【ピアノ】Ⅴ7の第7音は何を変えるのか?:進行感と和声解釈の違い
► はじめに
三和音のⅤ(属和音)と、そこに第7音を加えたⅤ7(属七和音)のうち、どちらも「次のⅠへ進もうとする力」を持っていますが、第7音があるかないかによって、その進行感の強さは大きく異なります。
また、第7音の有無は「これはどの調のどの和音として機能しているのか」という和声解釈にも深く関わっており、第7音が登場することで初めて「その和音がどこへ向かっているか」が明確になる場面が少なくありません。
本記事では、具体例を取り上げ、さらに筆者自身による編曲例も紹介します。ⅤとⅤ7の違いを意識することで、表現がどのように変わるか、ぜひ感じ取っていただければ幸いです。
► 具体例
‣ 第7音によって和声解釈が変わる例①
モーツァルト「ピアノソナタ ハ長調 K.330 第3楽章」
譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、90-97小節)

91小節目にG-durのカデンツがあるため、92小節目の時点ではG-durのⅠ(C-durのⅤ)です。ところが、94小節目でF音が登場することで、94-95小節はC-durのⅤ7として機能し、96小節目からのⅠへと向かっていきます。
このF音(Ⅴ7の第7音)があるかないかで、Ⅰへ進みたい進行感の強さは大きく異なる点に注目してください。F音が登場することで、「これはG-durのⅠとして留まるのではなく、C-durのⅤ7として機能している」と明確になります。
92-93小節の反復が94-95小節にあたりますが、92-93小節との「音楽が進もうとする方向の差」を意識しながら弾くようにしましょう。仮に94-95小節でもF音が出てこなかった場合、96小節目へのつながりはあるものの、「いきなりC-durになった」という唐突な印象が強くなってしまいます。
‣ 第7音によって和声解釈が変わる例②
モーツァルト「ピアノソナタ ハ長調 K.545 第3楽章」
譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、13-21小節)

15小節目にG-durのカデンツがあるため、16小節目の時点ではG-durのⅠ(C-durのⅤ)です。しかし18小節目でF音が登場することで、C-durのⅤ7へと読み替えられます。
19-20小節はメロディのみとなるため「和声なし」とも解釈できますが、直前のC-durのⅤ7が耳に残っていること、そして20小節目の頭でF音に落ち着くことから、18小節目から20小節1拍目までをC-durのⅤ7として解釈するのが自然でしょう。
► 編曲例
ここまでの内容を踏まえ、筆者自身による編曲例を取り上げます。
J.S.バッハ「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第2番 より アルマンド(左手独奏用編曲版)」
譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、15-16小節)

原曲は無伴奏作品であるため、譜例の部分においてJ.S.バッハ自身は16小節3拍目を除き、和声をつけていません。編曲にあたっては、和声を新たに考えて加えています。
15小節3拍目は、そのままA-durのⅠ(ピカルディ終止)として解釈することも可能な箇所ですが、あえてG音を加えることでd-mollのⅤ7へと読み替え、次の小節へとつなげています。そして16小節3拍目の f の部分で、A-durのⅠ(ピカルディ終止)を置いています。
仮に15小節3拍目にG音を入れなかった場合、その箇所がA-durのⅠなのかd-mollのⅤ7なのか判断しにくくなるだけでなく、16小節3拍目のA-durのⅠも効果が薄れてしまうでしょう。G音を一つ加えることで、和声の読み替えが明確になり、その後の終止が際立つという例です。
► 終わりに
ⅤとⅤ7の違いは想像以上に大きく、第7音の有無によって、その和音がどの調のドミナントとして機能しているのかが明確になる場合があります。
楽譜を読む際には、ドミナントにおける第7音が登場するタイミングに注目してみてください。その一音が、音楽全体の方向性を決定づけていることに気づいたとき、和声の面白さをより深く感じるはずです。
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