【ピアノ】「名曲事典 ピアノ・オルガン編」(千蔵八郎 著)レビュー
► はじめに
「名曲事典 ピアノ・オルガン編」は、ピアノ音楽の分野でも膨大な文献を残している音楽評論家・千蔵八郎氏(1923-2010)による包括的なピアノ音楽事典です。1970年代に刊行された本書は、ピアノ音楽の基本情報を調べる際の重要な参考資料として位置づけられています。
・出版社:音楽之友社
・初版:1971年
・ページ数:1070ページ
・対象レベル:初級〜上級者
名曲事典 ピアノ・オルガン編 著:千蔵八郎 / 音楽之友社
► 内容について
‣ 本書の特徴
充実した情報量:
・1070ページという大容量
・173人の作曲家を収録
・997曲の楽曲を解説
・4745個の譜例を掲載
明確な編集方針
千蔵氏は前書きで、本書を「単なる楽曲事典」ではなく「名曲解説事典」として位置づけています。協奏曲や「ピアノとオーケストラのための」楽曲は除外し、ピアノとオルガンの独奏曲、連弾曲、2台用楽曲に特化した構成となっています。
選曲基準の明確性
千蔵氏が示した選曲基準は以下の通りです:
・いわゆる名曲
・おさらい会用名曲
・音楽史的な意味での補遺
・啓蒙的な意味での補遺(主に連弾曲と2台ピアノ楽曲のこと)
・現代曲(ディティーユまで)
・日本人作品(1971年当時)
‣ 実用性と注意点
実用的な側面
楽曲の基本情報が確実に記載されており、選曲に迷った際の参考書として優れています。また、取り組む作品が決まったときにファーストアクションとして楽曲情報を得る資料にするのもいいでしょう。4745個もの豊富な譜例により、楽曲の特徴を視覚的に把握できる点も大きな利点です。
制約と注意点
演奏ヒントや詳細な楽曲分析は含まれておらず、あくまで基本情報の提供に留まっています。また、編曲作品については原則として作曲者によるオリジナル作品のみを収録しているため、バッハ=ブゾーニ「シャコンヌ」のような編曲作品は掲載されていません。
► 他書との関係性と活用法
千蔵八郎氏の関連書籍との組み合わせによる一貫性のある学習が効果的です:
「ピアノ音楽史事典」:歴史的視点から包括的にアプローチ
「ピアノ学習ハンドブック」:教育的視点で段階別学習情報を提供
「コンサート・プログラムのつくりかた」:実践的なプログラム作成選曲技術
本書「名曲事典 ピアノ・オルガン編」は、「ピアノ音楽史事典」よりも音楽史学習色が薄く、これらの中でも特に楽曲情報量の豊富さが特徴です。
推奨記事:【ピアノ】選曲に迷ったら読む本:千蔵八郎氏の選曲書籍3冊の特徴と組み合わせ学習
► 終わりに
本書はピアノ音楽の基本情報源として価値を保持しています。ただし、より現代的な作品や最新の研究成果は反映されていないため、他の現代的な資料との併用をおすすめします。選曲の際の第一歩として、また楽曲の基本情報を確認する際の信頼できる資料として活用してみましょう。
名曲事典 ピアノ・オルガン編 著:千蔵八郎 / 音楽之友社
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