【ピアノ】応用楽式作品の譜読み前に行うべき比較学習について
► はじめに
ピアノ作品を学習する際、特に応用楽式に分類される作品に取り組む場合、譜読みを始める前に重要な準備段階があります。本記事では、その準備として不可欠な「比較学習」の方法と意義について解説します。
► 応用楽式とは
応用楽式とは、基礎的な楽式が様々な形で展開された形式を指します。石桁真礼生著「楽式論」(音楽之友社)では、応用楽式として以下が挙げられています:
・第1章 変奏曲
・第2章 独立楽曲(ノクターン、スケルツォ、ロマンス、トッカータ 他)
・第3章 舞曲と行進曲(ワルツ、ポロネーズ、マズルカ、メヌエット 他)
► 比較研究の重要性
応用楽式の作品を学習する際、その楽式の基本的な特徴と目の前の作品を比較することで、以下の点が明らかになります:
・伝統的な形式がどのように応用されているか
・作曲家独自の解釈や工夫
・時代による様式の変化
・演奏解釈のヒント
► 比較研究の具体的な手順
1. 基本情報の収集
・楽式論や音楽辞典で該当する形式の基本的特徴を調べる
・歴史的背景や発展過程を確認
・代表的な作品例を把握
2. 注意すべき観点
・タイトルの真正性(作曲家自身によるものか)
・タイトルに形式名が付いていなくても内容的に該当する可能性
・タイトルと実際の内容の関係性(ワルツではない「ワルツ」という曲もある)
3. 比較のポイント
・リズム的特徴
・形式構造
・テンポ
► 実践例:シチリアーナの場合
シューマン「ユーゲントアルバム(子どものためのアルバム)Op.68-11 シチリアーナ」を例に、比較学習の実践を見てみましょう。
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、楽曲全体)
基本的な特徴の確認
まず楽式論から、シチリアーナの基本的特徴を確認します:
・イタリアのシチリア島の農民の舞曲
・パストラールの一種
・6/8拍子の素朴なリズム
・中庸なテンポ
比較研究のポイント
これらの特徴を基準に、実際の作品と比較:
・拍子やリズムパターンの使用法
・テンポ設定(作曲家によるテンポ指示がないので、定番の演奏音源なども複数参考にする)
・作曲家独自の解釈
► 比較研究の効果
この準備作業により、以下のような効果が期待できます:
・楽曲理解の深化
・歴史的文脈の把握
・作曲家の意図の理解
・練習の効率化
► まとめ
応用楽式の作品に取り組む際は、必ず譜読み前に比較学習を行い、共通点や相違点などを調べましょう。これは単なる予備知識の収集ではなく、作品の本質を理解する重要な過程です。
・楽式論 著:石桁真礼生 音楽之友社
【おすすめ参考文献】
本記事で扱った、シューマン「Op.68-11 シチリアーナ」について学びを深めたい方へ
・大人のための独学用Kindleピアノ教室 【シューマン シチリアーナ】徹底分析
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