【ピアノ】ブルグミュラー25の練習曲程度で弾けるバロック変奏曲3曲
► はじめに
変奏曲は技術的な向上と音楽的な表現力の両方を育むのに適した楽曲形式です。本記事では、ブルグミュラー25の練習曲を修了した程度の演奏者が取り組める、厳選されたバロック期の変奏曲3曲を紹介します。
► 厳選した3つの変奏曲
選曲基準:
以下の3つの観点から慎重に選曲を行いました:
1. 演奏しやすさ:技術的負担が適切で、楽曲が長過ぎないこと
2. 楽譜の入手性:信頼できる楽譜が容易に入手できること
3. 音楽的価値:レパートリーとして価値のある作品であること
なお、本記事では明確に「主題と変奏」の形式を取っている作品のみを対象とし、「変奏形式」(明確な主題と変奏の形式はとっていないが、変奏展開していく作品)は除外しています。
演奏時間は、リピートを含めた場合の目安時間を掲載しています。
‣ パッヘルベル「組曲 P.446 より 5-7曲」
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)
作曲年:1683年
演奏時間:約3分
難易度:ブルグミュラー25の練習曲中盤程度
作品概要
パッヘルベル「組曲 P.446」は8曲からなる鍵盤楽器のための組曲ですが、そのうち:
5. ガボット
6. ガボット(変奏曲)
7. サラバンドと変奏曲
この3つの抜粋で「ガボットと2つの変奏曲」という便宜的なタイトルが付されて親しまれています。変奏ではバロック特有のカキコキとした装飾的な音遣いが印象的です。
表現や技術的なポイント:
・主題から第1変奏へ移行する際、細かな音価に惑わされてテンポが変わらないよう注意
・全曲を通して、左手パートの休符の位置を正確に守る
・短い作品のため、各変奏間の時間を空け過ぎず、全体のバランスを保つ
‣ ヘンデル「クラヴサン組曲 第2集 HWV 437 より サラバンド」
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)
作曲年:1720年代後半(推定)
初出版:1733年
演奏時間:約4分半
難易度:ブルグミュラー25の練習曲中盤程度
作品概要
「ハープシコード組曲 第2集」の「第4番 ニ短調 HWV 437」より「サラバンド」です。主題と2つの変奏からなり、メディアでも頻繁に使用される、広く親しまれている名曲です。
表現や技術的なポイント:
・音数が非常に少ない作品のため、余韻や音同士のつながりを丁寧に作り上げる
・全曲を通して、左手パートの休符の位置を正確に守る
・音型的に縦に刻みがちになるため、常に横への流れを意識した演奏を心がける
‣ ヘンデル「組曲 HWV 448 より シャコンヌ」
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)
作曲年:1705〜1706年
演奏時間:約3分半
難易度:ブルグミュラー25の練習曲修了程度
作品概要
「組曲 ニ短調 HWV 448」全5曲のうちの第5曲「シャコンヌ」です。主題と10の変奏からなり、両手の受け渡しパッセージや低音部に現れるメロディなど、多彩な表情を持った充実した作品です。
表現や技術的なポイント:
・速いパッセージは、スケールなのか分散和音なのかを意識しながら練習する
・第4変奏の右手パートのような「2声的な書法」を見抜き、聴かせる音と隠す音を区別する
・同じテンポ内での音価の細かさの変化が美しさの要なので、テンポキープを徹底する
► 作品比較表
曲名 | テン ポ |
用途 | 重点練習ポイント |
---|---|---|---|
パッヘルベル 組曲 P.446 より 5-7曲 | 中程度 | 少ない変奏数での変奏曲入門 | 装飾音とテンポキープ |
ヘンデル HWV 437 より サラバンド | 緩やか | 有名な作品での変奏曲入門 | 音楽を縦割りにしない |
ヘンデル HWV 448 より シャコンヌ | 中程度 | ヘンデルの典型的な変奏手法の経験 | 両手の受け渡しや低音部メロディ |
► 推奨楽譜
推奨楽譜
実用性を考慮すると、以下の楽譜をおすすめします。適切な運指が記載されており、レイアウトも見やすく、学習者にとって使いやすい編集となっています。
注意事項
この楽譜集では分かりやすい便宜的なタイトルが付されている作品があります。収録曲を学習する際には原曲情報を調べて把握しておきましょう。例えば、本記事で紹介した「ガボットと2つの変奏曲」も、パッヘルベルがそのようなタイトルで作曲したわけではありません。
・ヤマハピアノライブラリー ピアノ変奏曲アルバム 1
収載曲
・パッヘルベル「組曲 P.446 より 5-7曲」
・ヘンデル「クラヴサン組曲 第2集 HWV 437 より サラバンド」
・ヤマハピアノライブラリー ピアノ変奏曲アルバム 2
収載曲
・ヘンデル「組曲 HWV 448 より シャコンヌ」
► 変奏曲学習の基本アプローチ
主題の理解
まず主題を「暗譜するくらい」しっかりと理解し、その音楽的特徴を把握する
変奏との関係性
各変奏が主題とどのような関係にあるかを分析する
全体の構成:
・変奏曲全体の起承転結を理解し、演奏プランを立てる
・特に、急速な変奏とゆるやかな変奏が続くときには、プランがないと差が不明瞭になる
さらに詳しい変奏曲の学習ヒントについては、以下の記事で解説しています。
【ピアノ】変奏曲を音楽的に仕上げるための3つのポイントと実践的アプローチ
► 終わりに
本記事で紹介した3曲は、いずれもブルグミュラー25の練習曲修了程度の技術レベルで演奏可能でありながら、音楽的な視野を大きく広げてくれる価値ある作品です。これらの楽曲を通じて、ピアノ学習に新たな深みと楽しさを見出しましょう。
関連内容として、以下の記事も参考にしてください。
・【ピアノ】ブルグミュラー25の練習曲程度で弾ける古典派変奏曲3曲:3分以内
・【ピアノ】ブルグミュラー25の練習曲程度で弾けるロマン派変奏曲3曲
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