【ピアノ】メロディ分析入門:「アメイジング・グレイス」のメロディ構造を紐解く
► はじめに
アメイジング・グレイスは、18世紀に作られた讃美歌(諸説あり)で、そのメロディの構造は音楽分析の観点から非常に興味深い特徴を持っています。このシンプルな旋律の中には、効果的な作曲技法が随所に見られ、メロディ分析の入門題材として最適です。
► 楽曲概要
「アメイジング・グレイス」
譜例1(PD楽曲、Sibeliusで作成)
基本情報:
・作曲年:18世紀(諸説あり)
・拍子:3/4拍子
・調性:ハ長調(分析譜例では)
・譜例の主要旋律が繰り返されていく
・3連符の部分は「16分音符二つ+8分音符一つ」のリズムで表現されることもある
► 詳細分析
‣ メロディの構造分析
譜例2
素材連結・リズム:
・下側のカギマークで示したように、全て「3拍目→1拍目」という素材の連結でできている
・上側のカギマークで示したように、4小節単位のフレーズを4回繰り返して一つのセクションを作っている
・4回の繰り返しのうち:
– 1回目と4回目はほぼ同じ(1回目は2回目へいくための繋ぎをつけただけ)
– 3回目で割と大きな変化(ブルー音符の入りが3度型、E音からの開始)
– 4回目で収束
音価:
・出てくる音価:付点2分音符、2分音符、4分音符、8分音符、8分音符の3連符
・レッド音符で示した3連符がリズムの特徴
・aとbの部分で長い音価が出てくる
– aの長い音価は、前半の締めくくりの役割
– bの長い音価は、後半の締めくくりの役割
メリハリ:
・メリハリを表現している一番大きな要素は音域の変化
・7-9小節にクライマックスを配置
・矢印で書き込んだ大まかな音型の方向に注目
その他:
・アウフタクトの音楽
・ヨナ抜き音階の使用(FaとSiを除外)
・臨時記号無し
・グリーン音符が軸の音であり、それらをたどっていくと:
-「Do Mi Do So」「Do Mi So」「So Mi Do So」「Do Mi Do」という単純な形が内包
‣ 分析から見える作曲技法
効果的な技法の使用:
・シンプルな音材による印象的な旋律線の構築
・拍節構造を活かした自然な流れの創出
・反復と変化のバランスによる記憶性の向上
構造的な工夫:
・対称性のある全体構造
・段階的な展開による求心力の創出
・フレーズ間の有機的な関連付け
繰り返しを効果的に使った馴染みの出し方や、シンプルな作りの中でのメリハリの演出など、楽曲の素朴さを効果的に演出するメロディメイクが確認できました。
► まとめ:メロディ分析の意義
このような分析を通じて、シンプルな旋律の中にある緻密な構造設計を理解することができます。これは単なる楽曲理解に留まらず、作曲や編曲の技法を学ぶうえでも重要な視点となります。
► 発展的な学習のために
この分析で解き明かした「アメイジング・グレイス」の構造的な美しさを活かし、筆者がピアノ編曲版を作成しました。原曲の持つ落ち着いた雰囲気を保ちながら、分析で見出された特徴を効果的に引き立てる工夫を施しています。
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