ)
Q1.「音楽に寄せて」は初心者でも弾けますか?
A1. 本編曲はツェルニー30番入門程度の初中級者向けです。一方、楽譜が1ページのみで非常に取り組みやすくコンパクトなので、ブルグミュラー25の練習曲中盤程度でも挑戦することはできます。
Q2. 原曲のピアノパートの難易度はどれくらいですか?
A2. 原曲のピアノパートは歌曲伴奏のため、歌手とアンサンブルする難しさはあります。ピアノパートを弾く難易度だけでいうと、本編曲と同程度の難易度だと考えてください。
► この楽譜について
この楽譜・音源・解説はすべて無料でお使いいただけます。
もし価値を感じていただけた場合は、noteでのサポート(任意)をいただけますと幸いです。サポートは、今後の創作活動や音楽教育コンテンツの制作に活用させていただきます。
► 終わりに
この編曲が、ピアノ学習や編曲学習の参考になれば幸いです。
本記事でも触れた、ジェラルド・ムーアと「音楽に寄せて」の関係についてさらに詳しく知りたい方は、【ピアノ】ジェラルド・ムーア引退コンサート最後の演奏「音楽に寄せて」ピアノソロ版を解説 をご覧ください。
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